はじめに

経済産業省ではものづくりに取り組む中小企業への支援を積極的に行っています。特に、毎年公募されるものづくり補助金では、設備投資やツールの導入に対して補助金の交付を行っており、補助金の申請を行う中小企業も年々増えています。RPAをはじめとするツールを導入する際、少しでも導入費用が安く抑えられると嬉しいですが、そんなときに利用できるのが補助金です。本記事では、ものづくり補助金を利用してRPAを導入するための基礎知識をお伝えしつつ、補助金の採択率アップのためには専門家の力が必要になる点を解説していきます。

※本記事は2019年度の実績と2020年1月に公表された事務局の公募要領をもとに執筆された記事です

<参考>
中小企業庁のホームページ
ものづくり補助金総合サイト

ものづくり補助金とは

ものづくり補助金(正式名称「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」)とは、経済産業省中小企業庁が管轄する補助金の一つです。 もともとは、「中小企業生産性革命推進事業」という事業の一つにものづくり補助金があり、2019年度は1100億円の補正予算が組まれました。ものづくり補助金のほかには、小規模事業者が販路拡大のために利用できる「持続化補助金」や、バックオフィス業務を効率化させるためにITツールを導入するための「IT導入補助金」などがあります。

補正予算1100億円は、ものづくり補助金と持続化補助金とIT導入補助金を合算した予算です。それぞれの予算配分について詳細は公表されていませんが、ものづくり補助金については1100億円のうち800億円を占めると言われ、すでに1万社近い中小企業が活用しています。

さらに、2019年12月20日には来年度予算案が閣議決定され、中小企業生産性革命推進事業の予算額が3600億円に増額されました。中小企業の今後相次ぐ制度変更への対応のため、生産性向上を継続的に支援するために3つの補助金を一体運用し、支援する方針とのことです。

ものづくり補助金は製造業の活用事例が多く見られますが、製造業以外にもサービス業や小売業、卸売業など様々な業種の企業が活用できます。IT関連の投資については、IT導入補助金が連想されますが、システム関係ではものづくり補助金を活用することも可能です。

ポイント
★ものづくり補助金とは、中小企業庁が管轄する国の補助金施策
★補助金の対象となるのは設備投資やツール・システムの導入費

ものづくり補助金の補助率・公募時期・採択率

ものづくり補助金の補助額表

2019年度の実績としては、ものづくり補助金の補助額は最大1,000万円で、補助率は原則1/2です。つまり2000万円を投資し、1/2の1000万円の補助を受けるのが上限ということです。仮にものづくり補助金を受けたい企業が1,500万円の設備投資を行うための申請を行ったら、最大750万円が補助金となり、2,500万円の設備投資を行うための申請を行ったら、最大1,000万円が補助金となります。

中小企業の多くが、この条件を活用し、システムの整備や工作機械などの導入を行っています。また、2020年度の公募期間については2月ごろに事務局が決定し、3月ごろから順次公募が開始される予定となっています。

これまでおおむね年2回のタイミングにわけて公募が実施されてきました。一方で今後は制度の運用方法が見直される予定です。設備投資の計画がたてやすい実施方法が検討され、公募期間についても複数回の締め切りが通年で設けられる見込みであり、3ヶ月ごとに1回程度の採択発表を予定していると発表がありました。

ものづくり補助金は平成24年から運用されている制度で、申請数は2万件から3万6000件ほどにのぼります。2019年度は約2万件の企業が申請しました。正確な数値は発表されていませんが、採択率は30%~50%を推移しています。

ポイント
★ものづくり補助金の補助額は100万円~1,000万円
★ものづくり補助金の補助率は中小企業で1/2、小規模事業者で2/3
★ものづくり補助金の公募は3月ごろから順次開始される予定

ものづくり補助金の申請から受給後までの流れ

申請の流れの図

申請の流れとしては、まず各企業が取り組み内容をまとめた事業計画書を提出します。その後、複数人の専門家によって審査され、妥当性が高い企業から採択されるという仕組みです。これは事業計画書の出来ばえによって受給可否が変わってくるということです。

同様の設備を導入しようとする企業でも、事業計画書の内容によって採択される場合と採択されない場合があります。事業計画書について自社での策定に自信がない企業のなかには、専門家に策定のサポートを依頼する企業もあります。

また、補助金制度は採択後、すぐに補助金を受給できるわけではありません。例えば2019年度の場合、2月中旬~5月上旬が公募期間であった1次公募では、6月末に採択結果が出ます。採択後に改めて交付申請書を提出します。
※R1年補正では、公募時点の計画書申請と交付申請が一元化される可能性があり、手続きの簡素化が期待されています。

