RPAの3つのクラスとは?
RPA(Robotic Process Automation)は、企業の業務プロセスを自動化するための強力なツールです。RPAは、総務省によりクラス1からクラス3までの3つのクラスに定義されていて、クラス1は「RPA」、クラス2は「EPA」クラス3は「CA」を表します。各クラスは異なる自動化レベルをあらわしており、クラスがあがるごとに高度な自動化が可能です。
RPAのクラス分類は、基本的な定型業務の自動化から、AIを活用した高度な認知自動化まで、幅広い範囲をカバーしています。これにより、企業は自社の業務自動化に最適なRPAソリューションを導入することが可能です。
以下に、総務省が提示しているRPAのクラスを示します。
クラス | 主な業務範囲 | 具体的な作業範囲や利用技術 |
---|---|---|
クラス1: RPA | 定型業務の自動化 | ・情報取得や入力作業、検証作業などの定型的な作業 |
クラス2: EPA | 一部非定型業務の自動化 | ・RPAとAIの技術を用いて非定型作業を自動化 ・自然言語解析、画像解析、音声解析、機械学習の技術の搭載 ・非構造化データの読み取りや、知識ベースの活用も可能 |
クラス3: CA | 高度な自律化 | ・プロセスの分析や改善、意思決定までを自動化 ・ディープラーニングや自然言語処理 |
それでは次章から、クラス1~クラス3までのそれぞれの特徴や自動化の対象業務などわかりやすく解説していきます。
クラス1: RPA(Robotic Process Automation)=定型業務の自動化
クラス1 :RPAとは
クラス1のRPA(読み方:アール・ピー・エー)とは「Robotic Process Automation」の略語で、主に定型業務の自動化を目的とした技術です。繰り返し行われるルーティンワークや、決まった手順に沿って処理できる業務の自動化が可能です。
AIは搭載されておらず、決まった作業を決まった手順で行うものが、クラス1に該当します。曖昧なものの判断や意思決定が必要な場合は、人が対処する必要があり、世の中で言われているRPAツールはクラス1にあたります。
RPAは、ソフトウェアロボットを利用して、人間が手作業で行う単純なタスクを自動化します。これにより、業務の効率化、エラーの削減、コストの削減が実現されます。
RPAの主な対象業務
クラス1のRPAは、単純で繰り返し行われる定型業務の自動化に特化しています。例えば下記のような業務を自動化することができます。
データ入力・転記
- 顧客情報の入力
- フォームへのデータ入力
- Excelからシステム、システムからシステムなど、システム間のデータ転記
定型レポートの作成
- 日次、週次、月次のレポート作成
- 売上レポートの自動生成
- KPIレポートの作成
メール送信
- 定期的な通知メールの送信
- 顧客へのフォローアップメール
- 自動返信メールの設定
ファイル操作
- ファイルの移動、コピー、削除
- バックアップ作業
- フォルダの整理
データ検証
- データの整合性チェック
- 入力ミスの検出と修正
- 重複データの削除
クラス2: EPA(Enhanced Process Automation):一部非定型業務の自動化
クラス2: EPAとは
クラス2のEPA(読み方:イー・ピー・エー)とは、「Enhanced Process Automation」の略語で、RPAの機能を拡張し、より複雑な業務プロセスを自動化する技術です。EPAは、RPAとAI(人工知能)技術を組み合わせることで、定型業務だけでなく、一部の非定型業務や例外対応の業務も自動化することが可能になります。
EPAは自然言語解析や画像解析、音声解析、機械学習などの技術を活用し、非構造化データの読み取りや知識ベースの活用も可能です。クラス1のRPAと違い、AIを搭載しているため、指示を踏まえて自ら考えて行動します。
これにより、EPAはクラス1よりも高度な業務自動化を実現することができます。
現在、主に先進企業や大手企業が導入し、運用し始めています。
EPAの主な対象業務
クラス2のEPAは、以下のような定型業務と一部非定型業務の自動化に適しています。
請求書処理と支払い管理
- 請求書の自動チェックと承認
- 支払いスケジュールの管理
- 経費精算の自動化
在庫管理と発注処理
- 在庫レベルのモニタリング
- 自動発注プロセスの実行
- サプライチェーンの最適化
顧客サポート
- 自然言語処理を用いたチャットボットの運用
- 顧客からの問い合わせ対応
- FAQの自動応答
データ解析とレポート作成
- マーケティングデータの分析
- 売上予測レポートの作成
