RPAとは

RPA(Robotic Process Automation)とは、ロボットによる業務プロセスの自動化を意味します。主に人間がパソコン上で行う定型業務を、ソフトウェアに搭載されたロボットが代行するシステムです。

近年のRPAは、画像認識技術を用いて「シナリオ」というロボットが行う一連の作業手順を簡単に作成できるツールが増えています。シナリオの作成方法はRPAツールによって特徴がありますので、ツールを選定する際は自分でシナリオを作れるかどうかを確認しながら比較すると良いでしょう。

RPAは、手順が決まっている定型業務や、大量のデータを処理する必要がある業務、データを収集して集計した後にレポートを作成する業務、複数のアプリケーションやシステムを使用する業務に向いています。具体的には、導入事例が多く見られるのは以下のような作業です。

  • 顧客情報登録作業
  • 売上などの計上
  • 定型書類作成業務
  • 従業員の勤怠実績管理
  • 求人情報の管理更新業務
  • データから該当データを抽出
  • 定型メールの送信

一般的に、RPAは手順が決まっている定型業務が向いているとされていますが、RPAで作成できるロボットに複雑な業務を覚えさせることも可能です。例えば、工程が分岐する作業や、複数のシステムやアプリケーションを連携させる作業などです。

現在は事務系業務でRPAの導入実績が多く見受けられますが、製造現場においても活用の幅が広がっています。製造現場では単純な見積もり作業や図面の読み取り作業の自動化はもちろん、納期短縮などのイレギュラーが発生した際に、原料製造業者ごとの納期を前倒しして依頼リストを作成するなどの業務の自動化にも対応できます。これにより、単純作業に対する時間を削減できるだけでなく、マネジメントサイクルの効率化にもつながるでしょう。

さらにRPAは、業務効率化だけでなくヒューマンエラー防止やコスト削減にも貢献できます。このように、RPAの導入によりさまざまなメリットが見込まれることから、日本でもUiPath(ユーアイパス)をはじめとするサービスがシェアを伸ばしつつあり、導入率も2021年1月時点で37%に達しています。そのほかにもWinActor(ウィンアクター)やRobo-Pat(ロボパット)などの導入事例も増えてきており、RPAは今後さらに普及が進んでいくでしょう。

マクロとは

マクロとは、複数の操作をまとめ、必要に応じて呼び出せる機能を指します。特にExcelの自動化で使われることが多く「Excelマクロ」と呼ばれることも多いです。しかし、マクロはMicrosoft Officeシリーズのアプリケーションに限らず、すべてのコンピュータにおいて共通の用語です。

例えばExcelマクロの場合、開発タブにある「マクロの記録」をクリックすると、「記録終了」とするまでの作業が自動的にプログラム言語に変換されてプログラムが生成されます。この生成されたプログラムがマクロです。そうすると、次からは該当のマクロを選んで実行すれば、一連の作業が自動化されます。複数の操作を1クリックで実行できるようになるので、業務の効率化やヒューマンエラーの防止に役立つでしょう。

マクロは以下のような場面で活用されています。すでに日々の業務で取り入れている方も多いことでしょう。

  • Excelでのデータ集計、グラフ作成、印刷
  • Excelでのフォーム作成

マクロはMicrosoft製品に標準搭載されている機能であるため特別なツールを導入する必要がありません。またMicrosoft製品があれば利用できるので、コストを抑えて運用できます。マクロの活用はExcel内だけにとどまらず、PowerPointやAccessなど、すでに社内で利用されているアプリケーションと連携しやすいのも魅力です。

VBAとは

VBA(Visual Basic for Applications)とは、Microsoft社がMicrosoft Officeの拡張機能として提供しているプログラミング言語です。つまり、マクロの操作を記憶するためのプログラミング言語がVBAであるということです。Excelの場合、「マクロ」が操作を自動化する機能であり、「VBA」はその操作をプログラム化するための道具にあたります。VBAは自動化する「機能」ではなく「言語」を指すということに注意しましょう。

VBAを理解すればExcelなどのマクロをカスタマイズできるようになるので、より高度な業務も自動化できます。VBAはMicrosoft Officeがあればローカル環境で利用できるため、初心者でも扱いやすいのが特徴です。