その後交付決定通知を受け取って初めて、企業は設備の発注が可能となります。その後、補助事業期間と呼ばれる期間内に設備導入・追行状況報告・中間監査を実施しなければなりません。そして最後に事業計画書で掲げた取り組みに対する実績報告書を作成・提出します。

このような流れを経て確定通知を受け取ることで、補助金が交付されます。したがって、交付決定前に先に発注・購入されたものは対象外となります。各公募に応じて設備導入および費用の支払い期限が決まっているため、申請時に設備の導入時期が対象期間と合致するかを検討しなければなりません。

申請から補助金受給まで、早くても半年以上はかかり、すぐ補助金を受給できるわけではないということを念頭に置いておく必要があります。受給が決まった後に自社で全額負担して設備を発注・購入し、後から支払った費用の一部が補助金として精算されるため、資金繰りの段取りを考えておく必要があります。

ポイント
★事業計画書の出来栄えによって採択率が変わってくる
★事業計画書の作成には専門家のアドバイスがあった方が良い
★事業計画書の提出→採択決定→交付申請書の提出→交付決定通知書→設備の発注・導入→報告・監査→実績報告書の作成・提出→確定通知→補助金受け取りという順番になる 
★交付決定前に発注されたものは補助金対象外になる

※R1年補正では、公募時点の計画書申請と交付申請が一元化される可能性があり、手続きの簡素化が期待されています。

申請時だけではない採択後の事務手続き

申請書類・事務手続きの図

補助金を活用した設備投資は、単に申請書の提出だけでなく、採択された後に様々な書類作成・手続きを行わなければなりません。また、補助金受給企業は、その後5年間は事業の取り組み報告を行う必要があります。

補助金の財源は税金ですので、政府は補助金を活用した企業の成果を集計し、今後の政策をより良いものにしていくために検証しなければなりません。そのため、補助金を活用した企業は各種報告をすることが求められるのです。
R1年補正予算からものづくり補助金を受給する企業には、申請時に3~5年の事業計画で示した

  • 付加価値額 +年平均3%以上
  • 給与支給総額増額 +年平均1.5%以上
  • 事業場内最低賃金 地域別最低賃金+30円

を達成できているかどうかを報告する必要があります。
その達成度合いによっては、補助金の一部を返納する可能性もあることから、しっかりとした事業計画を立案に合わせて、しっかりとした事務処理、報告体制を社内で構築しておく必要があります。

このように、補助金活用には多くの手間がかかり、敬遠する中小企業も少なくありません。しかしうまく活用すれば、設備投資の負担を大幅に軽減できるので、事業を運営・拡大していくために活用するメリットがあることは明らかです。

ポイント
★補助金を受けられたら、その後5年間は事業の取り組みを報告する義務がある
★事業計画で義務付けられた指標を達成できない場合は補助金の一部返納の可能性もある
★綿密な事業計画策定と事務処理を行える体制をしっかり整えることが大切である

ものづくり補助金を利用してRPAを導入する

弊社スターティアレイズが展開している業務自動化ソリューション「ReiWorQ(レイワーク)」では、ものづくり補助金を利用してRPAツールを導入するためのご提案を積極的に行っています。2019年度も、ものづくり補助金を利用してRPAツールであるRobo-Patを通常よりもお得に導入された企業様がいらっしゃいます。
誰でも補助金に応募できるということではなく、複数の条件を満たした企業様しかこの補助金には申し込めないのですが、ReiWorQではRPAの業務診断に加えて補助金の対象となるのかという診断も行っております。
2020年度のものづくり補助金は3月ごろから公募が開始される予定となっております。公募が開始されてから情報収集を始めてからでは間に合わない可能性が高いので、早め早めの対策が必要です。より詳細な情報が必要な方はお問い合わせフォームからご連絡くださいませ。

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シェアビジョン株式会社小林卓矢取材協力
シェアビジョン株式会社 https://svltd.co.jp/
代表取締役 小林卓矢

1979年5月生まれ。山梨県出身。 明治学院大学卒業後、2002年に株式会社エフアンドエム(東証JASDAQ上場)へ入社。
中小企業向けに、事業計画策定による金融支援から各種補助金申請のコンサルティングサービスの新規事業を立ち上げる。
ものづくり補助金では、2000社以上の企業を支援し、全国で2番目に多い採択実績を4年連続達成する組織(民間コンサルティング会社では1位)まで事業本部長として牽引。
経済産業省主催の中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン策定検討会に検討委員として参画し、中小企業の生産性向上に向けた方向性・具体的な手法のガイドライン策定にも関与。
■著書
小さな会社が自社をRPA化したら、生産性がグーンとアップしました。