RPA内製化とは?基礎知識と注目される背景

RPA内製化とは

RPAの内製化とは、RPAの導入・ロボット(シナリオ)の作成・運用・保守を自社内で行うこと。

RPAの内製化とは、RPAの導入から運用・保守までを自社内で完結させることを指します。具体的には、業務を自動化するシナリオ(RPAロボット)の作成や、RPAの動作管理、エラー対応、業務変更に伴う修正などを自社の担当者が行います。
また、運用を安定させるために、シナリオの定期的な見直しや改善、社内でのナレッジ共有も必要です。
外部のベンダーに依頼せず、自社の判断で柔軟に運用・改善できる点が特徴です。

国内企業におけるRPAの内製化と外注の割合

スターティアレイズが2024年12月に実施した「RPAツール導入に関するアンケート 調査結果レポート」によると、RPAの運用体制において内製化の傾向が強いことがわかります。

RPAツールの運用体制(社内運用/外注)

調査では、「専任チームが運用している」が全体の46%と最も多く、次いで「部署ごとに担当者が運用している」が43%を占めました。特に中小企業では、部署単位での運用が44.40%と、大企業(42.52%)よりやや高い割合となっています。
一方、「外部のベンダーに依頼している(RPA開発派遣・外注を含む)」と回答した企業はわずか4%にとどまり、RPAの運用においては企業による内製化が主流であることが分かります。

なぜRPAの内製化が注目されているのか?市場の動向

1. RPA導入の拡大と内製化ニーズの高まり

近年、業務効率化やDX推進、働き方改革への対応策として、RPAを導入する企業が増えています。
デロイト トーマツ ミック経済研究所が2024年に行った調査によると、国内のRPA市場規模は2022年度に795億円だったものが、2023年度は903億円(前年比113%)、2024年度は1034億円(同114%)、そして2025年度には1183億円(同114%)に達する見込みで、今後も着実な成長が予測されています。

RPAツールを導入する前の課題

また、RPA導入が普及している背景には、「手作業による業務の多さ」や「ミスの発生」、「業務の属人化」、「マニュアル化された業務の多さ」といった課題があげられます。日々の業務で発生する課題を解消する手段として、特に定型業務の自動化に強みを持つRPAの活用が広がっています。

RPAを社内で運用することで、業務フローの標準化や継続的な改善がしやすくなり、自社の業務に合わせた柔軟な対応が可能になります。こうした背景から、内製化のニーズはますます高まっていきそうです。

2.人材不足への対応

慢性的な人手不足は多くの企業にとって喫緊の課題となっており、限られた人員・リソースで多くの業務を回さなければならない状況が続いています。特にバックオフィス業務では、単純作業やルーティンワークが多く、担当者への肉体的・精神的負荷が高くなりやすいのが実情です。
その中でRPAは人に代わって業務を処理できる手段として注目されており、繰り返しのタスクや単純作業などの定型業務をRPAが自動化することで、担当者は創出できた時間を活用して本来注力すべきコア業務に取り組めるようになります。
また、業務を属人化させずに標準化できる点もRPAの強みです。内製化し、現場の実務担当者が自分たちでRPAを使えるようにすることで、人手が足りない中でも安定して業務を進められるようになります。

3.RPAツールの進化によるハードルの低下

以前はRPA開発には専門知識やスキルが必要なツールが主流でしたが、最近ではノーコード・ローコードのRPAツールが増え、業務における実務担当者でも扱いやすくなっています。これにより、ベンダーに頼らず社内でRPAを開発・運用する内製化が現実的な選択肢となったのです。

RPA内製化のメリット・デメリット

RPAを内製化すると、コスト削減や柔軟な運用が可能になりますが、一方でスキル不足や運用負担といった課題もあります。ここでは、RPAの内製化を進める際のメリットとデメリットについて詳しく解説します。

【RPA内製化の5つのメリット】コスト削減やスピーディーな運用の実現

RPA内製化の5つのメリット

1.コスト削減

RPAを外注すると、開発・修正・保守のたびに費用が発生するだけでなく、その都度やり取りや調整が必要になり、時間と手間もかかります。
業務内容や操作画面のUIが少し変わるだけでも、見積もり依頼や発注などの手続きが発生し、積み重なるとコストだけでなく工数的な負担も大きくなりがちです。内製化していれば、社内のメンバーがロボットを作成・修正できるため、外部への依頼ややり取りが不要になり、費用面でも工数面でも効率化が図れます。特にRPAの活用範囲を広げていきたい企業にとっては、内製化のメリットはより大きくなります。

