人材紹介・派遣
RPAで人材派遣サービスの事務作業を自動化し、業務改善を実現。従業員の負担軽減、残業時間削減に成功
- 求人サイト
- 基幹システム
- メール配信ツール
- Excel/CSV
短期・単発に特化した人材派遣サービスを展開されている株式会社エントリー様にRPA導入前の課題、RPA活用法や成果・効果についてお話を伺いました。
課題
- 全社的に事務処理業務に多くの時間が割かれているため、業務改善が喫緊の課題となっていた
- 短期間派遣というビジネスの特性上、事務作業のなかでも日々同じ作業の繰り返しが多く、効率化実現のために業務の自動化が求められていた
- 業務変化が頻発するため、会社として対応する社員の負担を軽減していこうという動きがあった
効果
- 繰り返し作業の自動化により本来、手をかけるべき業務に時間を確保できるようになった
- 営業部が業務時間外に行っていた業務が自動化され、残業時間の軽減が実現した
- 手作業によるミスが軽減したうえ、納品時期の厳守が可能になった
事務処理業務に多くの時間を割かれてしまい、従業員の負担が大きく生産性も低かった
弊社の主な事業は短期・単発に特化した人材派遣サービスです。派遣登録者の約7割が学生で、一人ひとりのライフスタイルに寄り添った事業を展開しています。
業界初の「エントリー給与即日全額払いサービス」や、社員が就業先でフォローを行うなど、新しい取り組みも多く、2018年度にはシェアリングエコノミーへ参入、2019年度にはCtoCアプリ「シェアジョブ」をリリースしました。さらに2022年10月に海外進出し現地法人を設立しています。
弊社は短期間派遣ビジネスという特性上業務変化が頻発するため、従業員にかかる負荷も大きなものとなっていました。この負荷の軽減がRPA導入を検討した理由の一つです。
また、全社的に事務処理業務に多くの業務時間を割かれてしまい、生産性を高める業務の時間を奪われていました。さらに定型業務の多さから業務プロセスの改善や効率化が必須となっていたこともRPA導入検討の大きな理由です。
導入の決め手は「導入コストの安さ」「RPAを内製化できること」
RPAの検討を開始してから、複数のRPAを扱う企業様のお話を聞きました。そのなかでRoboTANGOを選択した理由は次の2点です。
- 導入コストを抑制しつつスモールスタートできること
- 内製化が可能なこと
一旦はRPAを外注しようかと検討しました。しかし、費用が高く導入のハードルが高いことや、営業支店ごとに業務変化が頻発する中で、スピーディーに従業員の負担を軽減するには内製化が可能なRPAを探していました。
そこで、導入コストが安くスモールスタートでき内製が可能なRoboTANGOの導入を決定しました。
RPA導入で従業員の負担軽減、残業時間削減、生産性の高い業務への時間創出を実現
現在、RoboTANGOで5つのライセンスを導入しており、1年目に8個、2年目に21個のRPAロボットを作成しました。主に次のような業務の自動化を行っています。
スタッフの採否
スタッフ専用お仕事サイトから応募が来た際、WEB管理画面に「応募がきました」と通知が来ます。基本的には勤務時間に対応していますが、支店の営業が終了した後に来た応募は残業して行わなければならないこともありました。
ただ、応募が大量に来るとその処理だけで1~2時間はかかります。特に日雇いの場合、「明日時間が空いたから働こう」というスタッフさんも多いので、その日のうちに処理を終えないと働きたいスタッフへ就業機会を提供できないことに加え、弊社の売上も減少してしまいます。働きたくても働けないスタッフ、残業時間が増加する従業員、売上が減少してしまう弊社、そのすべてのデメリット解消をRPAが実現しました。
スタッフ採用すべてを自動化したわけではなく、応募情報をもとに条件分岐を行い、条件が揃っているスタッフさんに関しては“採用”。他の、条件が合わないものや人の目で確認しなければならないものは“保留”にするまでをRPAで行うことで、誤ったマッチングを防ぎ、サービス品質をなるべく落とさずに運用できる形にしました。
求人サイト編集業務
求人公開後に業務内容や持ち物が変更になることも少なくありません。また、最低賃金の改定や繫忙期の時給UPなどでクライアント請求・スタッフ支給の単価の変更も発生します。このような場合、日雇いの求人のため1日ごと、案件ごとに内容変更しなければなりません。
さらに、求人タイトルは応募に直結するため、時給UPなどのアピールポイントが追加になった場合はタイトルも変更し応募を増やすための業務が発生します。この作業を人が行う場合は、変更箇所が複数ある分だけ、原稿データと基幹システムを行き来して作業を行うため、1求人あたり数分要してしまう点や変更箇所の漏れの発生が課題でした。
RPAで自動化したことによって人の作業はほぼゼロになり、作業時間も大幅に短縮され、数によっては1~3時間ほど要していた手作業は、今では5分程度で完結できるようになりました。
この作業は閑散期でも各拠点で毎日発生している作業なので、自動化によって大幅な効率化が実現しています。
