データ入力業務の課題と必要性
手作業によるデータ入力は、時間や手間がかかるだけでなく、コスト増加、業務遅延、従業員の満足度低下にもつながります。
スターティアレイズが2023年に実施したRPAに関するアンケート調査では、「入力・転記・登録などの手作業による業務が多い」が最も多くの課題として挙げられており、これが企業の運営における大きな障壁となっています。本章では、その具体的な問題点を解説します。
人的ミスによる時間とコストの増加
手作業によるデータ入力は、どんなに細心の注意を払っていてもタイピングミスや漏れなどの人的ミスが必ず発生してしまいます。
スターティアレイズの調査では、「手作業によるミスが多い」と186件の回答がありました。確認や修正作業には多大な時間と労力が必要であり、コスト増加の要因になります。
また、誤った入力データは最終的には顧客満足度の低下にもつながります。
一方で、コスト削減のニーズが高まる中、「残業時間の過多」も大きな課題となっており、企業はデータ入力の自動化によってこれらの問題に対処しようとしていることが分かります。
データ入力プロセスの自動化は、人的ミスを減少させ、確認や修正作業の必要性を低減し、コスト削減と残業時間の削減を実現します。
手動でのデータ入力による業務遅延
手動でのデータ入力は時間がかかるため、業務の遅延に加え、他の業務の進行を妨げる原因にもなります。
特に大量のデータを扱う場面では、入力作業が全体のワークフローのボトルネックになることがあります。
入力業務を自動化することで、データ処理の速度を向上させ、業務の全体的な流れをスムーズにすることが可能です。
従業員満足度の低下
繰り返しの単調なデータ入力作業は、従業員のモチベーションを低下させる原因となります。単純な繰り返し作業は、職場のストレスを増加させ、職員のモチベーション低下や高い離職率を招くことがあります。スターティアレイズの調査では、「従業員の負担軽減」も課題として挙げられており、従業員が感じる負担が問題となっています。
自動化ツールの導入により、創造的な業務やより戦略的なタスクに従事する機会を増やし、単調な作業から解放されることで、従業員の作業負担を軽減できます。これにより、従業員はより意義のある業務に集中する時間を確保し、結果として全体の職場満足度を向上させることができます。
データ入力を自動化するメリット3つ
データ入力の自動化は、作業工数の削減、人的ミスの防止、および運用コストの削減を実現し、企業の生産性と効率を大幅に向上させます。本章では、データ入力自動化がもたらす3つのメリットについて詳しく解説します。
1.作業工数の削減による生産性向上
データ入力作業の自動化により従業員の作業時間を大幅に削減することが可能です。
例えば、自動化ツールが顧客情報を瞬時にデータベースに入力し、これによってデータ処理時間が従来の半分以下に短縮されることがあります。
また、自動化ツールを導入することで、従業員は単純なデータ入力作業から解放され、戦略的な作業やクリエイティブなタスクなど、より価値の高い活動に集中できるようになり、全体的な作業効率が向上し、企業の生産性が大幅に向上します。
2.人的ミスの防止
手作業によるデータ入力は、誤入力や入力漏れといった人的ミスが発生しやすい作業ですが、自動化することで、データ入力や転記の際の人的ミスを大幅に減少させることが可能です。
自動化ツールは一貫性のある正確なデータ処理を行うため、データ入力における品質が向上し、後続の業務プロセスにおけるミスの連鎖も防ぎます。また、正確なデータ入力は、ビジネスの意思決定の質を向上させ、信頼性を高めることにもつながります。
3.コスト削減
データ入力作業にかかる時間が減少すれば、それに伴い労働コストも削減されます。また、人的ミスによる修正作業や確認作業など、修正に伴うコストも同時に減少します。
自動化によりデータ入力による労働時間が減少するため、残業時間や人件費を削減できます。
自動化ツールを利用すれば、入力などの反復的な業務が増えた場合も、新たな人材採用にかけるコストも必要なくなります。
データ入力業務を自動化・効率化するための方法・ツール7選
データ入力の自動化は、企業の効率性と生産性を大幅に向上させることができます。本章では最も効果的な自動化ツールと方法「マニュアル作成」「Excelマクロ」「AI-OCR」「RPA」「iPaaS」「スクリプトやAPI」「BPOの利用」のを7つ紹介し、それぞれの特徴とメリットを解説します。
1.マニュアル作成やテンプレートの標準化
データ入力作業において、入力フォームや文書のテンプレートを標準化することで、作業の一貫性を保ち、ミスを減少させることができます。
また、テンプレートの標準化と同様にマニュアルの作成も非常に重要です。マニュアルは、スタッフが業務を一貫して正確に実行するためのガイドラインを提供し、特に新人教育や業務の品質保持に役立ちます。マニュアルには、各データ入力項目の詳細な説明、入力の手順、よくあるエラーとその対処方法などを記載すると良いです。
2.Excelマクロを利用したデータ入力自動化
Excelマクロとは、Excel内の作業の中で、繰り返し行われる作業を自動化する機能で、Excelに標準搭載されている「マクロの記録」機能を利用することで、繰り返し行われるデータ入力のタスクを自動化できます。