2.スピーディーな運用・改善が可能

運用を続けていく中で、「画面の仕様が少し変わった」「ここの業務の手順を変更したい、追加したい」「完了時の通知先を変更する必要がある」といった微調整はつきものです。
外注している場合、修正のたびに時間がかかりますが、内製化していれば、社内ですぐに対応が可能です。業務部門が主体となってRPAを運用できる体制をつくれば、現場の判断で迅速に修正・改善を行えるため、日々の業務にすばやく対応できます。

3.自社の業務に最適化しやすい

外注では、どうしても汎用的なロボットになりがちですが、内製化であれば実際の業務に合わせて細かく調整することが可能です。たとえば、「この取引先だけ特別な処理が必要」「このフォーマットは部署ごとに違う」といった現場特有の事情も、担当者自身が作成すれば正確に反映できます。
また、運用を通じて「ここも自動化できるかも」といった気づきが生まれやすく、ちょっとした“手間”や“面倒”を感じたタイミングで、自らRPAを作成して効率化を進めていくこともできます。このようにRPAを内製化することで日々の業務改善のサイクルが自然とまわり、継続的な効率化にもつながっていきます。

4.現場主導でDXと業務の見直しが進む

RPAの内製化は、単なる業務効率化にとどまらず、現場部門自らが業務改善や業務改革に関与するきっかけとなります。
業務を熟知している担当者が主体となって自動化に取り組む中で、「この作業は本当に必要か」「もっとシンプルにできないか」といった視点が自然と生まれ、既存の業務プロセスを見直す流れが促進されます。
その結果、無駄な手順や重複業務の削減にもつながります。IT部門任せのDXから脱却し、現場とITが連携して持続的な業務改善・最適化を進める体制の構築にも寄与します。

5.社内にノウハウが蓄積される

RPAを内製化することで、開発・運用・改善の過程で得たノウハウやナレッジが社内に蓄積されていきます。
そのため、属人化を防ぎつつ、似たような業務への展開や再利用がしやすくなります。また、新たなメンバーへの教育も内製ノウハウをベースに効率的に進めることができ、RPA活用の裾野を広げていくことが可能です。将来的なスケール拡大や他部門展開においても、大きな強みとなります。

【デメリット】スキル不足や属人化リスク

RPAを内製化する場合、ツールの操作方法やシナリオ作成に関する知識が必要になります。特に、従来のプログラミングが必要なRPAでは、エラー対応や業務変更時のシナリオ修正に専門知識が求められ、スキル不足が課題となることがあります。
しかし、最近ではノーコード・ローコード型のRPAツールも増えており、プログラミング知識がなくても簡単に操作できるものもあります。こうした初心者向けのRPAを選ぶことで、スキル不足の課題を解消しやすくなります。特に、直感的なUIを備えたツールや、サポート体制が充実している製品を選ぶことで、導入のハードルを下げることが可能です。

また、内製化の際に特定の担当者だけがRPAを扱うようになると、属人化のリスクが高まります。そのため、マニュアルの整備や、複数人での運用体制を構築することで、知識やノウハウの分散を図ることが重要です。

初心者向けのツールを活用し、運用をチームで行うことで、スキル不足や属人化の課題をより効果的に解消できます。

RPA内製化の成功のポイント5つ

1.自動化の目的を明確にする

RPAを導入する際は、業務効率化やコスト削減など、何を目的として自動化するのかを明確にすることが重要です。目的が曖昧なまま導入すると、効果を十分に発揮できず、定着しにくくなります。導入前に業務の課題を整理し、RPAでどのような改善が可能かを検討することが成功のカギとなります。

2.使いやすいRPAツールを選定する

内製化を成功させるには、社内のスキルレベルや業務内容に適したツールを選ぶことが重要です。
初心者にはノーコード型のRPAが適しており、直感的な操作でシナリオを作成できるため、業務担当者でも扱いやすく、導入のハードルが低くなります。
一方で、プログラミングの知識がある場合は、ローコード型やコードベースのRPAを活用することで、より高度な自動化が可能になります。
また、ツールごとにライセンス形態やサポート内容が異なるため、運用後の負担も考慮しながら選定することが重要です。

