RPAにおけるノードロックライセンスの定義と仕組み

本章ではRPAのノードロックライセンスの意味や仕組みを分かりやすく解説いたします。

ノードロックライセンス(node-locked licensing)とは

ノードロックライセンスとは特定の1台のPCにライセンスを固定してソフトウェアを使用すること

ノードロックライセンス(node-locked licensing)とは、特定のPC端末に固定して使うライセンスの形態です。スタンダードライセンスや、スタンドアロンライセンスと呼ばれることもあります。

「ノード(node)」はコンピューターや端末を意味し、その『ノード』にライセンスを『ロック(lock)』するという意味合いから、この名前がついています。
たとえば、Aさんのパソコンにノードロックライセンスを設定すると、そのライセンスはAさんのパソコンでしか利用できず、他の人のパソコンに移して使うことはできません。つまり、1台の端末につき1ライセンスという考え方です。そのため、PCごとにライセンスを購入する必要があります。

ノードロックライセンスはRPAを日常的に使用する担当者が決まっている場合や、セキュリティ管理が厳しい環境などでよく使われます。

【仕組み】どのようにPCと紐づけられるのか

ノードロックライセンスは、ソフトウェアをインストールした際に、下記のような情報をもとにそのPC専用のライセンスとして登録されます。

  • OSのインストールID
  • MACアドレス(ネットワーク機器の識別情報)
  • CPUやマザーボードのシリアル番号 など

この情報によって、「このライセンスはこのPC専用のものです」とRPAツール側が認識します。そのため、PCのハードウェアを大きく変更したり、別のPCにRPAを移したい場合は、ライセンスの再発行や移行手続きが必要になることがあります。
ツールによっては制限回数があったり、追加費用が発生したりするケースもあるため、導入前に仕様をよく確認しておくことが大切です。

ノードロックライセンスのメリット・デメリット

ノードロックライセンスは、導入コストを抑えやすく、管理がシンプルといったメリットがあり、専任の担当者が決まっているケースや、少人数・限定的な運用に適しています。
一方で、複数のPCや担当者での利用が難しい、端末変更時に手続きが必要といった制約もあります。導入前には自社の運用体制や利用目的に合わせて、特長と注意点を十分に理解しておくことが大切です。

ノードロックライセンスのメリット3つ

ノードロックライセンスのメリット3つ

導入コストが低い

ノードロックライセンスは特定の1台のPCに固定して使用するため、ライセンス費用が比較的低めに設定されていることが多いです。
また、複数人や複数端末での同時利用を想定しない分、初期投資が抑えやすく、少人数や限定的なRPA活用を考えている企業には導入しやすい形式です。

多くのRPAベンダーでもノードロックライセンスを比較的リーズナブルな価格設定にしているケースが多く、専任のRPA担当者が固定されている企業や、1人で自動化作業を進める企業に適しています。

管理の手軽さ

ノードロックライセンスは、どのPCにライセンスが割り当てられているかが明確なため、ライセンスの管理が非常に簡単です。

ライセンスの利用者や使用PCの把握が容易で、運用開始後もライセス状況の確認や管理が煩雑になりにくいという特長があります。システム担当者や情報システム部門の管理負担が少なく済むため、導入から運用までスムーズに進めやすい点も利点です。

特にRPAの運用体制がコンパクトな場合や、ライセンス管理の手間を軽減したい企業にとっては、扱いやすいライセンス形式です。

担当者固定での運用に最適

ノードロックライセンスは、RPAツールを使用する担当者が固定されている運用に非常に適しています。
たとえば、特定の部署の自動化業務を1人のRPA担当者が専任で行う場合は、担当者のPCだけにライセンスを設定することで、不要なライセンス流用や誤使用を防ぐことができます。外部のPCや他部署からの不正利用のリスクも低く、セキュリティ面でも安心して運用できます。

また、業務手順や管理責任が担当者に集約されるため、RPAの運用ルールや作業フローの統一もしやすくなります。「特定の担当者のPCだけがRPAを使い続けることが確定している」という場合は、ノードロックライセンスを選択肢に入れると良いでしょう。