簡単に言うと、マクロを使用することで、特定の命令をプログラムし、ボタン一つで複雑な計算やデータ修正、グラフの作成などさまざまなタスクを実行させることができます。
Excelマクロを利用することで時間の節約と人的ミスの防止に大きな効果を発揮しますが、マクロの記録や編集にはVBAに関する知識が必要であり、初心者には設定が難しいというデメリットもあります。
3.AI-OCRで紙やデータの情報を自動でテキストデータ化
AI-OCR(Artificial Intelligence Optical Character Recognition)技術を用いることで、紙の文書やPDFからテキストデータを抽出し、テキストデータに変換する業務を自動化します。
AI-OCRは、FAXで送られてきた文書や手書きの帳票、スキャンされたフォームからのデータ入力を効率化し、手作業による入力ミスを削減するために特に有効です。
AI-OCRは、AI(人工知能)を活用しているため、文書内の文字を高精度に認識し、従来のOCRよりも遥かに進んだ処理能力を提供します。複雑なフォーマットや異なるフォントにも対応可能で、大量の文書を迅速に処理することが可能です。
4.RPAの活用
RPA(Robotic Process Automation)は、ソフトウェアロボットが人間のパソコン操作を模倣(記録)することで、繰り返し行うデータ入力作業を自動化します。
RPAなら、クラウドサービスや自社開発のシステム、Excel、会計管理システム、在庫管理システム、レガシーシステムなど、幅広いシステムに対して入力作業を自動化できることが特徴です。
また、RPAはシンプルなデータ入力から複雑なデータ処理まで幅広く対応可能で、企業は手作業で行っていた時間のかかる業務を最適化できるため、従業員はより戦略的な業務に集中できるようになります。
データ入力以外のルーティン業務も自動化できる
RPAは、データ入力だけでなく、データの取得・集計・突合作業、ファイル操作、メール送信なども自動化することが可能なため、これらの操作を組み合わせることで、請求書処理、注文管理、顧客データの更新など、多岐にわたるルーティン業務を自動化することができます。そのため、業務全体の効率を向上させることができます。
5.iPaaSによるデータ統合と自動化
iPaaS(Integration Platform as a Service)とは、異なるアプリケーション間でのデータを自動的に移動させることができるクラウドベースのプラットフォームです。
iPaaSを利用することで、複数のシステム間でのデータの流れを自動化し、データ入力業務を削減できます。
例えば、問い合わせメールがきたら、自動でリード情報をSFA/CRMシステムへデータを入力させたり管理用シートに入力させたりするなど、データのリアルタイム処理と同期を必要とする業務の自動化に有効です。
特に、Microsoft365やGoogle Workspaceをはじめ、SFA/CRMシステム、MAツール、ERP、その他のSaaSやビジネスアプリケーションのデータ連携に効果的です。
6.スクリプトとAPIを使用した自動化
カスタムスクリプトやAPIを用いた自動化は、特定の業務要件に合わせた柔軟なデータ処理が可能です。
特にAPIは、外部サービスからのデータを自動的に収集・更新できるため、外部サービスとの連携を強化し、データ共有と処理を自動化することが可能です。
ただしAPI連携には専門知識や技術が必要なため、エンジニアや情シス部門による設定が必要です。
7.BPOやアウトソーシングを利用する
アウトソーシングはルールが決まった定型業務を委託できるというもので、データ入力の業務プロセスが完成している場合に利用します。近年では「データ入力代行サービス」というサービスも多く見られます。
BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)とは、データ入力作業を含む特定の業務プロセスを外部の専門企業に委託することを指します。データ入力の一連の業務の流れを見直したいときや改善提案してほしいときに利用します。
BPOは専門スタッフが作業を行い、業務量の変動にも柔軟に対応することが可能です。繁忙期には追加のリソースを利用でき、閑散期にはコストを削減できるため、年間を通じて効率的な運営が可能になります。
BPOもアウトソーシングも、社内リソースを使わないため、従業員がコア業務に集中することが可能になりますが、外部サービスの利用になるため外注費のコストがかかることを理解しておく必要があります。
どうしても社内リソースが足りない場合はこういった外部委託も選択肢の一つです。
データ入力の自動化に向いている業務
データ入力の自動化は、特定の業務領域で特に効果を発揮します。経理、人事総務、営業、マーケティング、EC運営など、データ集約型の作業が多い部門では、入力作業の自動化により時間とコストの削減、エラーの減少、効率の向上が期待できます。本章では、それぞれの業務でどのようなメリットが得られるかを解説します。
経理
