テレワークで注目が集まる「RPA」
まずはRPAとは何か、どのようなことができるのかを解説します。
RPAとは?
RPAとは「Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の略で、「ロボットによるプロセスの自動化」を意味します。パソコン上で人間が行う定型業務をロボットが代わりに作業することによって業務の自動化が可能です。
これまで人間が手作業で行っていた業務をRPAに任せれば、業務担当者は空いた時間をコア業務に注力できるようになります。このようにRPAを活用して業務効率を高めることで、残業時間や人件費の削減が見込めるでしょう。
業務の自動化は「シナリオ」という業務の手順書を作成して行います。最近では、プログラミングの知識がなくてもシナリオを作成できるRPAツールも増えています。このようなRPAツールを導入すれば、現場主導でRPAの活用が促進されるのでおすすめです。
RPAでできること
RPAが得意とする業務には以下の3つの特徴があります。
- 手順が決まっている業務
- 単純な定型業務
- 膨大な件数を短時間で処理する業務
一方、人間の判断が必要な業務やイレギュラーな対応が多く発生する業務でRPAを導入すると、逆に業務効率が低下する可能性があるため注意しましょう。
RPAは、作業手順がルール化されたデータ入力や転記作業、作業する頻度が高いルーティンワークに活用すると良いです。複数のアプリケーションを跨いで作業することも可能なため、データの収集・分析・レポート作成や、メールの送受信など幅広い業務で活用できます。
テレワークとは?
テレワークとは、「tele(離れたところ)」と「work(働く)」を組み合わせてできた言葉であり、ICT(情報通信技術)を利用し、場所や時間にとらわれずに働くことを指します。日本では1984年に日本電気株式会社(NEC)が導入したのが最初の事例と言われています。意外にも、昭和の時代から大企業を中心にテレワークを導入しようとした事例があるのです。
総務省の定義によると、テレワークは企業に雇用されている人が行う「雇用型テレワーク」、自営業者などが行う「自営型テレワーク」に二分されます。
雇用型テレワークの種類として、家で勤務することを指す「在宅勤務」、施設に依存しない「モバイルワーク」、サテライトオフィスやスポットオフィスを利用して働く「施設利用型勤務」があります。
一方、自営型テレワークは、在宅で業務を行う個人事業主や小さなオフィスを拠点とする小規模事業者などが想定されています。
テレワークと似た言葉に「リモートワーク」がありますが、こちらオフィスから離れた遠隔地(リモート)で働くことを指します。主にIT・ベンチャー企業で2010年代の後半ごろから受け入れられてきました。
「テレワーク」と「リモートワーク」は似たような概念ですが、使い分ける必要があるのか疑問に思う方も多いでしょう。国や自治体では「テレワーク」を用い、世間一般では「テレワーク」「リモートワーク」の両方が浸透しています。そのため「テレワーク」と「リモートワーク」は基本的には明確な使い分けが必要はないと考えて良いでしょう。「テレワーク」も「リモートワーク」も、時間や場所にとらわれない働き方ということが可能です。
現在、テレワークにおけるRPAの利用は、企業の正社員がRPAを利用して業務を行うというシチュエーションが一般的です。しかし今後RPAの普及が進むと、RPAを用いて業務を請け負う求人が増えたり、RPAスキルを持つ派遣社員の待遇が良くなったりすることも予測されるでしょう。
テレワークでRPAを導入するメリット
それでは、テレワークでRPAを導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、テレワークでRPAを導入するメリットを3つご紹介します。
業務効率化
RPAはテレワークでの業務効率化に役立ちます。
RPAが得意とする業務の中でも、単純な定型業務や膨大な件数を処理する業務は、人間が行うと多くの時間を必要とします。これらの業務にRPAを導入すれば、RPAが数百万件のデータを数秒で読み込み処理することが可能です。
さらに、RPAはロボットであるため、24時間365日稼働することもできます。勤務時間外の深夜にデータを収集してレポートを作成するなどしておけば、翌日の朝にその資料を使って業務を進められるようになるなど、大幅な業務効率化を実現できるでしょう。
デジタル化・業務改善が見込める
RPAを稼働させる際にはロボットにプロセスを覚えさせる必要があります。この際、それまでは印刷した資料や手書きの書類などアナログを用いていた作業をデジタルに置き換えたり、不要なプロセスを削除したりと脱アナログ化や業務改善が推進されるので、より一層の業務効率化が見込めます。
また、手書きの書類のデジタル化には、OCR(Optical Character Recognition/Reader、光学的文字認識)と呼ばれる自動的に文字を読み込む技術にAIを組み合わせた「AI-OCR」などを利用するとさらなる効率化が図れます。AI-OCRの代表的なサービスとして、AI inside社が提供する「DXSuite」が挙げられます。
従業員が遠隔地にいても業務をロボットが代行
