小売業
RPA導入によりECサイト運営における在庫管理や請求作業などを自動化し、年間800時間の作業工数を削減
- ECサイト
- 発送処理
- Excel/CSV
- 在庫管理
スポーツアパレルの企画をはじめ、輸入・EC販売をおこなう三誠商事株式会社の近藤様にRPA導入前の課題、RPA活用法や成果・効果についてお話を伺いました。
課題
- 夜間や休日など業務時間外に行う業務が多々あり、サービス残業が常態化していた
- 在庫管理システムと連携していないECモールの在庫管理は手作業で行う必要があり、担当者の負担が増大するため多店舗展開が難しかった
- 以前導入していたRPAは開発版と実行版でライセンスが分かれていたため、ECモールのUI変更の度に開発版の契約が必要になり、予算がオーバーしてしまっていた
効果
- 業務時間終了後に行っていたアナログな定型作業が自動化できたことで残業時間の削減、担当者の負担軽減が実現した
- すべてのECモールの在庫管理が自動化されるようになり、ECモールの売上向上につながった
- ECモール用の物流倉庫での物品リスト作成が自動化されたことで、人による適正在庫の確認がし易くなり、倉庫にかかるコスト削減が実現した
夜間に発生するECモールの請求作業や在庫管理システムの連携の問題からRPAを検討
スポーツ用品やスポーツシューズ、サンダルなどスポーツアパレルの企画、輸入、販売を行っています。EC販売が主ですが、ほかにはスポーツナショナルブランド製品の海外正規代理店経由の輸入卸売や三国間貿易なども行っています。
弊社ではECモールに直営店を出店していますが、外部にある倉庫での作業が終わった後でないとそれぞれのECモールでの請求作業ができないため、営業時間終了後に毎日1時間程度かけて行っていました。ただ、請求作業自体は単純な反復作業だったため、何とかしたいと考えていたのです。
また、弊社の在庫管理システムとAPIで連携できるECモールでないと運営が難しいというのも課題の一つでした。Amazonや楽天、Yahoo!などのECモールで多店舗展開をしたかったのですが、在庫管理が連携できないと管理が煩雑になるため出店することが難しい状況でした。
そうした課題の解決策を求めている時に、人からRPAを進められたんです。最初は他社製品のRPAでしたが、ECモールでの請求作業で試したところ、自動化ができたことから、すぐに導入しました。
ただ、導入したRPAは開発版と実行版が分かれており、ECモールの管理画面はUIが頻繁に変わるため、都度RPAロボットを修正・メンテナンスをしなくてはならず、そのたびに開発版の契約が必要になるため、契約の切り替えの手間と予算的にこのまま運用を継続するのは難しいと感じていました。どうしようかと思っていた時にRoboTANGOを知り、乗り換えの検討を始めました。
導入の決め手は「低価格での導入・運用が可能なこと」「1ライセンスで5つのアカウントまで利用できること」など
以前使っていたRPAも簡単には扱えましたが、コスト面の問題で乗り換えを検討しました。そのなかでもRoboTANGOの導入を決めた大きな理由は次の3つです。
- 開発版と実行版でライセンスが分かれていないこと
- 低価格での導入・運用が可能であったこと
- 1ライセンスで5つのアカウントまで利用できるため、将来的にロボ制作者が増えても対応できること
RoboTANGOはまず、低価格での導入、運用が可能だったことが導入の大きな理由です。開発版と実行版でライセンスが分かれていないので、メンテナンスの度にコストがかからないのはとてもよかったですね。
後は、1ライセンスで5台のPCで利用できるのも導入のポイントでした。将来的にRPAロボットを作成する担当者が増えても1ライセンスで対応できるということで、RoboTANGOへの乗り換えを決めました。
RPA導入でECモールの売上向上、業務担当者の負担軽減、残業時間削減などを実現
現在、スポットのものも含めて15個のRPAロボットを作成しました。主に次のような業務の自動化を行っています。
ECモールの請求作業
Amazon、楽天、Yahoo!などのECモールでの請求作業の自動化を行っています。
まずは在庫管理システムでの発送メールの送信作業です。在庫管理システムのボタンをクリックすると、今日発送したものが一覧で表示されるので、モールを絞って、CSVを抽出してECモールごとの管理画面に入ってアップロードします。
このアップロード作業は手でやると各店舗10分ぐらいかかってました。8店舗で毎営業日行っていたため、約1時間から1時間30分程度の時間を要していました。
それぞれのモールの管理画面でUIが変わると都度、RPAロボットの修正が必要になりますが、RoboTANGOであれば、修正版で追加コストがかかるわけではないので、残業時間削減はもちろん、RPA運用の大幅なコストダウンにもつながっています。
また、各ECモールでの配送フェーズの更新もRPAで自動化しています。ECモールによっては配送番号をお客様ごとに格納しないとペナルティになってしまいます。「発送待ち」や「発送済み」といったステータスも動かさないとなりません。
そこで、在庫管理システムで発送日を絞ってCSVで抽出し、ローカル環境に日付ごとのフォルダを作成し各ECモールのCSVを格納する。そしてその一つにまとめたフォルダをGoogleドライブにまるごとアップロードするまでを自動化しました。人の手でやると毎営業日2~3分はかかる作業です。