経理部門では、請求書処理、支払処理、経費報告など、定型的なデータ入力作業が頻繁に行われます。自動化ツールを導入することで、これらの作業を迅速かつ正確に行うことが可能となります。
財務報告では、月次、四半期、年次のレポートの作成スピードと精度が向上し、戦略的な財務分析により多くの時間を割くことが可能になります。
さらに、自動化によりデータの一貫性が保たれ、監査対応の効率も良くなります。
人事総務
人事総務部門では、従業員情報の管理、給与計算、勤怠管理など、大量のデータ入力が必要です。これらの入力作業を自動化することで、人的ミスを減らし、HR業務のコンプライアンスを保ちながら、効率的に業務を遂行できます。
自動化ツールを利用することで、人事担当者は採用活動や従業員エンゲージメントの向上など、より戦略的な業務に集中できます。
営業・インサイドセールス
営業部門とインサイドセールスチームは、顧客データの入力、見積もりの作成、販売注文の処理など、データ集中的なタスクに多くの時間を費やしています。自動化ツールを使用することで、これらのプロセスを効率化し、営業担当者がより多くの時間を顧客との関係構築や新規リードの開拓に充てることができるようになります。
マーケティング
マーケティング部門では、キャンペーンの管理、リード情報の登録、顧客データベースやMAの更新など、定型的なデータ処理作業が多く行われます。
これらを自動化することで、マーケティングキャンペーンの効果を高め、ターゲット顧客へのアプローチをより迅速に行うことができます。
また、キャンペーンの成果分析を自動化することで、より精度の高いマーケティング戦略を迅速に立案することが可能になります。
EC運営
EC運営では、商品データの入力、在庫管理、注文処理など、膨大なデータを日々扱います。これらのデータ入力作業を自動化することで、在庫の正確性が保たれ、顧客に対するレスポンスが速くなります。自動化により、顧客満足度の向上とともに、オペレーションコストの削減が期待できます。
また、ピーク時の注文処理能力を高め、売上機会の損失を防ぐことも可能です。
データ入力自動化ツールを導入するときのポイントと流れ
データ入力の自動化は業務の効率を大幅に向上させることができます。本章では、自動化ツールを導入する際の重要なステップとその流れを詳しく解説します。
1.現在の業務プロセスの洗い出し
まず最初に、自分たちが毎日どのような作業をしているかを詳しくリストアップしましょう。どの作業に時間がかかっているか、どの作業が間違いやすいかを特定します。これは、どこを改善すればいいかを知るための大切なステップです。
2.適切な自動化ツールの選定
自動化ツールを選定する際は、業務の要件に合った機能を持つツールを選ぶことが重要です。市場にはさまざまな自動化ツールがありますが、すべてのツールがすべてのニーズに最適とは限りません。
ツールの選定に際しては、処理速度、使いやすさ、統合性、サポート体制などを評価基準にし、実際にデモを試用してみることが推奨されます。
3.テスト運用
選定したツールを実際の業務に適用する前に、小規模な範囲でのテスト運用を行います。これにより、ツールが期待通りに動作するかをチェックし、問題があれば修正します。テスト運用は、本格的な導入前の重要なステップです。テスト運用の結果を基に、必要に応じて調整を行い、ツールが完全に業務に適合するようにします。
4.導入
テスト運用で問題がなければ、ツールを全面的に導入します。この際、従業員は新しいツールの使い方をしっかりと覚える必要があります。最初は慣れないかもしれませんが、ベンダー企業によるサポートやヘルプデスクを活用し、スムーズに移行できるよう進めましょう。
5.費用体効果(ROI)の測定
ツールの導入後は、効果を定量的に評価することが重要です。効果の測定には、作業時間の短縮率、エラー発生率の低下、業務効率の向上など、具体的な指標を用いてROIを計算します。
これにより、投資したコストに対するリターンを明確にし、さらなる改善のためのデータを得ることができます。
以上の流れを通じて、データ入力における業務の効率化を実現します。
まとめ
自動化ツールを選ぶ際には、業務のニーズに合わせて最適なものを選定し、小規模なテストを行いながら段階的に導入することが重要です。また、自動化の効果を定期的に評価し、必要に応じて調整を行うことで、持続的な改善を目指すべきです。
データ入力の自動化は、単に時間を節約するだけでなく、従業員がより創造的で価値の高い作業に集中できるようになるため、企業全体の生産性向上に寄与します。自動化の導入は初期投資と時間を要しますが、長期的にはその投資が大きなリターンをもたらすことを忘れないでください。今後も技術の進化に合わせて最新のツールと戦略を取り入れ、ビジネスの効率化を進めていきましょう。
スターティアレイズでは、データ入力業務の効率化に対応できる、RPA「RoboTANGO」やiPaaS「JENKA」、AI-OCR「DX Suite」を提供しています。RPA、iPaaS、AI-OCRは、本記事でも紹介したようにデータ入力業務の自動化を実現し、企業がデータ処理の効率を大幅に向上させることが可能です。
もしご興味がありましたら、お問い合わせください。