- パフォーマンス指標のモニタリング
クラス3:CA(Cognitive Automation):高度な自律化
クラス3 :CAとは
クラス3のCA(読み方:シー・エー)とは「Cognitive Automation」の略語で、AI(人工知能)や機械学習を活用して、高度な判断や予測分析が必要な業務を自動化する技術です。CAはEPAよりも高度なクラス3にあたり、RPAの最終段階です。CAは単なる定型業務の自動化にとどまらず、業務プロセスの問題を見つけて自ら改善することもでき、複雑な業務プロセス全体を自律的に管理・実行する能力を持っています。
簡単に言うと、RPAやEPAは最終的な意思決定は人に委ねられていますが、CAは意思決定までAIができる段階のことを指します。
自然言語処理(NLP)や画像認識、音声認識などの高度な技術が組み込まれており、データの分析や意思決定支援が可能なだけでなく、自ら成長していくのが特徴です。
CAの主な対象業務
CAは、高度で複雑な業務の自動化に適しています。以下にCAの自動化業務例を挙げます。
顧客サポートチャットボット
- ヘルプデスクで、自然言語処理(NLP)を使用して、既存顧客からの問い合わせに自動で対応
- FAQの自動応答や複雑な質問への回答
帳票や書類の自動分類とデータ抽出
- 画像認識やOCR技術を使用して、契約書や請求書などの文書から重要な情報を自動で抽出
- 自動分類やデータベースへの登録
不正検出とリスク管理
- 機械学習を活用して、金融取引やその他の業務活動における異常パターンを検出
- リスク分析と予防措置の自動化
意思決定支援
- 大量のデータを分析し、将来のトレンドやビジネスチャンスを予測
- 天候に左右される商品の売上予測
- データに基づく戦略的意思決定の自動化
予測保全
- センサーからのデータを解析し、機械や設備の故障予測と保全計画を自動化
RPAのクラスごとの違い
RPA、EPA、CAはそれぞれ異なる自動化レベルを提供し、企業のニーズに応じた最適なソリューションを選択するための指針となります。
今までの説明も踏まえて分かりやすく表に記載します。
RPA | EPA | CA | |
---|---|---|---|
目的・用途 | 定型業務の自動化 | RPAの機能を拡張し、一部の非定型業務を自動化 | AIを活用し、高度な判断や予測分析を自動化 |
特長 | ・低コストで迅速な導入 ・単純作業の自動化 ・予め決められたこと以外の業務は不可 |
・高度なデータ連携 AI技術を用いて一部非定型業務を自動化 |
・AI・機械学習を活用した高度な自動化 |
対象範囲 | ・複数システム間のデータ同期 ・データ入力・転記 ・メール送信 ・ファイル操作 ・検証作業 など |
・複数システム間での複雑な業務プロセスを自動化 ・非構造化データを読み取る ・非定型業務の一部自動化 |
・高度な判断や予測を含む自動化 ・複雑な業務プロセスの自動化 ・高度な分析 |
RPAは基本的な定型業務の自動化に特化し、迅速かつ低コストで導入可能です。EPAはRPAの機能を拡張し、複数システム間でのデータ連携と、ルールベースの判断による非定型業務の一部自動化を実現します。CAは最も高度な自動化レベルで、AIや機械学習を活用し、複雑な判断や予測分析を行います。
今後の展望
RPA技術は今後さらに進化し、AIや機械学習の進歩により、精度の高いデータ解析や意思決定支援ができるようになると考えられます。
RPA技術の進化は、新しい業務自動化の可能性を広げ、例えば複雑なサプライチェーンの管理や、顧客サービスのパーソナライズ化など、多岐にわたる分野での応用が期待できます。
さらに、AIとRPAの融合により、より高度で複雑なタスクの自動化が実現できるでしょう。これにより、企業は業務プロセス全体を最適化し、生産性向上と競争力の強化を図ることができます。
最初に選ぶべきはクラス1のRPA
クラス1:RPAのメリット
クラス1のRPA(Robotic Process Automation)は、定型業務の自動化に特化しており、企業に多くのメリットをもたらします。以下に、クラス1 RPAの主なメリットを3つ挙げて解説します。
1. コスト削減と迅速な導入
クラス1のRPAは、比較的低コストで導入できるため、特に中小企業にとって魅力的な選択肢です。初期投資が少なく、導入プロセスも迅速で、短期間で運用を開始することが可能です。これにより、導入後すぐに業務効率化の効果を実感でき、ROI(投資対効果)を高めることができます。
2. 業務効率の向上