VBAが活用される例としては、以下のような場面が挙げられます。

  • Excelの操作
  • ExcelとWEBを連動させた作業(条件分岐の少ない作業)
  • WEBページからの情報収集
  • メールの自動送信

VBAはExcel内だけでなく、他のMicrosoft製品で使用することも可能です。例えば、VBAを使用してExcelで作成した計算結果やグラフなどをPowerPointのスライドに埋め込んだり、Accessに蓄積されたデータから必要なデータだけをExcelに取り出したりできます。これにより、PowerPointの資料作成の効率アップやExcelのデータ増えて動作が遅くなるということの回避ができます。またOutlookで使用すれば、日報やメルマガなどのフォーマットが決まっているメールを自動で作成・送信することも可能です。

このようにカスタマイズして使用することで、アプリケーションを自作するような感覚でMicrosoft製品を使用できるようになります。

RPAとマクロの違い

前章では「RPA」は業務を自動化できるシステムであること、「マクロ」はMicrosoft製品内の操作を自動化する機能であり、「VBA」はそのマクロの操作を記憶するためのプログラミング言語であることを解説しました。

RPAとマクロ(VBA)は、パソコン上で行う定型業務を自動化できる点は共通していますが、具体的に何が違うのか疑問に思うことでしょう。また自動化したい業務の中で「RPAとマクロ(VBA)、どちらを使えばいいの?」と迷われることがあるかと思われますので、ここではツールを選ぶポイントを含めてRPAとマクロの違いをお伝えします。

RPAでできること

RPAに向いている業務は、複数のアプリケーションやツールを使用したり、複雑な分岐があったりするさまざまな工程がありながらも作業自体は単純で決まりきっているパソコン上で行われる定型業務です。Microsoft製品はもちろんのこと、それ以外のアプリケーションやシステムとも連携して使用できます。

例えば、取引先からメールで受信した注文書の内容を基幹システムに転記して、在庫があることを確認してから、取引先に注文受付のお知らせメールを送信するというような一連の流れを自動化することがRPAの導入で可能になります。

さらに、RPAは情報収集から集計・分析、レポート作成までの作業を自動化することもできます。インターネット上で情報収集した結果をエクセルに転記し、その情報をもとにグラフや表を作成して、自動でレポートを出力するようにロボットを作成すれば、作業にかかる手間と時間を大幅に削減できるでしょう。

サーバー上で動作する「サーバー型」のRPAを導入すれば、大量のデータを処理しても処理スピードが遅くなることなく利用できる点もポイントです。

VBAでできること

自動化したい作業がExcelのシート内のみで完結し、なおかつ比較的単純な作業であれば、マクロ(VBA)を用いるのが効率的です。

VBAはMicrosoft OfficeやIEなどのMicrosoft社が提供するアプリケーションやインターネットブラウザとの連携が可能なので、Excelの操作以外でも活用できます。これにより、ExcelとWEB(WEBサービスやメール)のように、Excelと他のアプリケーションを連携することで、WEBサイトからのデータ収集やメール作成・送信などの単純作業の自動化が実現できます。しかし、VBAはパソコン上で動作するため、大量のデータを処理する場合は処理スピードが遅くなる点に注意が必要です。

対応範囲の違い

RPAはMicrosoft製品以外のアプリケーションやツールとの連携ができるのに対して、マクロ(VBA)はMicrosoft製品内での連携に限られます。そのため、RPAの方が対応の範囲が広いと言えるでしょう。ただし、連携できるアプリケーションやシステムなどの対応範囲はRPAの種類にもよるため、RPAを導入する際は自社が自動化したい業務に対応できるかを確認することが大切です。

RPAの方が対応できる業務の幅が広いと聞くと、「膨大なデータを用いる業務などをExcelで管理しているけれど、効率化できるならマクロやVBAを使用するのではなくRPAに任せたい」「今までExcelで行ってきた単純作業は、全てRPAに任せたい」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここで理解していただきたいのは、RPAはあくまでも「自動化」に特化したツールであることです。そのため、全ての単純業務をRPAに置き換えられるわけではありません。つまり、RPAを導入したとしても他の業務アプリやソフトウェアが不要になるというわけではないということです。

特に、現在Excelで管理しているデータをRPAで処理することは難しいことなのです。なぜなら、Excelは数式を利用してデータを演算処理していることが多いと思われます。数式による演算処理をRPAで代替する場合には、一つ一つの演算作業をロボットに覚えさせなければならないので、大きな負荷がかかります。

そこで、RPAを導入する際には業務の棚卸しを行い、会社や部署の事情、コストを考慮しながらRPAに任せるのか、マクロ(VBA)を利用するのかを判断する必要があります。判断に迷うという場合には、実際にトライアルを利用したり、フリーソフトやクラウド型(フリーで使える部分が多い)のRPAを利用したりした上で、自社にとって最適なツールを選択するのがおすすめです。

このようにRPAを導入した場合でも、全てをRPAで自動化するのではなく、マクロ(VBA)を併用するなど、複数のアプリケーションやソフトウェア、ツールを組み合わせて利用することが効率的な業務改善につながります。

RPAの方が現場では活用しやすい!