スタッフ情報変更
2012年10月1日に施行された改正労働者派遣法で日雇い労働は禁止されましたが、例外規定として次の4つに該当する方は日雇いが可能です。
- 1.60歳以上の方
- 2.雇用保険の適用を受けない学生
- 3.年収500万円以上で副業として日雇い派遣に従事する方
- 4.世帯年収が500万円以上かつ主たる生計者以外の方
ただ、例えば学生が社会人になったり、年収や世帯年収が500万円未満になったりすれば仕事を紹介できません。また、スタッフの方の住所やメールアドレスが変更になる場合もあります。
これまでは、スタッフさんの情報編集はGoogleフォームで申請を受け付けていたのですが、登録型の派遣会社のためアクティブユーザーだけでも数万人と膨大であり、対応が追いつかないことが課題でした。
そこでRPA導入時に自動化できるのではと思ってロボットを作成したところ、作業時間の短縮はもちろん、漏れなどのヒューマンエラーも削減されました。
配信ツールでのメール・LINE配信
メール配信ツールは支店で利用していて、さまざまな連絡をメールで配信していました。しかし、配信作業に時間を要することで他の作業ができなかったり、基幹システムと配信ツールとでAPI連携ができない仕様になっていたり、複数の課題がありました。
例えば、配信ツールの中では、ターゲティングしたいリストの絞り込み条件に合っていない項目、ない項目などはメールアドレスやスタッフナンバーで、1名ずつ基幹システムにて検索して配信対象の項目にチェックを入れなければならない。しかもその作業を20~680件行う必要がある場合もあって、手作業で行った場合、1回の配信で3時間もかかることもありました。しかも時間がかかるだけではなく、件数が非常に多いため、電話対応など別の業務が入るとどこまで確認したか忘れてしまい、途中で戻ってやり直しになってしまうといったことから、従業員の精神的負担も大きかったのです。
そこで配信対象者のチェック、メール文面挿入、配信完了のチャット通知を行うロボットを作成し、自動化しました。
各種集計データ作成
事業運営や会社のルール策定、コンプライアンスチェックなどを行う事業企画部で各種集計データの作成も自動化しています。
以前はスタッフさんがどれだけ稼働したのかのデータ抽出、外国籍のスタッフさんで在留期間が切れていないかのチェックなどの業務を、基幹システムにて一人ずつ目視で確認していました。
Excelで関数やマクロを使ってはいたものの、作業をしている間はパソコンが使えないため、ほかの業務ができず、非効率的でした。そこでRPAを使い、早朝の4時半から動き出して、従業員が出社する時間までにはある程度の振るい分けができた状態でフォルダに保存するようにしたため、業務効率化を実現できました。
本社での間接部門業務は営業部と違い、売上げを生み出すことができない部署のため、この作業削減が業務改善につながり、非常に大きな効果を生み出しました。
日別で抽出したいデータ
基幹システムからしか得られない日々変動するCSVデータを、日別に抽出する作業も時間がかかるものでした。例えば、翌週7日分のデータを見る場合、1日に3,000件ほどの受注があり、そこに一人一人のスタッフさんが配置されているため、一気にデータ抽出をしようとすれば、サーバーに負荷がかかってしまいます。
そのため、地域ごとにCSVをダウンロードして、それを突合させて元データを作成し、さらに加工をするのでかなりの時間を要して手作業で行っていました。
そこで、RPAを使い、基幹システムからダウンロードするところからデータ作成、共有フォルダへ保管するまでの作業を自動化しました。担当部署が朝一で開始する作業が始業のタイミングで完了しているため、多い日で約2~3時間もの削減が実現できました。
電子帳簿保存法の対応
派遣会社の場合、保管が必要な書類は1日単位で発生するスタッフさんの勤怠シートや個別契約書、仕事依頼の度に来る依頼書、そして見積書などがあります。
利用している管理システムへの登録作業が発生していますが、案件ごとに内容が少しずつ異なったり、そもそも日付が1日単位だったりすることで一括登録が出来ません。これらを手作業で行うと1件で平均5分程度かかるものでしたが、対応件数に対して対応者・時間が間に合わない想定でした。そこで、法改正前からRPA作成を開始し、施行のタイミングから自動化運用が成功。1件あたり25秒で登録が可能になり、手作業時間だけでなく処理時間そのものの削減もできました。
派遣法の対応
派遣帳票の作成・クライアントへの送付対応に伴い、データを基幹システムから抽出する必要があります。それぞれの帳票で情報量が違ったり、基幹システムから抽出されるExcelデータに関数が多く含まれていたりでマクロがオーバーフローしてしまうため、細々としたデータ抽出をした上で作成を行うケースも少なくありませんでした。
作業が細かいほど他の業務と並行することができず手がかかりっきりになるため、RPAロボットを作成。営業部にはデータ抽出条件と完了期日を送ってもらうことで依頼を受け付け、ルーティンのRPAの合間にロボットを稼働させ、完了次第共有フォルダに保存します。期日経過時に担当者が共有フォルダを確認すると、データが入っている状態なので、効率よく対応ができるようになりました。
