RPAの認識方法とは
RPA(Robotic Process Automation)の認識方法とは、ロボットが画面上の操作対象(ボタンや入力欄など)をどのように特定し、指示された操作を実行するかを決定する仕組みです。
言い換えれば、人間が目で画面を見て手を動かすように、ロボットが画面を「理解」して自動で操作する方法を指します。
例えば、ウェブサイトへのログイン業務を考えた場合、RPAは「ユーザー名」や「パスワード」の入力フィールドを見つけ出し、正確にデータを入力した後、「ログイン」ボタンをクリックする、といった一連の操作を自動で行います。この時、RPAがどのように画面上の要素を認識するかが認識方法のポイントです。
認識方法は主に、「画像認識」、「座標認識」、「オブジェクト認識」の3つがありますが、それぞれ特性が異なり、業務やシステム環境に応じて使い分けることが求められます。
適切な認識方法を選択することで、RPAの正確性と効率性を最大限に引き出し、業務自動化の成功につなげることが可能です。
RPAのオブジェクト認識とは?定義と特徴
本章では、RPAのオブジェクト認識についての基礎知識を解説します。オブジェクト認識とはから仕組みをご紹介します。
オブジェクト認識とは
RPAのオブジェクト認識は、アプリケーションやウェブサイト上に表示されるボタンや入力欄などの要素(オブジェクト)を特定し、それらを操作する技術です。
この認識方法は、画面の裏側で動作するデータやプログラムの構造を直接読み取ることで、操作対象を特定します。たとえば、HTMLやXMLで定義されている「ID」や「クラス名」などの情報を活用し、ボタンや入力欄などを正確に識別します。
たとえば、Webページの「送信」ボタンをクリックする際に、そのボタンがソースコードの中でどのように定義されているかを理解して操作します。
そのため、画面のデザインや位置が変化しても、対象要素の内部情報が保持されていれば問題なく動作する点が大きなメリットと言えます。
動的に変化する画面や最新のクラウドアプリ、モバイル向けのUIなど、柔軟性が求められるシステムにおいても安定した操作が可能です。
さらに、オブジェクト認識は従来の画像や座標を基にした認識方法と比較して、正確性と安定性が高く、複雑な業務やシステムにも適応できます。
ただし、RPAロボットの作成や運用にはプログラミングや専門知識が必要なことが多く、IT知識の高いシステム担当や技術者しか利用ができないというデメリットもあります。
オブジェクト認識の仕組み
UI要素を特定する技術を利用
オブジェクト認識は、画面上の操作対象を「UI(ユーザーインターフェース)要素」として特定する技術を利用しています。システム内で各ボタンや入力欄、チェックボックスなどを識別するために、画面の裏側に設定された情報を活用する仕組みです。
具体的には、以下のような情報を基に操作対象を判別します。
- 要素のIDや名前:システム開発者が各画面要素に割り当てた固有の識別子(例:「loginButton」など)。
- 属性情報:ボタンの種類や入力欄の形式(例:テキスト、チェックボックス)。
- 階層構造:画面全体の中でその要素がどこに位置しているか(親子関係など)。
上記の情報を活用し、RPAは特定の要素に対してクリックやデータ入力などの操作を実行します。
この仕組みは、システム内部の情報を直接読み取るため、より安定して効率的な動作を実現できます。特に、頻繁にUIが変更されるクラウドサービスやレスポンシブデザインの画面においても、操作の正確性が保たれるのが大きな強みです。
RPAのオブジェクト認識とは?定義と特徴
RPAのオブジェクト認識の大きなメリットとして「画面レイアウトの変更に強い」こと、「動的なシステム操作に対応できる」こと、そして「高精度で信頼性の高い自動化が可能」であることが挙げられます。以下にそれぞれのメリットを詳しく解説します。
1.画面レイアウトの変更に強い
オブジェクト認識は、画面デザインやボタンの配置が変更されても、システム内部で定義された要素情報(IDや属性値など)を基に操作対象を特定します。そのため、見た目が変わっても自動化が影響を受けにくいという特長があります。