定型業務を自動化することで、繰り返し行われる手作業を削減し、業務効率を大幅に向上させることができます。データ入力、定型レポートの作成、メール送信、ファイル操作など、時間と労力を要するタスクを自動化することで、従業員はより付加価値の高い業務に集中することができます。これにより、全体の生産性が向上し、ビジネスのスピードが加速します。
3. 人的ミスの削減と品質向上
人間が行う手作業にはミスがつきものですが、RPAを導入することでエラーを大幅に削減できます。ソフトウェアロボットは一貫して正確に作業を行うため、データの正確性が向上し、品質の高い業務プロセスを維持できます。これにより、顧客満足度の向上や、業務プロセスの信頼性が高まります。
クラス1のRPAを導入することで、コスト削減、業務効率の向上、ヒューマンエラーの削減といった多くのメリットを享受することができます。これらのメリットを最大限に活用し、企業の競争力を強化するためにも、まずはクラス1のRPAから導入を検討することをおすすめします。
クラス1のRPAから始める理由
まずクラス1のRPAから始めた方が良い理由としては、導入のハードルが低く、効果を迅速に実感できる点にあります。クラス1のRPAは、比較的単純な業務の自動化に特化しているため、導入初期のコストやリスクを最小限に抑えつつ、自動化のメリットを享受することができます。
また、クラス1で自動化の基盤を築いた後に、業務の複雑化や非定型業務の自動化が必要となった場合も、クラス2のEPAへも移行がスムーズになります。この段階的な導入により、企業は自動化の恩恵を最大限に活用しつつ、リスクを管理することができます。
特に中小企業ではEPAよりRPAを先に導入し、費用対効果や業務効率化の効果測定を行うことをお勧めします。
RPAの事例
クラス1のRPAを活用されている企業様の事例を一部ご紹介します。
製造・卸売業
製造・卸売業では、各取引先企業のWeb-EDIから注文書の受注情報を自社システムに入力する作業や、Web-EDIに保存されている図面データを特定のフォルダに保存する作業でRPAが活用されています。また、ECサイトでの在庫管理、生産管理システムへの入力、注文書の作成、販売管理システム上での商品品番の変更、売上管理ファイルの作成、生産計画用データや電子日報、不良情報のダウンロード、売上伝票の入力、Googleアナリティクスのデータ抽出、電子帳簿保存法対応業務など、幅広い業務で自動化が実現されています。
小売業
小売業では、ECサイトでのRPA活用が多く見られます。具体的には、ECサイトの商品登録作業、価格変更作業、配送フェーズ(ステータス)変更、請求作業、在庫管理システムの在庫連携など、ECサイトやECモールに関連する業務を自動化できます。また、売上データのダウンロード、適正在庫リストの作成、発注書のチェック、ERPとWMSのシステム間連携などもRPAによって自動化されています。
不動産
不動産業では、賃貸、売買、管理を問わず業務効率化が実現されています。具体的には、物件情報の登録や更新作業の自動化、物件情報の取得、問い合わせ台帳への登録、物件ごとの入出金データのダウンロードと印刷、駐車・駐輪場の申し込み・解約の入力、銀行口座振替依頼書情報の入力作業など、幅広い業務でRPAが活用されています。
医療・福祉
医療・福祉業界では、経理や医事課をはじめさまざまな部門でRPAが利用されています。たとえば、患者の検査データを電子カルテへ登録する作業、電子カルテの作成作業、患者の請求先情報の入力作業、入金・未入金の突合作業、処方情報を分析するためのデータ集計、健康診断の予約管理、在庫管理など、多岐にわたる業務を自動化できます。
このように、クラス1のRPAであっても、業種や業界に関わらず業務効率化による成果を十分に得ることができます。
まとめ:RPAの3つのクラスとは
RPAの3つのクラス、すなわちクラス1の基本的なRPA、クラス2のEPA、クラス3のCAは、それぞれ異なるレベルの業務自動化を提供します。
クラス1のRPAは定型業務の自動化に特化し、迅速かつ低コストで導入可能です。
クラス2のEPAは、AI技術を活用して、複数システム間でのデータ連携や一部の非定型業務を自動化します。
クラス3のCAは、AIや機械学習を駆使して、高度な判断や予測分析を行い、複雑な業務プロセス全体を自律的に管理・実行します。
自社の業務プロセスに最適なRPAクラスを選定し、効果的に導入することで、業務効率化と生産性向上を実現しましょう。まずはクラス1のRPAから始め、段階的に高度な自動化へと進むことで、リスクを抑えつつ自動化のメリットを最大限に引き出すことができます。
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