完全な業務巻取り型や、安心して任せてもらえる仕組み作りを意識して取り組む
RPAを運用している事業企画部 改革推進企画グループは業務改善を推進する組織で、営業部の自動化可能な事務作業の特定からRPAロボットの作成、ルール設定、運用に至るまでの一連のプロセスを担当しています。
RPA運用において最も重視しているのは、「業務の完全な巻き取り」と「注意点や新しい作業を最小限に抑えること」、「業務を安心して任せてもらえる環境づくり」です。
中でもチェック機能の組み込みや、エラー通知による迅速なRPAロボットの復旧策などさまざまな工夫をしています。
また、全社向けに新しいRPAの告知をした際「自動対応依頼方法のマニュアルを読む時間がない」と、活用以前の課題もありました。これらの課題に対して、できる限り業務巻き取り型のロボットにすることで、全拠点の足並みを揃えて業務効率化を進めることができています。
他にも、展開方法やマニュアルの内容、運用開始直後のフォローなど、当たり前のことにも時間を割けるようなスケジューリングも意識している取り組みの一つです。
直近では、RPAでデータ加工をした後のチェックやエラー通知をビジネスチャットの利用で見える化したことで、RPAの利用率は増加しました。実際、RPAによる業務の自動化を上手く活用できている拠点では1か月で90時間もの削減を実現しています。
ただ、“RPAがミスをするのではないか“といった懸念から依頼を怖がっている拠点もまだ存在しています。今後はこれらの不安を解消させ、RPA普及率をさらに向上させていきたいです。
今後はRPAの普及率を上げ、さらなる業務改善を実現させることが理想
RPAの導入から3年が経過しましたが、社内での普及率はまだまだ十分とはいえません。新たな業務の自動化を進める一方で、作成したばかりのRPAロボットは自動化を実現させつつもメンテナンスなどが多く発生し、逆に自分たちのタスクを増加させてしまうこともあります。全社向けの業務改善ロボット作成の傍ら、運用をする私たちの手元の業務自動化も常に意識して取り組んでいます。
この1年で2名がRPA担当者として加わり、導入教育が必要になりました。その時点でのRPA担当は私1名であったため、日頃の業務と並行しながら新メンバーの教育をしていた時期は、スターティアレイズが開催している「RoboTANGO導入済み企業様向けのセミナー」や「ヘルプセンター」を通じたサポートがとても役に立ちました。
現在は、RPAの普及率を向上させるための施策を模索中です。RPAを使って何ができるのかが全拠点に伝えきれていないと感じているため、4月にお題箱の設置を実施する予定です。
また、現在は部長・支店責任者クラスへの業務課題のヒアリングが中心となっていますが、実際に実務を遂行する一般メンバーやアルバイトの方々のほうが本社からは見えない業務課題を抱えていると思います。もっと幅広く意見を集める仕組み作りが必要なフェーズにきているのかもしれません。
社内業務の自動化を幅広く着手し始めている中で、オペレーションの課題に気付くことも増えました。最も大きな課題は、都度の問い合わせ対応や翌日の受注に対する急ぎの対応といった通常業務+αでのイレギュラー業務が多く、バランスが取りづらいことが従業員の負担となっていることです。今後もそんな負担を少しでも緩和できるロボットを作成したいと考えています。
さまざまな面から会社全体を改革するという目線で、RoboTANGOの力を借りながらクライアント・スタッフ・従業員それぞれにとって心地良い環境を増やし続けていきたいです。
RPAを導入したことがない企業でも気負わず導入できる
以前私は営業職だったこともあり、パソコンを使用する頻度は多くありませんでした。ただ、現在の改革推進企画グループに異動してからRPAを活用していく中で、全社で活用できるRPAロボットを作成したり、告知をしたりしているうちに、会社全体のことを考えるきっかけになり、RPA以外のスキルも身につくようになりました。
また、課題を抱える従業員の意見を集めるため、各拠点の上長へ依頼して数名を集めて行ったヒアリング会では、「何か改善をしてみよう」や「自動化できる業務を絞り出してみよう」という改善意欲と自動化への関心を他部署へ広げるきっかけとなりました。これはRPAの導入以上の一番大きなメリットだったと、若い会社だからこそ強く感じる部分です。
さらに、RPAロボットを作成していく中で、今まで使っていなかったショートカットキーや関数を使う機会が増えました。ショートカットキーや関数を活用するだけでも業務効率化につながるため、全社向けに業務効率化ハンドブックをリリースする予定です。RPAの運用を外注した場合、そうした発想は生まれにくい部分ですので、内製化したメリットの一つだと考えています。
パソコンが苦手だった私でも、これまでに29個のRPAロボットを作成しました。RPAを導入したことがない企業でも気負わずに導入してほしいと思います。