業務自動化ツールのRPAとは
まず、そもそもRPAとは何なのか?なぜ注目されているのかを解説します。
RPAとは
Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略で、PC業務を自動化するツールです。
主にバックオフィス業務に向いていて、単純作業や定型作業の業務自動化を得意としています。
海外では2015年ごろから、特に欧米の金融機関での利用で注目されていましたが、日本では2016年~2017年ごろ注目されました。現在では認知度も高まり、すでに導入している企業や導入を検討している企業が増加してきました。
大企業では導入率が高くRPAが活用されていますが、中小企業ではまだまだ導入されていないというのが現状です。
RPAが注目されている理由
では、なぜ最近になってRPAが注目されているのでしょうか。
それは少子高齢化が大きく関係しています。
少子高齢化により働き手である15歳~65歳未満の年齢に該当する人口が大幅に減少しています。
そのため、企業が積極的に採用活動を実施しようとしても、採用対象者となる働き手がいないため採用以外の方法で人手不足を解消していく必要があります。
そこで、人間の代わりにPC作業を実行できるRPAが注目されています。RPAは今まで人間が行っていた作業を教えた通りにミスなくに行うことができるため、人間がわざわざ行わなくてもよい単純作業や定型業務をRPAに任せ、業務時間の削減につなげることで人手不足の解消を実現できます。
自動化ツールといえばマクロを思い浮かべる方も多いと思いますが、RPAと異なるところは、RPAはPCで行う業務全般を自動化できるのに対し、マクロに関してはエクセル上に限られた作業を自動化できます。
RPAはアプリケーションを問わずログインしたり作業を実行できるため、万能な自動化ツールとして活用されています。
RPAにできること
RPAとはどんなものなのか、なぜ必要とされているのか前途しましたが、ここではRPAにできることを作業単位で解説します。
転記作業
RPAで良く自動化される業務の一つが転記作業です。
転記作業というのは、あるファイルに記載している情報を別のファイル、または、システムに書き移すことを言います。
例えば、多数のお客様にDM(ダイレクトメッセージ)はがきを郵送する際、宛名印刷が可能なソフトウェアやWEBシステムを利用する場合が多いと思います。
WEBシステムを利用する際は、エクセルにまとめた顧客情報を宛名印刷システムに1件ずつ転記・保存し印刷する流れとなりますが、数件であれば手作業で問題ありません。しかし、企業からの発送となると数十~数千件の宛先になることが多いです。全て手作業で行うとなると膨大な量の転記作業になり、相当時間がかかってしまう上に、人間は疲れてくると1行ずれて作業してしまうなどミスが生じたり、スピードダウンにつながります。また、お客様に向けた郵送物なので、ミスは許されないため、従業員へのストレスもかかってしまいます。
RPAはミスなく正確に作業をしてくれますし、一定の速度で動くため、人間より早く作業をしてくれます。膨大なデータの転記作業はRPAに任せて、クリエイティブな業務にリソースを割きましょう。
情報収集する
RPAはWEBにアクセスすることも可能なので、WEB情報を収集することも可能です。
例えば、自社商品について記載されたクチコミを記録する作業は、商品名や会社名などの指定のキーワードを検索させ、今日投稿されたクチコミのみを取得できます。取得した情報はエクセルやスプレッドシートに転記するなども可能です。
情報収集したあと、トラブルが発生しそうなクチコミがあった際は対応したり、分析を行うなど考える必要がある作業から人間に切り替わって業務を遂行するなど役割分担ができるようになります。
システムから複数データをインポートする
例えば、店舗を複数抱えている企業において、WEBシステムにて各店舗の売上を管理している場合、1店舗ごとの売上データをインポートする作業が毎日発生します。
