DX(デジタルトランスフォーメーション)の意味とは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)の意味とは?

DXは2004年に初めて提唱された比較的新しい概念です。DXの定義にはさまざまなものがありますが、IT専門調査会社のIDC Japanによる2017年のレポートの中ではこのように記述されています。

”企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォームを利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること”

出典:DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服とDXの本格的な展開~

つまり、社内のさまざまな要因(組織、文化、従業員)によい変化を起こし、激しい市場や顧客のニーズや状況に対応しながら新しい価値(商品、サービス、考え方など)を生み出すという概念と考えてよいようです。

そして、DXを推進するためには以下の2つの要因が必要となります。 内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革IT技術を利用した顧客体験の変革 このうち、「内部エコシステムの変革」に貢献できるのではないかと考えられているのがRPA(robotic/robotics process automation、ロボティック/ロボティクス・プロセス・オートメーション)、AIなどの技術です。 日本企業ではこれらの技術やサービスの受け入れ体制が依然として整備されていない企業が多いのが現状です。そのため、それが原因で結果として日本経済が停滞するほどの悪影響を及ぼすのではないかと懸念され、「2025年の崖」と称されています。

この機会に情報をキャッチアップして推進し、新しい価値を創造して優位性を確立しましょう。

RPAを活用したDXの事例

それでは、RPAを活用してDXを推進することに成功した事例を紹介します。

BtoB向けに什器のレンタルサービスを手掛けるとある会社では、業務改革のためにBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)を推進するプロジェクトを開始し、RPAはその一環として導入しました。この会社の課題は経理業務の改善が進んでいないことです。そして、従業員一人ひとりが自主的に業務改革を行い、この部門の効率化を達成したいという目標がありました。
BPMの達成のためには、主体的に業務改善を進められる自己改善型の組織を作らなければならない、と考えました。

このような組織風土にRPAを取り入れてDXを推進することは非常に相性がよいといえます。なぜなら、RPAはただ導入しただけではその成果を得られず、業務の棚卸しを行って任せる業務を選定する、ロボットを開発してシナリオを作成するなど主体的に行動して操作することが必要とされるからです。

フェーズ1 フェーズ2 フェーズ3
基幹システムへ手入力
(毎月のルーティン作業)

エクセルで管理可能に調整
Robo-Patで約20のロボットを開発

・エクセルと基幹システムの連携
・売上見込み報告の確認  …など

フェーズ1で作成したエクセルはロボットが自動的に入力
従業員の作業は、
RPAの「作業が完了した」
という通知メールをチェックして、問題ないかを確認するのみとなった

RPAを活用したBPMで、既に年間400〜450時間を削減

  • フェーズ1

まず、RPAの「Robo-Pat(ロボパット)」を導入する際に、例えば毎月のルーティンになっている入力作業をそれまでは人の手で基幹システムに入力していたものを、まずはエクセルで管理できるようにしました。

  • フェーズ2

そして、Robo-Patで約20のロボットを開発し、主にエクセルと基幹システムの連携や、売上見込み報告の確認といったシナリオを作成しました。これにより、先に作成したエクセルはロボットが自動的に入力します。これにより、毎月のルーティンについて従業員が行うことは、作業が完了したという通知のメールをチェックして問題ない状況であるかを確認するのみです。 この会社ではRPAを活用したBPMですでに年間400〜450時間を削減しています。

  • フェーズ3

今では、ある若手社員が自主的に業務の棚卸しを行い、RPAに適した業務のロボットを開発。その内容を全社員に発表する場を設けてモチベーションを高め、全社員が向上心を保ちながら業務改善を行える仕組み作りをしています。

DXを推進するメリット

DXを推進するメリット

ではDX化により、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、DXを推進する5つのメリットをご紹介します。

生産性の向上

DXを推進する最大のメリットは生産性の向上が期待できる点です。 DXを進めながら業務プロセスを見直すことで、業務の無駄がなくなり、工数の削減や効率化が期待できるでしょう。 さらに、ロボットって業務を自動化するRPAを活用すれば、業務効率が高まるだけでなく、ミスが減り業務品質の向上にもつながります。

BCPの充実につながる

DXの推進はBCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)の充実にもつながります。 災害や事故などの有事の際には、早急に危機対応体制に切り替える必要があります。業務時間外でもRPAで対応できる体制を整えておけば、緊急事態が発生した際も損失を最小限に抑えられるでしょう。

働き方改革の実現

業務にDXを取り入れることにより、働き方改革も実現できます。 DX化で業務の効率を高めれば、限られた時間内で成果を出せるようになります。そのため、残業時間が削減できるでしょう。 またRPAなどのツールの導入は、リモートワークの推進にもつながります。場所にとらわれずに働ける環境を整備することで、働き方改革の実現が可能です。