たとえば、会計ソフトのアップデートでボタンの位置や色が変わっても、内部構造が変わらなければスムーズに動作を続けることが可能です。これにより、業務の安定性が向上し、メンテナンスコストの削減にもつながります。
ただし、オブジェクト認識による情報の取得方法が、上から●行目からのソースを持ってくる、などの仕組みであった場合は認識ができなくなるため、注意が必要です。
2.動的なシステム操作に対応できる
オブジェクト認識は、リアルタイムで変化する要素にも対応できる点が特長です。たとえば、検索結果が都度変化するウェブシステムや、動的に生成されるポップアップ画面に対しても正確に対応可能です。
この柔軟性により、特定の業務要件や動的要素が多いシステムに最適な選択肢となる場合があります。たとえば、ECサイトでの注文データ処理やクラウドサービスを活用したデータ更新業務などで活躍します。他の認識方法と組み合わせることで、業務全体の効率化をさらに向上させることが可能です。
3.高精度で信頼性の高い自動化が可能
オブジェクト認識は、システム内部の構造情報を直接活用するため、誤動作のリスクが低く、精度の高い操作が可能です。
たとえば、システム間のデータ連携や、複雑な入力フォームへのデータ登録など、高度な処理もミスなく実行できるため、業務品質の向上と信頼性の確保に大きく貢献します。
RPAのオブジェクト認識のデメリット
RPAのオブジェクト認識には、導入や運用時に特定の課題が伴います。導入時のプログラミング知識の必要性、コスト面の負担、環境やシステム依存による制約などが主なデメリットです。これらを理解し、事前準備や適切なツール選定を行うことで、デメリットを最小限に抑えつつ活用することが重要です。
1.導入にプログラミング知識が必要
RPAのオブジェクト認識は、画面の裏側にあるシステム要素を直接認識して操作を行う技術です。具体的には、HTMLやJavaScriptに記述された「ID」や「クラス名」、要素の「属性値」を基に操作対象を識別します。そのため、プログラミングやシステム構造に関する一定の知識が必要です。特に、業務フローが複雑であったり、動的な画面構成がある場合には、こうした知識は必須です。
そのため、オブジェクト認識のRPAツールを導入する際は、基本的に情報システム部門(情シス)やIT部門が運用を担当するのが適しています。
一方で、業務担当者やRPA初心者が主体となって運用するケースでは、設定の難易度が高く、実務との両立が難しい可能性があります。そのため、初心者や実務担当者が直接オブジェクト認識を運用するのはハードルが高く、おすすめしません。
もし、情シスやIT部門内でのリソースが不足している場合には、外部の専門家を活用して導入を進める、もしくは該当部門でのスキル向上を図ることも選択肢の一つです。
2.ツール選定や運用にコストがかかる
オブジェクト認識を採用したRPAツールは、技術的に高度であるため、初期費用が高めに設定されていることが多いです。
また、運用中のトラブル対応やツールのアップデートに伴うメンテナンスなどで追加コストが発生する可能性もあります。ツールの選定や導入後の維持管理には時間や費用がかかるため、長期的な視点での費用対効果の評価が不可欠です。
社内リソースのスキルを補完するため、外部サポートを利用するケースも考えられますが、これもコスト計画に含める必要があります。
3.環境やシステムに依存する可能性がある
オブジェクト認識は、アプリケーションやシステム内部の構造を直接利用して操作を実行する仕組みのため、対象のシステムが変更されたりアップデートされたりした場合、認識対象が変わり動作が停止してしまうリスクがあります。
たとえば、クラウドアプリやウェブシステムのバージョンアップによって、要素のIDや構造が変わると、スクリプトの修正が必要になります。また、特定のシステムやプラットフォームに特化した設計を行った場合、そのシステム以外では同じスクリプトを利用できないこともあるため、業務プロセスの柔軟性が制約される場合があります。
環境依存性を最小限に抑えるためには、導入時に運用するシステムの仕様を十分に確認し、将来的なアップデートの可能性も考慮した設計を行うことが求められます。