データのインポート作業では、ファイル名を変更してインポート作業を行った日の日付を記載するなど、簡単な単純作業が発生します。人の手で行う際は、読み込みが完了するまでの待機時間があったり、ひたすら同じ作業を繰り返すといった単純作業はRPAで代行可能です。
人間は集中力が切れると、重複してインポートしてしまったり、漏れがあったりするため、正しく作業が完了したか無駄な確認作業が発生します。RPAに任せれば間違いは起きないため、確認作業はもちろん、インポート作業がまるまる手離れできます。
データを加工する
データの加工とは、エクセル内のデータに数式を入れたり、あとで見やすいように列を並び替えたりと加工することです。
例えば売上を数時間ごと、毎朝、毎週と報告しなければならない場合、同じ集計方法で同じ報告形式であれば、手順をロボに覚えさせ、代わりに実行してもらうことが可能です。データの加工自体は簡単でも、関数を入力して、列を挿入してコピー&ペーストをして…など細かい単純作業が多く、1回の作業に30分~1時間かかってしまうことも少なくありません。
その時間がまるごと空いたら他の業務にも取り掛かることができ、より生産性向上につながります。
RPAの強み
RPAは業務を自動化し、効率化につながる便利なツールですが、実際にどのようなメリットがあるのでしょうか?人間との違いについて説明します。
24時間・365日休まず働いてくれる
人間には休暇が必要ですが、ロボットは休暇なしで働き続けることが可能です。
ロボットは疲れ知らずなので、作業スピードが落ちることもなく業務をこなしてくれます。また、夜に作業しなければならない業務があった際は、退勤時にロボを動かすことも可能です。
わざわざ残業で行っていた業務もRPAを活用することで、残業時間削減につながります。
ミスをしない
RPAは覚えたことをそのまま実行します。そのため、操作を迷うことや間違った操作をしてしまうことはありません。
エクセルからシステムへコピー&ペーストを例に挙げると、人間が作業を行った場合、行や列を1行間違ったまま作業を進めてしまっていた…というミスは多くあります。
しかし、RPAではそういったことは起こらないため、安心して単純作業を任せることをできます。
退職リスクがない
新たに従業員を雇い業務を教えたとしても、退職してしまうと次に新しく業務を引き継ぐ人に教える時間がかかってしまったり、慣れるまでに時間がかかってしまい効率が悪くなることも多いです。
しかし、RPAは契約が終了しない限り利用できなくなることはありません。
一度覚えさせた業務も忘れないため、再度教えなくてはならないなどの手間も発生しない強みがあります。
RPAの種類
クラウド型
RPA提供者のベンダーのサーバーを利用してロボを動かすタイプです。
初期費用を抑え低コストで導入できる点が大きなメリットです。しかし、WEBに繋がっている状況で行う操作のみ自動化が可能なので、PCのローカル環境にあるファイルやアプリケーションは自動化ができません。
ロボを動かしている最中はPCで別の操作をすることも可能なので、新たにPCを用意する必要もありません。
デスクトップ型
PCにソフトウェアをインストールして利用します。
録画機能などの簡単な操作で利用できるものが多く、担当者レベルでRPAを活用することができます。
また、比較的安価で導入できるためスモールスタートも可能です。初めてのRPA導入におすすめです。
しかし、ロボを実行している最中に同時にPC操作ができないので、専用のPCを用意する必要があります。
サーバー型
サーバーにRPAを構築して利用します。
サーバーに構築しているため、大量のロボットを一気に稼働することが可能です。サーバー内にデータやシステムなど入れていれば、RPAが複数のシステムを跨いで業務を処理してくれます。
個人情報を扱う処理を自動化する場合は、情報漏えいの心配もなくセキュリティ面で安心できるタイプです。ただ、導入費用が高額なためハードルが高いという懸念点があります。
RPAで実際にどんな業務を自動化できるの?