3.属人化を防ぎ、運用ルールを整備する

RPAの運用が特定の担当者に依存しないよう、シナリオ作成やエラー対応のルールを標準化し、社内で共有できる体制を整えることが必要です。具体的には、作成したシナリオの管理方法、バージョン管理、エラー時の対応フローを文書化し、関係者間で共有する仕組みを整えます。属人化を防ぐことで、長期的に安定した運用が可能になります。

4.定期的な見直しと改善を行う

RPAは導入して終わりではなく、業務の変化に合わせてシナリオを見直し、より効率的な運用を目指すことが重要です。定期的に運用状況を確認し、改善点を洗い出すことで、RPAの効果を最大化できます。

5.RPAの有用性を社内で共有する

RPAの活用を社内に広げるために、成功事例や導入効果を共有し、RPAの有用性を理解してもらうことが大切です。成果を見える化し、定量的な効果(削減時間・業務負荷の軽減など)を示すことで、社内の理解が深まります。社内報やミーティングでRPAの活用状況を発信し、他の部署にも導入のメリットを伝えることで、RPAの定着を促進できます。

RPAの内製化が難しい?外注を選ぶべきケースとは

RPAの内製化が難しい?外注を選ぶべきケースとは

RPAの内製化には多くのメリットがありますが、すべての企業にとって最適な選択肢とは限りません。業務の複雑さや社内のリソース状況によっては、外注を活用する方が効率的な場合もあります。本章では、RPA内製化と外注の比較違いから、外注を検討したほうが良いケースについて解説します。

RPAの内製化と外注の違い

RPA導入にあたっては、「内製化するか」「外部に委託するか」の判断が重要なポイントになります。それぞれにメリット・デメリットがあり、目的や社内体制に応じた選択が必要です。
以下に、主な違いを項目ごとに比較してみました。

項目 内製化 外注
コスト 初期投資のみ
(人材育成が必要)
開発・運用のたびに費用発生
柔軟性 社内で即対応可能 ベンダー対応待ち
導入スピード 社内スキル次第で変動 専門家による迅速な開発
運用・保守の負担 社内で管理・改善が必要 ベンダーに任せられる
ノウハウの蓄積 社内にスキル・知識が蓄積される 社内にノウハウが残りにくい

内製化は、運用コストを抑えつつ社内にノウハウを蓄積できる一方で、スキル習得や体制整備が必要です。外注は、早期導入や安定運用が見込めますが、継続的に外部リソースを確保する必要があります。
ではどのような企業が外注に向いているのでしょうか。

RPA開発を外注した方が良いケース

RPAの導入は必ずしも内製化する必要はなく、業務や社内リソースの状況によっては、外注を活用する方が効果的な場合もあります。以下のようなケースでは、RPA開発を外注することでスムーズな導入・運用が期待できます。

1.短期間でRPAを導入したい

内製化には、ツールの選定や担当者の教育、試行錯誤を含めたシナリオ作成など、時間がかかる要素が多くあります。もし「早急にRPAを稼働させたい」といった状況であれば、専門のベンダーにシナリオ作成を依頼することで、短期間で業務を自動化できます。

2.内製化を試したが運用負担が大きかった

RPAを内製化しようとしたものの、エラー対応や業務変更に伴うシナリオ修正などが負担になり、うまく活用できなかった場合も、外注を検討すべきタイミングです。外部の専門家にRPAロボットの作成や運用を委託すれば、社内リソースを圧迫せずにRPAを活用できます。

3.業務が複雑で適切な自動化設計が難しい

RPAは定型業務の自動化に適していますが、業務フローが複雑で例外処理が多い場合、適切な自動化の設計が難しくなります。このような業務を無理に内製化しようとすると、かえって手間が増えたり、期待した効果が得られなかったりする可能性があります。

特に、データのチェックや最終確認、例外処理が頻繁に発生する業務では、RPAだけでは完結せず、人の手による作業が必要になることがあります。こうした業務を効率化するには、RPAの導入に加え、外部のBPS(ビジネスプロセスサービス)を活用し、人とロボットを組み合わせた業務運用を検討するのが効果的です。BPSを活用することで、RPAで処理したデータの確認や修正作業を外部の専門チームに任せることができ、社内の負担を軽減しつつ業務を最適化できます。