簡単な作業ですが、毎営業日発生している定型業務がRPAによって自動化され、人の作業工数はゼロになりました。
在庫連携
弊社の在庫管理システムとAPI連携が不可能なECモールでは、管理画面からCSVを抽出し、それを在庫管理システムから抽出したデータ内のJANコードやSKUコードなどと突合しなければなりませんでした。
さらに、現時点での在庫を1日1回アップロードする作業が毎日発生します。一店舗10分程度ですが、5店舗分行う必要があり、今まで作業に約1時間かかっていました。
人の手で行うと繁忙期は作業を忘れてしまったり、毎日の業務で手間になったりしていましたが、RPAで自動化を行うことで人の手を介さずに作業ができるようになっています。
また、これまでは難しかった在庫管理システムと連携していないECモールでの在庫連携もできるようになったため、複数のECモールで展開できるようになり、ECサイトからの売上向上にもつながりました。
ファイル格納
1か月に1度、各ECモールの売上データを取得して、Googleドライブの共有フォルダに格納する作業を自動化しました。
忘れてはいけない作業のため、人が行うことで作業漏れの心配がありました。RPAであれば、タスクスケジューラー機能を活用し、毎月決まった時間に作業するようにできるため、そうした心配もないので安心です。1回30分程度の作業でしたが、RPA導入後は作業時間がゼロになったことによる時間短縮に加え、漏れや忘れることがなくなったのは大きなメリットです。
物流倉庫への納品リスト作成
現在、弊社では自社倉庫のほか、メインのECモール2つの倉庫の在庫管理をしています。メインのECモール2つの倉庫がそれぞれ適正在庫になっているかを適切に管理するためのファイル作成を自動化しています。
例えば、1つの倉庫から商品が出荷されて、在庫が不足したら自社倉庫から商品を補填しますが、送り過ぎてしまうと倉庫の費用がかかってしまいコスト増になってしまいます。そのため、常に倉庫の在庫が適正になるよう、人が判断しなければなりません。その判断基準となる在庫数のファイル作成をRPAが行っています。
具体的にはそれぞれの倉庫の1か月分の在庫数を確認して一覧化する作業です。これまではほぼ毎営業日発生していた作業で1回15分程度かかっていましたが、作業時間自体もゼロになり、現在はその時間を適正在庫の判断に使えるようになりました。
ここまでに挙げた活用方法以外にも、他部署からの依頼や自身で行ってきて手間や時間がかかる反復作業の自動化を行っています。
不要なメールの削除
例えば、迷惑メールや不要になったメールの削除作業です。メールサーバーがいっぱいになってしまったので削除を行ったのですが、1回に50件ずつしか削除できないため、ひたすら繰り返し削除をする必要がありました。この作業に時間を割くのがもったいないと思い、すぐにRPAロボットを作成し、自動化しました。
在庫の棚卸
ほかにも誰も使っていない夜の時間に在庫管理システムにログインして棚卸を行う作業も経理部門からの依頼によりスポットでRPAロボットを作成しました。ボタンを押すだけの作業ではありますが、夜中の0時にパソコンを開いて人の手でボタンを押さなければならず、担当者に大きな負担がかかっていました。棚卸で年に1回の作業ではありますが、担当者の負担軽減につながりました。
欠品防止業務
この作業は毎朝5時に在庫の更新を行う作業です。今までは人の手でも行えておらず、RPAを導入してはじめて実現した作業です。
弊社が使っている在庫管理システムは、クラウドサービスのため他の企業も同時に接続し活用するとサーバーに負荷がかかりスムーズに作業ができなくなってしまいます。
そこで他企業が使っていない朝5時にロボットを稼働させることでスムーズな在庫更新が可能になりました。この作業を行うことでECモールの欠品を防止し、売上の最大化につながり、販売機会の損失がなくなりました。
20分程度の簡単な作業ではありますが、土日も含め毎日行っています。特定のメールを受信したら作業を始めたいので、ループ機能を使って10秒ごとにメールの受信を確認するシナリオを入れています。
従業員はいつもやっている作業は自分でできてしまうため、手間のかかるものでもそのままやってしまっています。そこで、少しでも認識してもらえるように会議でRPAを見せてロボットでできることを理解してもらえるよう活動しています。
しかし、社内にはまだまだ無駄な業務が残っているため、目を光らせ自動化を拡大して行きたいです。
今後はRPAを扱える人材を増やし業務のデジタル化を進めていきたい
現在は、RPAロボットを作成しているのが私一人なので、まずはRPAを扱えるようになる人材をどんどん増やしていきたいです。私が触れていない業務でRPAを使えば効率化を進められるものはまだまだたくさんあると思います。
ただ、その業務を行っているものがRPAで何ができるかをわかっていないと私にまで届いてきません。結果として簡単な反復作業でもアナログでやらなければならず従業員の負担が減らないままとなってしまうので、とにかくRPAに触れる人を増やしてデジタル化を進めていきたいです。
RPAは便利そうだけど扱いが難しいのではと思われている方は多いかもしれません。しかしスターティアレイズでは、導入時はもちろん運用時でもサポート体制がしっかりしているのではじめての導入でも問題はないと思います。
まずはトライアルをフル活用して簡単なRPAロボットから作成していくといつの間にかできるようになっていると思いますので、とりあえず試してみることをおすすめします。