RPAで単純作業や定型業務を自動化できるといっても、自分の業務の中に該当する業務があるのかすぐに思い浮かばない方が多いと思います。実際の業務での活用例をご紹介いたします。
受注業務
小売業、卸売業、ECサイトを運営している企業などで発生する受注業務のRPA活用事例をご紹介します。
注文を受けた後、受注管理システムに入力して商品の在庫確認をします。その後、在庫があった場合は受注処理システムにてお客様の配達希望日を指定し、発注書・請求書の作成をしメールで送信します。最後に物流センターへ梱包・配送依頼の連絡をして完了。一方で在庫がなかった場合は、商品番号を受注処理システムから抽出し、それを記載したメールを発注担当者に送信する。という一連の流れがあります。
RPAはこれらを全て自動化することができます。
多くの注文がある場合、在庫の確認だけで多くの手間が発生していると思いますが、そういった煩雑な作業をRPAで自動化することで、従業員の負担が減ります。
また、「在庫があった場合」と「在庫がなかった場合」の条件分岐を設定することが可能です。パターン化されている動きの場合、RPAで自動化が可能です。
WEBシステムからデータをダウンロード
例えば、売上や日報、週報など随時WEBシステムにアップロードされていくデータがあるとします。店舗を運営している企業では、各店舗の売上を決済方法別にダウンロードしなければならない業務があります。
10種類の決済方法別に30店舗分のデータをそれぞれダウンロードしていたら、300回ダウンロード作業が発生します。ファイルを読み込む待機時間もあり、1つ1つのファイルに名前をつけなければならない場合は、非常に手間です。
抽出したい日付を指定し、検出されたデータのダウンロードボタンをクリック。その後今日の日付と決済方法の名前を付け指定のフォルダに保存する。という業務は単純作業であり、RPAで自動化が可能です。
何気なく当たり前に人の手で行っている作業も、蓄積されていくと月に10時間かかっていた…なんてこともあります。その10時間が削減できれば残業が減ったり、別の業務に取り掛かれるため、業務効率化に繋がるでしょう。
請求書の処理
バックオフィス業務はRPAと非常に相性がよく、多くの企業で使われています。
請求書の処理では、紙やPDFで送付されることが多くOCRと組み合わせるとより効率化に繋がります。
請求書の受理をし、会社ごと、商材ごとにRPAが仕分けを行いデータをOCRで読み取ります。OCRで読み取ったあとcsvでダウンロードし、会社名や電話番号、住所、金額に誤りがないか従業員が目視チェックします。その後、RPAで会計システムへ情報を転記し、従業員による目視チェック後、銀行支払いシステムへの転記を自動化する流れになります。
これらの作業を従業員のみで行うとすると、作業する人、Wチェックをする人、承認する人、その後の処理を行う人…と3~4人要します。RPAを組み込むことで、作業自体が手離れしたり、Wチェックのみに従業員を必要とするので、他の業務にリソースを充てることができます。
勤怠処理
勤怠処理を行う人事・総務部では、月末月初に業務が集中することが多いため、少しでも業務を減らしたいと思います。
RPAで勤怠処理システムにログインし、従業員の勤怠情報のcsvをダウンロードし、指定フォーマットのエクセルに従業員名や勤怠情報を転記していき、勤務時間や残業時間、休日のカウントなど集計します。その後従業員によるWチェックを行い、承認。その後、RPAにより人事労務システムへの反映を行い完了です。
会社全体の従業員数が多ければ多いほど、業務処理の負担が増えていきます。また、給与に関わる業務なため、ミスができません。RPAに作業してもらうことで、そのプレッシャーから解放されると従業員の負担も軽減されます。
アンケート集計
セミナー時にアンケートをとった際や、社内アンケート、お客様へのアンケートをとることもあると思います。
アンケートの人数が多かったり、質問項目が多い場合は、データ集計が手間です。表を作成したり、集計形式が毎回同じ場合はRPAで自動化し、集計後の分析の時間に注力することができます。
まとめ
今回はRPAで自動化できる業務について詳細な流れなどを含めてご紹介しました。
今までどんな業務が自動化できるか知っていても、いまいちイメージが付かないと思っていた方もいたと思います。RPAは「業務」で考えるのではなく、「操作」で考える必要があり、導入が成功する秘訣になります。
例に挙げた業務だけでなく、RPAはもっと様々な業務を自動化できるため、自社の業務はどうなのか分からないという場合や相談したい場合は、直接ベンダーに問い合わせ聞いてみることをおすすめします。初めての導入ではサポート体制が整っているベンダーを選ぶと良いでしょう。
また、どのRPAを選んでいいのか分からないということもあると思いますが、無料トライアルを用意しているツールもあるため、連携したいと思っているシステムと相性がいいか、RPA担当者が使いこなせるものか確認するために活用していきましょう。