レガシーシステムからの脱却

DX化により、過去に構築されたレガシーシステムから脱却できます。 老朽化したレガシーシステムを放置していると、システムの運用や保守に多くのコストや工数がかかります。DXの推進の一環として新たなシステムを構築し、レガシーシステムからの脱却を図りましょう。

ビジネスモデルの変革

DXの導入は新たなビジネスモデルやサービスの開発にもつながります。 IoT(Internet of Things、モノのインターネット)やSNSを通して、これまで取得できなかったデータが取得できるようになります。これにより、顧客ニーズを把握できるようになるため、新たなビジネスモデルやサービスの開発ができるでしょう。

RPAを活用したDXの進め方

RPAを活用したDXの進め方

それでは、どのようにRPAを活用してDXを進めていったら良いのでしょうか。ここでは手順を解説します。

改善すべき業務を洗い出す

まずは、改善すべき業務を洗い出しましょう。 RPAで何ができるかを情報収集しながら、どの業務でRPAを導入したいかを検討します。具体的にどの業務にRPAを導入したいかを考えると見えてくる課題もあるでしょう。

また実際に導入してから新たなRPAの活用法を見つける場合もあります。後からRPAを活用したい業務が出てきた時に備えて、RPAを導入するかしないかに関わらず改善したい業務を全て洗い出しておくと良いでしょう。 導入後に効果的に運用するためにも、改善すべき業務の洗い出しは大切です。

RPAに置き換え可能な業務を策定する

改善すべき業務を洗い出したら、RPAに置き換えられる業務を策定します。 RPA導入にかけられる予算や時間は限られているので、優先順位を決めながら検討しましょう。

この際、データ入力や転記作業など、手順が簡単で作業量が多いものを優先するのがおすすめです。 RPAは手順が複雑な業務やイレギュラーな業務は得意ではありません。そのため、非定型業務ではなく定型業務から導入していきましょう。

RPAで自動化する業務が決まったら、RPAの業務の範囲や手順、トラブル発生時の対処法などをマニュアルにまとめておくと、RPAのスムーズな運用が実現できるでしょう。

IT人材の獲得と社内教育の強化

RPA導入を成功させるにはIT人材の獲得と社内教育の強化も必要不可欠です。 RPAの導入をスムーズに進めるには、DXやRPAに精通したIT人材を外部から迎えて、DXを推進する組織を構築すると良いでしょう。

しかし実際にRPAを使用するのは現場の社員であるため、組織づくりだけでなく社内教育も重要です。外部の講師を招聘したり、RPAを提供している企業が実施している講座を受講したりして、現場できちんとRPAを活用できるように社内教育にも力を入れましょう。

RPAでDX推進する際のポイント

RPAを導入するだけでは、DXを効果的に進められません。ここでは、DXを推進する際に押さえておきたいポイントを2つ紹介します。

スモールスタートで始める

RPAの導入は小規模で始めましょう。 一度にさまざまな業務をRPAで自動化したいと思いがちですが、導入初期はトラブルが発生することが考えられます。

慣れていないシステムでトラブルを解決するにはそれなりに時間がかかるので、トラブルに対応できるようにプロジェクト単位で導入するなど、スモールスタートで始めましょう。 システムに慣れて効果が得られるようになったら、他のプロジェクトにも段階的に導入していき、導入業務を広げていくと失敗がありません。

効果測定を行う

RPAの導入で削減できた人件費や工数、外部委託費用とRPAの保守運用にかかる費用などを計算し、導入前と後を比較して費用対効果を算出しましょう。数値で表しにくいミスの軽減や社員の精神的な負担の軽減などは、RPA導入後に社員へのヒアリングやアンケートを行なって効果測定します。

RPAを初めて導入する際は、初めから高機能なRPAを選ぶよりも、シンプルな機能で簡単に利用できるRPAを選ぶのがおすすめです。シンプルな機能のRPAは、比較的低価価格で導入でき、簡単に操作ができるので、より高い費用対効果が期待できるでしょう。

まとめ

DXを進めるには、RPAやAIなどの技術の活用が役立ちます。ある会社ではRPAの導入により、毎月のルーチン業務となっていた入力作業を自動化して、従業員の作業負担の軽減に成功しました。作業負担の軽減により働き方改革を推進する以外にも、DXの推進により生産性の向上やBCPの充実、レガシーシステムから脱却、ビジネスモデルの変革が期待できます。

RPAでDX化する際は、まず改善すべき業務を洗い出してからRPAに置き換えられる業務を策定します。
そしてRPAの導入時には、IT人材の獲得と社内教育の強化も行いましょう。

RPAでDXを推進していくには、まずはスモールスタートで初め、効果を測定しながら導入業務を広げていくのがポイントです。 本記事で紹介した成功事例やDXを進めるメリット、RPAを活用したDXの進め方やDX推進のポイントを参考にして、ぜひ自社のDXへの取り組みに役立ててください。