オブジェクト認識と画像認識・座標認識との違い
RPAのオブジェクト認識や他の認識方法(画像認識・座標認識)にはそれぞれ得意な分野や特徴があります。本章では、それぞれの認識方法の違いを解説します。
仕組みの違い
オブジェクト認識、画像認識、座標認識の仕組みの違いを、図解を基に簡単に解説します。
オブジェクト認識
オブジェクト認識は、システムの裏側にある構造情報(IDや属性値など)を基に操作対象を特定します。そのため、操作対象が画面上で移動したり、見た目が変わったりしても、内部構造が変わらなければ高精度且つ安定して動作します。
画像認識
画像認識は、画面上の要素を「見た目」や「デザイン」で認識します。
画像認識では、あらかじめRPAツールに「クリックしたいボタン」や「実行したい操作対象のアイコン」を画像として記憶させておき、その画像が画面上に表示されたときに自動的に操作を行います。
視覚的な要素に基づくため、設定が直感的で初心者にも扱いやすいというメリットがあります。
座標認識
座標認識は、画面上の特定の位置情報を基準に動作します。
座標認識では、ボタンやテキストフィールドなど画面上の要素の「位置情報」(X座標とY座標)を記録し、その座標に基づいて操作を自動化します。
対応可能な業務の違い
ここでは、オブジェクト認識、画像認識、座標認識の対応可能な業務の違いを、図解を基に簡単に解説します。
オブジェクト認識
オブジェクト認識は、動的に変化する画面や最新のクラウドアプリケーション、複雑なシステムにも適応できます。たとえば、頻繁に更新される最新のクラウドアプリケーションや動的に変化するUI、モバイルアプリケーションの操作に向いています。
画像認識
画像認識は、固定された画面構成や単一のタスクで安定した操作が求められる業務に適しています。特に、レガシーシステムやスクラッチシステム、特定のフォーマットに依存する操作、カスタムデザインの画面操作では効果的です。
座標認識
座標認識は、簡易な定型業務に適しており、特定の画面上での繰り返し操作が固定されている場合に有効です。軽量で導入が簡単なため、小規模な業務や構造が単純な業務の場合に活用されます。
設定や運用の難易度の違い
最後に、オブジェクト認識、画像認識、座標認識の設定や運用の難易度の違いを、図解を基に分かりやすく解説いたします。
オブジェクト認識
高度な設定が可能ですが、システムやプログラミングの基礎知識が必要になる場合があります。そのため、IT部門や専門チームが導入を担当することが推奨されます。
画像認識
直感的な設定が可能で、プログラミング知識がなくても扱いやすい点が魅力です。
初心者でも簡単に導入できるため、幅広い企業で採用されています。
座標認識
最もシンプルで軽量な設定が可能で、導入コストも比較的低いです。ただし、画面レイアウトが変更された場合には再設定が必要になるため、定期的なメンテナンスが必要です。
オブジェクト認識のRPAに適した業務例
オブジェクト認識のRPAに適した業務として、主にUIの改修が多いシステムや動的なUIの業務に最適です。以下に主な業務例を紹介します。
SaaS型顧客管理システム(SFA/CRM)のデータ処理
クラウド型SFA/CRMでは、顧客情報の管理や営業活動の記録が行われます。これらのシステムは、ユーザーインターフェースが頻繁に改修されることがありますが、オブジェクト認識を利用すれば、データの自動入力や顧客リストの更新などをスムーズに行えます。特に、リアルタイムに入力されるデータの正確な処理に適しています。
クラウド型販売管理システムの操作自動化
クラウド型販売管理システムでは、画面構成や要素が動的に変化することがよくあります。オブジェクト認識を活用することで、販売データの入力、更新、レポートの生成といった操作を安定して自動化できます。また、システムの更新が頻繁に行われても、IDやクラス名で要素を認識するため、高精度な操作が可能です。
モバイルアプリケーションのバックオフィス連携
モバイルアプリケーションの動的なUI操作、例えば、注文状況の確認や在庫の照会といった業務にもオブジェクト認識は有効です。
アプリの画面上に表示されるボタンやメニューが動的に変化する場合でも、裏側の要素を特定して操作するため、正確かつ効率的に業務を処理できます。