4.人手不足で内製化の余裕がない

すでに従業員が日々の業務で手いっぱいになっている企業では、RPAの内製化に必要な学習や運用のためのリソースを確保しにくくなります。その結果、導入したものの放置されてしまうケースも少なくありません。
この場合、外部にRPAロボットの開発を委託し、運用のみ社内で行う形をとることで、リソース不足の課題を解消できます。

スターティアレイズでは、企業のリソース不足や人手不足の課題に応えるべく、業務ヒアリングからRPAロボットの作成までを代行する「まるなげRPA」や、業務プロセスをまるごとお受けする「BPS」のサービスを提供しています。自動化の設計や運用に課題を感じている場合は、こうしたサービスの活用も選択肢の一つです。

内製と外注のハイブリッド運用という選択肢もあり

RPAの導入・運用において、「内製化」か「外注」かのどちらかを選ぶのではなく、両者を組み合わせたハイブリッド運用という選択肢もあります。例えば、日常的な運用や簡単なシナリオの作成は社内で行い、複雑な開発や保守、業務の最適化は外部に依頼するといった形です。

この方法を取ることで、コストを抑えつつ、RPAの専門的な知識が必要な部分はプロに任せることができるため、スムーズな導入・運用が可能になります。また、内製化を進めながら外部サポートを活用することで、段階的に社内のスキルを向上させることもできます。

特に、RPAだけでは対応しきれない例外処理や業務フローの見直しが必要な場合には、BPS(ビジネスプロセスサービス)と組み合わせた運用も有効です。業務の一部をアウトソースすることで、RPA導入の負担を軽減しながら、自動化のメリットを最大限に活かすことができます。

RPA内製化を進めるための具体的なステップ

RPAを内製化するには、適切な準備と段階的な導入が重要です。以下のステップに沿って進めることで、スムーズな運用が可能になります。

1 業務の洗い出しと自動化の適用範囲を決定 RPAの効果を最大限に引き出すために、どの業務を自動化するのかを明確にします。
ルールが明確で、繰り返し発生する業務を優先的に選ぶことで、導入後の効果を実感しやすくなります。
2 RPAツールの選定とライセンス形態の比較 社内のスキルレベルや業務内容に適したRPAツールを選び、必要なライセンス形態を検討します。
ノーコード・ローコードツールを選ぶことで、非エンジニアでも扱いやすくなり、内製化のハードルが下がります。
3 社内の運用ルールを策定する RPAの運用が属人化しないように、ロボットの管理ルールを定めます。
開発・運用・保守の役割を明確にし、エラー対応のフローや、バージョン管理の方法を整備することで、安定した運用が可能になります。
4 社内研修やサポート体制の整備 RPAを扱う担当者のスキル向上のため、操作トレーニングや勉強会を実施します。
また、RPAの運用に関する問い合わせ対応の仕組みを整えることで、継続的な活用を支援します
5 試験導入とパイロット運用 本格運用の前に、小規模な業務でRPAをテスト運用し、課題を洗い出します。
実際の業務で試行することで、運用上の問題点を事前に把握し、より効果的な導入につなげます
6 内製化に必要なリソースと運用体制の確立 RPAを社内で運用し続けるために、専任チームの設置や、各部署の担当者を明確にするなどの体制づくりを行います。
業務部門と連携し、継続的に運用できる環境を整えることが重要です。
7 継続的な改善と運用フローの最適化 導入後も業務の変化に応じてシナリオを改善し、より効率的な運用を目指します。
また、新たな自動化対象業務を見つけることで、RPAの活用範囲を広げ、さらなる業務効率化につなげます。

RPAの内製化とは:まとめ

RPAの内製化とは、導入から運用・保守・改善までを社内で行うことを指します。内製化を進めることで、コスト削減や柔軟な運用が可能になり、自社の業務に最適化したRPA運用が実現できます。ただし、スキル不足や属人化のリスクがあるため、適切なツールの選定や運用ルールの整備、社内での共有を徹底することが重要です。

RPAを内製化するためには、シナリオ作成の手順や動作テストの方法を理解し、運用の精度を高めることも欠かせません。詳しい手順については、「【RPA内製化】シナリオ作成の手順や動作テストの方法を解説」で紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

また、RPAの内製化だけでは解決できない業務もあり、一部の業務は外部委託を活用することで、よりスムーズな運用が可能になります。スターティアレイズでは、RPAやiPaaSによる自動化サービスの提供だけでなく、企業の人材不足・リソース不足に対応した外部委託サービスも展開しており、お客様の課題に合わせた最適なソリューションをご提供します。

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