単純な作業や定型作業、Microsoft製品以外のアプリケーションやシステムと連携して業務を自動化する場合は、RPAの方が現場で活用しやすいでしょう。

マクロ(VBA)は初心者でも扱いやすいと前述しましたが、マクロを使いこなすにはプログラミング言語の知識やスキルが必要不可欠です。そのため、現場担当者がマクロ(VBA)を使いこなすのは難しいでしょう。一方、RPAの中にはプログラミングの知識がなくても、直感的に操作ができるツールが多くあります。

RPAの導入を検討する際、「RPAを導入するためにはプログラミングの知識があった方が良いのか?」と疑問に思う方も少なくありません。もちろんプログラミングの知識があった方がロボットの開発や運用、保守メンテナンスをスムーズに行えるでしょう。しかし、バソコン画面上の操作を録画することで簡単にロボットが作成できるRPAなどを選べば、プログラミングの知識がなくてもロボットは簡単に作成できます。

通常RPAを導入する場合、社内のエンジニアが現場の現状や課題をヒアリングしてロボットを作成するでしょう。しかし現場でヒアリングをしていても、全てをシナリオに落とし込み、最初から完璧に課題を解決できるロボットを作成するのは難しいものです。RPAは運用しながら効果を検証して改善していくことが大切です。その点、現場担当者がロボットを作成できるRPAを導入すれば、エンジニアに頼らなくても現場で修正・改善を重ねながら効率的にロボットが作れるようになります。これにより、システムの構築もしやすくなるでしょう。

ただし、RPAを運用していく上でトラブルの発生などによりプログラミングの知識が必要となる場面が出てくることがあります。そのため、RPAの運用はトラブルの発生に備えて社内のエンジニアと連携するなど、社内の体制を整えておくことも大切です。

社内のエンジニアが不足している場合は、サポート体制が充実したRPAサービスを選ぶと良いでしょう。ベンダーによっては導入支援サービスを提供していたり、無料のセミナーや勉強会を開催していたりします。このような外部のサポートを活用しながら、社内で勉強会を開いて勉強方法をシェアしたり、RPAの資格である「RPA技術者検定」の取得を支援したり、プログラミング知識のある人材を確保するなど、社内のRPAナレッジを蓄積していくと安定した運用ができるようになります。

RPAの活用事例

それでは、「自社や部署のどのような業務をRPAに任せられるのか?」という疑問にお答えします。実際にRPAが活用されている事例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

給与計算

給与計算業務は主に「データ登録」「給与計算」「給与計算後の処理」の3つのプロセスに分けられます。「給与計算」のプロセスは給与システムによって既に自動化されていますが、「データ登録」と「給与計算後の処理」は手作業で行なっているところも多いでしょう。そこでRPAを活用すれば、より業務効率を高めることができます。

例えばデータ登録のプロセスでは、Excelで作成した勤怠データを印刷して、それを見ながら給与システムに手で入力していては、入力作業に時間がかかるでしょう。また人間が作業を行う場合、長時間の作業による疲労や集中力の低下により転記ミスなどのヒューマンエラーが起こる可能性があります。しかし、給与計算はお金に関わる業務でありミスが許されないため、業務担当者は慎重に作業しなければなりません。間違いがないように神経を使っている業務担当者には、肉体的な疲労だけでなく、精神的なストレスがかかっているでしょう。さらに、手で入力したデータは間違いがないかを複数人で確認する必要があるため、ダブルチェックにも時間がかかります。

そこでRPAを導入すれば、ロボットがExcelの勤怠データから必要なデータを取得し、給与システムへ転記できるようになるため、入力作業の時間を大幅に削減できます。また作業担当者は転記ミスをしてはいけないというストレスから解放されるだけでなく、ダブルチェック作業の手間も軽減されます。

データを登録し、給与システムで給与計算まで完了したら、給与明細書の発行や振込ファイルの作成などの業務もRPAで自動化することが可能です。

伝票データの入力

RPAは伝票データの入力も自動化できます。

手作業で膨大な売上伝票を転記しながら、振替伝票を作成するには時間と手間がかかります。また、伝票処理を少人数で対応している企業も多く、担当者に負担がかかるため、ヒューマンエラーが発生することもあるでしょう。