RPAのオブジェクト認識を選ぶ際のポイント
RPAのオブジェクト認識を選ぶ際には、業務の特性やツールのサポート体制、他の認識方法とのバランスを理解することが重要です。
1.自動化対象業務の特性を理解する
オブジェクト認識を導入する際は、まず自動化したい業務がどのような特性を持つかを確認しましょう。
例えば、頻繁に画面レイアウトが変わるクラウドシステムや、動的に生成される要素を含むアプリケーションなどはオブジェクト認識に適しています。一方、固定された画面構成で繰り返し行う作業には、画像認識や座標認識が向いています。
業務の種類や操作対象に応じて、最適な認識方法を選択することがポイントです。
2.ツールのサポート体制や運用者のリテラシーを確認する
オブジェクト認識は高精度な自動化を可能にしますが、その設定には一定の知識が必要です。そのため、ツールを選ぶ際にはサポート体制の充実度を必ず確認しましょう。
たとえば、導入後のトレーニングプログラムや、専用のサポートチームの有無は重要なポイントです。また、操作マニュアルやFAQ、ヘルプデスクが整備されていると、運用中に困ったときも安心して対処できます。
ただし、ITに自信のない方や初心者がオブジェクト認識を採用する場合、サポート体制が手厚くても運用中に使わなくなるケースが多く見られます。
特に、設定の難易度やメンテナンスの負担が原因で、導入後にRPAの利用が停止されてしまうことも少なくありません。
そのため、初心者や非IT部門が運用を担う場合には、オブジェクト認識ではなく、より直感的に操作できる画像認識や座標認識を検討することをおすすめします。
長期的な効果を得るためには、自社のリテラシーに合った認識方法を選択することが重要です。
3.他の認識方法との併用を検討する
オブジェクト認識だけでなく、画像認識や座標認識との併用も視野に入れることで、より柔軟な自動化が可能になります。
たとえば、動的なシステムの操作にはオブジェクト認識を、固定された画面構成の操作には画像認識を使うといった使い分けが効果的です。また、特定の操作で問題が発生した場合に、他の認識方法に切り替えることで安定性を確保することもできます。RPAツールによっては、これらの認識方法を柔軟に組み合わせて利用できるものもあるため、業務内容に応じた使い分けを検討しましょう。
「RPAのオブジェクト認識とは」まとめ
RPAのオブジェクト認識は、業務の高度な自動化を実現するための重要な技術です。画面の裏側にあるシステム要素を直接認識して操作するため、動的に変化する画面や複雑なシステムでも正確かつ安定した動作を提供します。
そのため、クラウド型システムや頻繁にレイアウトが変更される環境など、柔軟性が求められる業務には特に適しています。一方で、導入にはプログラミング知識が求められるケースも多く、ITリテラシーが高くない組織ではハードルが高くなる場合もあります。こうした点を踏まえ、オブジェクト認識のRPAツールを導入する際は、業務の特性や運用体制をしっかりと見極めることが必要です。
また、オブジェクト認識は他の認識方法、例えば画像認識や座標認識と併用することで、幅広い業務自動化が可能になります。それぞれの認識方法の特徴を活かし、業務ごとに適したアプローチを取ることが、効率的かつ効果的なRPA活用のポイントです。
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画像認識は、画面上の視覚的な要素を基に操作する技術で、古いシステムや独自画面の操作に最適です。
オブジェクト認識は、システム内部の構造を理解し、動的なクラウドシステムや最新技術を活用した画面操作にも対応可能です。
2つの認識方法を業務内容に応じて使い分けることで、操作の正確性や効率性を向上させると同時に、幅広い業務を自動化できます。
また、RoboTANGOは初心者でも直感的に操作できる設計で、低価格且つ複数のPCで利用できるフローティングライセンスであることから導入のハードルが低いRPAツールとなっています。
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