ノードロックライセンスのデメリット

ノードロックライセンスのデメリット

複数PC・複数担当者での共有不可

ノードロックライセンスは特定のPCに固定して使用するため、運用方法によっては制約が生じることがあります。
たとえば、複数のPCや異なる担当者がRPAツールを使い回すような運用には適していません。また、運用開始後に担当者や利用端末を頻繁に変更したい場合には向かないため、事前にRPAを利用する担当者やPCを明確に決めておくことが必要です。

さらに、ライセンスが1台のPCに限定されることにより、RPAの運用が特定の担当者に依存しやすくなる(=属人化する)リスクもあります。
担当者の退職や異動の際に、業務の引き継ぎやライセンス移行の手間が発生する可能性があるため、注意が必要です。

そのため、拠点や部署をまたいで複数人で利用する予定がある場合や、リモート作業や端末変更の頻度が高い場合には、フローティングライセンスなどのより柔軟なライセンス形態を検討することも選択肢のひとつです。

端末変更時の手間

ノードロックライセンスでは、ライセンスが特定のPCにひもづいているため、PCの故障や入れ替え、担当者変更などによる端末の変更が発生した場合には、ライセンスの移行手続きが必要となります。
移行の際には、RPAツール提供会社への申請や手続きが必要になるケースも多く、事前の準備や調整が発生します。

また、移行の回数に制限が設けられている場合や、追加費用が発生する可能性もあるため、ライセンス契約時には移行ポリシーや手続き条件を事前に確認しておくことが重要です。

RPAのライセンスの種類と特徴

RPAの主なライセンスの種類

RPAツールを導入する際には、「どのライセンス形態を選ぶか」が運用コストや使い勝手に大きく影響します。RPAには主に「ノードロックライセンス」「フローティングライセンス」「クラウドライセンス」3種類のライセンス形式があります。本章ではそれぞれのライセンス形式について、わかりやすく説明します。

ノードロックライセンス

ノードロックライセンス

ノードロックライセンスとは、前述でもお伝えしたように特定のPCにひもづいて固定されるライセンスです。
たとえば、あるRPAツールをAさんのPCにインストールして「ノードロックライセンス」を適用すると、そのライセンスはAさんのPCでしか使えません。別の端末で使おうとしても、そのライセンスは利用することができない仕組みになっています。

特徴

  • ライセンスは特定のPC専用(移動不可)
  • 利用者が固定される(RPA担当者が明確な場合に最適)
  • 比較的コストが抑えられる傾向がある
  • PCを交換したりPCが故障した際はライセンスの再発行が必要になる

ノードロックライセンスは、1人で継続的にRPA業務を行う環境に向いています。

フローティングライセンス

フローティングライセンス

フローティングライセンスとは、1つのライセンスを複数のPCで共有できるライセンス形態です。
フローティングライセンスは、ソフトウェアの同時使用が可能なユーザー数がライセンス数によって定められていますが、特定の端末に固定されることなく、任意のユーザーが自由に利用できるという特性を持っています。

1つのライセンスを複数のPCにインストールできるため、離れた拠点や部署間でも柔軟に利用でき、コスト削減にもつながります。チーム内でも複数人が共有して使えるため、さまざまな業務の効率化が期待できます。

たとえば「3本のフローティングライセンス」があり、1ライセンスで5台までインストール可能な場合、合計15台のPCにインストールしておくことができます。
しかし、同時にRPAロボットを動かせるのは最大3台までです。
他のPCでロボットを動かすには、いずれかのPC上で実行中のRPAロボットの処理が終了するのを待つ必要があります。

特徴

  • 複数人・複数PCで共有可能
  • 同時利用数のみ制限される(=ライセンス本数分)
  • RPA担当者が複数人いるチームに最適
  • 初期コストは高めだが、使い回しによる効率性が高い