RPAで売上明細の出力やフォーマット変換、会計システムへの転記を自動化すれば、業務効率がアップするだけでなく、担当者の負担軽減にもつながります。また、RPAはロボットが設定されたシナリオにそって正確に作業を行うためヒューマンエラーも起こりません。RPAの種類によっては、メールで受信した伝票データを会計システムに自動で転記できるものや、OCRとRPAを組み合わせて紙の伝票から情報を読み取ってデータ化するものもあります。

RPAを選ぶ際は、必要な機能を見極めて、自社で課題となっている業務を解消できるツールを選ぶと良いでしょう。

レポートの作成

RPAはレポート作成を自動化することも可能です。

通常、レポートを作成する際には複数のシステムやExcelなどのツールから必要なデータを集めて、手作業でデータを分析したりグラフなどを作成したりしますが、これらの作業には膨大な時間がかかります。また、複数の資料を使用しながら手作業で情報をまとめるため、ミスが起きやすく、ミスを防止するためにダブルチェックを行うのも大変です。

このようなレポート作成業務でRPAを活用すれば、これまで手作業でしていた複数のデータの集計作業も簡単にできるようになります。フォーマットが決まっているレポートであれば、短時間で大量のレポートを作成することも可能です。手作業をするプロセスをなくすことで、作業の効率化が図れるだけでなく、ミスの軽減にもつながります。

WEBサイトでの情報収集

インターネット上で情報収集をするには、複数のWEBサイトを訪問して情報を確認する必要があるため、多くの労力を要します。しかし、この情報収集作業もRPAで自動化することが可能です。

例えば、指定したWEBサイトから自社製品の販売価格を取得し、その販売価格をWEBサイトごとにExcelに転記、そこからExcelでグラフを作成してレポートを作成するまでの工程をRPAで自動化することができます。

これにより、担当者はRPAが情報収集に時間を割く必要がなくなり、RPAで作成したレポートを活用して、戦略の立案などのコア業務に注力できるようになります。情報収集に時間をかけずに、人間の判断が必要な業務に集中することで、生産性の向上も期待でき、人件費の削減にもつながるでしょう。

その他にも、RPAはさまざまな場面で活用できます。RPAを導入する際には、作業手順が明確になっている業務や処理件数が多い業務から小規模で導入しましょう。そして、定期的に効果検証をしながら、改善・改良を繰り返すのがRPA導入のポイントです。実際にRPAを利用してみると、他の業務での活用方法が見えてくることがあります。まずは部署単位やプロジェクト単位のスモールスタートではじめ、段階的に活用の幅を広げていくと良いでしょう。

まとめ

RPA、マクロ、VBAは「手順どおりに繰り返す業務を機械によって自動化する」という点では似通っています。しかし、RPAは「複数のシステムをまたぐ業務を自動化できるシステム」であり、マクロは「Microsoft製品内の操作を自動化する機能」、VBAは「マクロの操作を記憶するためのプログラミング言語」であるという違いがあります。

Microsoft製品以外のアプリケーションやツールとの連携ができるという点では、RPAの方が対応できる業務の範囲が広いと言えるでしょう。ただし、全ての作業工程をRPAで自動化できる訳ではありません。Excel内で作業が完結している業務の場合はマクロ(VBA)を使用した方が効率の良い場合もあります。業務を自動化する際にRPAとマクロ(VBA)のどちらを利用しようか迷った時は、「工程が複雑か単純か」「複数のアプリケーションやツールを使うか」という点を考慮して使い分けると良いでしょう。

RPAとマクロの違いには、利用する際のプログラミング知識の有無もあります。マクロを利用するにはプログラミング言語の知識やスキルが必要となりますが、最近のRPAはプログラミングの知識がなくても直感的に操作ができるツールが増えています。直感的に操作ができるRPAを利用すれば、社内のエンジニアに頼らなくても現場の担当者がロボットを作成することが可能になるので、現場で活用しやすいでしょう。現場の担当者が使いやすいツールを導入することで、現場主導でRPAを活用できるようになり、システム構築もしやすくなります。

具体的なRPAの活用事例は、給与計算や伝票データの入力、レポートの作成、WEBサイトでの情報収集などが挙げられます。その他にもさまざまな業務に活用できるので、RPAを運用しながら少しずつ活用の幅を広げていくのがおすすめです。

RPAの導入は単純なものではありませんが、得られるメリットは大きなものがあります。不安がある場合には支援サービスを利用しながら導入を検討してみてくださいね。