RPAは一度業務をロボットに覚えさせれば、従業員がその場にいなくても業務を代行できます。そのため、業務のために出社する必要がなくなります。2020年に新型コロナウイルスの感染者拡大防止のためにテレワークが拡大した際には、「○○の業務ために出社しなければならない」という課題が多く見受けられましたが、RPAはこのような解決にも貢献します。
なぜテレワークでRPAが注目されているのか
テレワークを始める際の課題の一つに、「時間や場所が制限される業務をどう行うか」があります。
例えば、個人情報や機密情報を社内から持ち出すことは難しく、これらを含む業務は出社して行わなければなりません。しかしRPAを利用すれば、これらの情報を社外に持ち出すことなく業務を行えます。
完全にRPAで自動化できない業務でも、一部をRPAで自動化すれば、出社日数を減らしたり、勤務時間を減らしたりして、社員の負担を軽減できるでしょう。
RPA活用方法
それでは、具体的にどのような業務においてRPAを活用できるのかをみていきましょう。
単純作業・定型業務の自動化
プロセスが決まっている定型業務を自動化すると、大幅に時間を削減できるだけでなく正確なアウトプットを得られます。
例えば、コピー&ペーストを繰り返す業務やデータ入力、請求書の発行、発注処理などをRPAで自動化すれば、短時間で作業が完了するだけでなくヒューマンエラーの防止にもつながります。RPAはシナリオで設定された手順通り正確に業務を進めるため、業務担当者は肉体的な負担の軽減だけでなく、「間違えてはいけない」という精神的なストレスからも解放されるでしょう。
データ収集・集計
膨大な数値を扱い、正確性を必要とするデータ集計もRPAが得意な業務の一つです。データ集計だけでなく、集めたデータを加工して報告書を作成する業務などにも利用できます。例えば、複数のWebサイトから企業の住所や事業内容を収集してエクセルにまとめることも可能です。これらの業務を人間が手作業で行う場合、手間と時間がかかりますが、RPAは短時間で正確にこなすため、生産性の向上も期待できます。
勤怠管理
複数の項目を正確に入力し、管理する必要がある勤怠管理にもRPAは力を発揮します。
RPAは業種や業界を問わず幅広く導入できるという特徴がありますが、近年は勤怠管理のような専門的な業務や業界に特化したサービスも提供されています。
例えばユーザックシステム社が提供するRPAは、送り状や伝票業務、FAXの送受信などを専門としています。これにより、勤怠管理だけでなく会計処理など幅広い業務の自動化も可能です。
メールの作成・送信
RPAはメールの作成と送信も自動化することができます。
例えば、請求書をメールで送付する際は、同じ本文のメールを各取引先にそれぞれのファイルを添付して送信しますが、このような人の判断を必要としないメールの送信作業はRPAで自動化できます。
またSFA(営業支援システム)やBI(ビジネスインテリジェンス)システムと連携すれば、日報の送付の自動化も可能です。その他にも、受信したメールの内容を社内のシステムに自動で入力したり、受信メールの添付ファイルを自動で指定した場所に保存したりすることもできます。納期などを事前に知らせるリマインドメールを自動で送信できるようにすれば、業務担当者の精神的な負担の軽減にもつながるでしょう。
在庫管理
RPAは在庫管理にも活用できます。
例えば、在庫管理システムと連携して在庫数や出荷予定日などの情報をメールで連絡するように設定することが可能です。これによりテレワークをしていても在庫状況を把握できるようになるので、欠品や余剰在庫を抱えるリスクも回避できるでしょう。
テレワークでのRPA導入はセキュリティに注意しましょう
テレワークでRPAを活用する際に重要なのがセキュリティ対策です。
インターネット環境がオフィス勤務とは異なるテレワークでは、外部からの不正アクセスのリスクが高くなります。また、クラウド型のRPAを利用する場合、情報漏洩のリスクも絶対に無いとは言えません。これらのリスクを最小限に抑えるためには、2段階認証機能があるRPAを選ぶなど、セキュリティ対策をきちんと行いましょう。
情報セキュリティポリシーを策定することも有効です。そして、定期的に社員教育を行うことで、従業員一人一人のセキュリティ対策に対する意識を高めることができます。
まとめ
新型コロナウイルスの感染拡大によりテレワークを実施する企業が増え、RPAに注目が集まってきました。
RPAは単に業務の効率化が見込めるだけでなく、導入する過程で業務のデジタル化や改善を進めることもできます。さらに、RPAで業務を自動化すれば、ロボットを遠隔操作することで従業員が出社しなくても業務を進められるようになるのが魅力です。
RPAが得意とする業務は、手順が決まっている単純な定型業務や膨大な情報を処理する業務ですが、単純作業や定型業務の自動化だけでなく、データ収集や集計、勤怠管理、メールの作成・送信、在庫管理など、幅広い業務で活用できます。
しかし、インターネット環境がオフィスとは異なるテレワークでRPAを導入する際には、2段階認証機能があるツールを選んだり、情報セキュリティポリシーを作成したりして社員を定期的に教育するなどの、セキュリティ対策を十分に行うことも重要です。
RPAの特徴を理解して導入することで、職場の業務効率化と円滑なテレワークの推進を実現してみてくださいね。