社内に複数のRPAユーザーがいる場合や、導入初期でまだ使用者が流動的なケースに向いています。

クラウド(サブスクリプション)ライセンス

クラウド(サブスクリプション)ライセンス

クラウドライセンスは、インターネット経由でRPAソフトウェアを利用するクラウド型のライセンス形態です。
ソフトウェアを自社のPCやサーバーにインストールする必要がなく、ブラウザや専用アプリからすぐに利用できるのが特長です。

このライセンス形態は、月額または年額で契約する「サブスクリプション(定額制)」方式で提供されることが一般的です。
契約期間中は常に最新版のソフトウェアや機能が利用でき、メンテナンスやバージョン管理の手間も軽減されます。

MicrosoftのPower Automateや、一部のクラウド型RPAツールではこの形式が主流となっています。
多くの場合、MicrosoftアカウントやGoogleアカウントなどの「ユーザーアカウント」にライセンスが紐づきます。そのため、ライセンスは特定のPCではなく「人(ユーザー)」に対して付与されます。

特徴

  • インターネット環境で利用するクラウド型
  • ユーザーアカウントに紐づくため、PCの制限が少ない
  • 月額・年額での契約(=一括購入不要)
  • 機能アップデートが自動で行われやすい
  • オフライン利用には不向きな場合も

特に、SaaSやクラウドサービスを中心に業務を行っている企業や、アカウント単位で柔軟にRPAを利用したい企業に適しています。

フローティングライセンスとノードロックライセンス、クラウドライセンスの違いを比較

本章ではフローティングライセンスとノードロックライセンス、クラウドライセンスそれぞれの違いについて詳しく解説いたします。

特徴 ノードロック フローティング クラウド
ライセンスの
紐づき方
1台のPCに
完全に固定
複数のPCで
利用可能
(同時利用数のみ制限)
アカウント単位
(PCは自由)
複数人で使える? ×
同時使用はライセンス数による

契約条件による
コスト 安い〜中程度 中程度 中程度
ライセンス管理
の負担
少ない やや発生
(使用PCの管理等)
少ない
(クラウド管理)
端末変更時の
柔軟性
×
手続き必要

条件により可能

原則不要

ノードロックは1台のPC専用でコストを抑えやすく、フローティングは複数人での利用や部署単位の運用に適しています。クラウドライセンスはSaaSやクラウドサービス中心の業務に柔軟に対応でき、月額課金で手軽に始められる点が特徴です。

ライセンスの共有性と柔軟性の違い

RPAライセンスは、どのように誰がツールを使えるかに違いがあります。
ノードロックライセンスは1台のPCにライセンスが固定されるため、決められたPCと担当者でのみ使用する形になります。
フローティングライセンスは複数のPCやユーザーで共有でき、ライセンスの本数分だけ同時に使用可能です。
クラウドライセンスはユーザーアカウント単位で付与されるため、PCの制約がなくインターネット環境があればどこでも利用できる点が特長です。

自社の業務や利用シーンに合わせて、どのライセンス形式が最も柔軟かを考えることが重要です。

同時接続数の管理と運用方法

ノードロックライセンスは、特定の1台のPCにのみライセンスが固定されているため、そのPC以外では使用できません。このため、常に1台のみの利用となります。

フローティングライセンスは、一般的には契約したライセンス数分まで同時に利用できる形態が基本です。たとえば5ライセンスであれば、5台のPCや5人のユーザーが同時にRPAツールを起動・利用できます。

その中でも製品やベンダーによっては仕様が異なる場合もあります。
たとえば、あらかじめ複数台(例えば1ライセンスで5台まで)にRPAツールのインストールを許可し、どのPCからでも作業できる状態にしておきながら、実際に同時に実行できるのは1台のみという形式を採用しているケースもあります。
この場合、ライセンス数の増加により同時実行台数も増やすことができます。

クラウドライセンスは、ユーザーアカウント単位でライセンスが付与されるため、
基本的に同時接続の管理は不要ですが、契約内容によっては制限が設けられる場合もあります。

ライセンス選定にあたっては、自社の運用スタイルや製品ごとのライセンス仕様をよく確認したうえで検討することが重要です。

自社に合った選び方のポイント

RPAライセンスの選択は、自社の業務体制や利用目的に応じて最適なものを選ぶことが重要です。
ノードロックライセンスは、1人の担当者が決まったPCで運用するケースに適しており、管理がシンプルでコストを抑えやすい点が特長です。
フローティングライセンスは、チーム内での複数人での業務分担や、拠点や部署をまたいでの利用を想定する企業に向いています。
クラウドライセンスは、SaaSやクラウドサービス中心の業務やリモートワークなど、場所やPCに縛られない働き方をしたい企業におすすめです。

いずれのライセンスもメリットと注意点があるため、導入前に運用体制や今後の展開をよく整理したうえで選定することが大切です。

RPAライセンス選定時のチェックポイント

RPAライセンスの選択は、自社の業務規模や運用スタイルに合ったものを選ぶことがポイントです。ライセンスの種類によって、使い方・コスト・管理の負担・将来の拡張性が大きく変わるため、以下のポイントを参考に検討することが重要です。

使用人数・頻度・拠点数に応じた選定

まずは、RPAを使用する人数や利用頻度、拠点数を把握することが大切です。
1人の担当者だけが使用するのか、複数人で交代しながら使用するのか、または本社と支店など複数拠点で利用するのかによって、適したライセンス形態は異なります。
たとえば、担当者が固定されている場合はノードロックライセンス、複数拠点やチームでの利用が多い場合はフローティングライセンスが選択肢になるケースがあります。
自社の運用スタイルに合った選定が、無駄のないライセンス運用につながります。

ライセンス移行の可否と契約条件

RPAを導入した後も、PCの入れ替えや担当者の変更などが発生することがあります。
その際に重要になるのがライセンスの移行可否や手続き条件です。ノードロックライセンスでは端末変更の際に申請や手続きが必要になる場合が多く、ライセンスの移行回数に制限がある製品もあります。

契約前に、製品ごとにライセンスの移行ポリシーやルールをしっかり確認しておき、運用トラブルや追加費用の発生を抑えるようにしましょう。

費用対効果と拡張性

RPAライセンスは、単なる導入コストだけではなく、運用中のコストや利便性も含めて総合的に判断することが大切です。自社の業務規模やRPAの利用予定に対して、ライセンス費用に見合う効果が得られるかをよく検討しましょう。

また、将来的に利用人数や拠点が増えた場合でも柔軟にライセンス追加や切り替えができるかも重要な視点です。契約期間や更新条件、ライセンス形態の変更が可能かなども含めて事前に確認しておくことで、長期的に安心してRPAを活用することができます。

まとめ:ノードロックライセンスを正しく理解してRPA導入をスムーズに

RPAツールを効果的に活用するためには、ライセンスの特長や違いを正しく理解し、自社の業務や体制に合ったものを選ぶことが大切です。
ノードロックライセンスは、特定のPCに固定して利用するため管理がシンプルであり、
専任のRPA担当者による運用や少人数・単一拠点での利用に特に適しています。導入コストを抑えやすく、情報システム部門の負担が軽いこともメリットです。

ですが、複数のPCや担当者間での共有利用や、端末変更の頻度が高い場合には注意が必要です。その場合は、フローティングライセンスなど他の選択肢を含めて比較検討することが有効です。

また、ライセンス選びは単なるコストだけでなく、導入後の運用・サポート・将来の拡張性も考慮して総合的に判断することが重要です。製品やベンダーによっては、ライセンス移行の条件や台数制限、契約期間などに差があるため、事前にしっかりと情報収集と比較検討を行うことをおすすめします。

最後に、RPA導入の成功にはライセンス選定だけでなく、運用ルールの整備や社内の活用体制づくりも非常に重要です。
自社に最適なライセンス形態を選び、業務効率化・生産性向上の実現につなげましょう。