RPA人材に求められる役割

RPA人材にはさまざまな役割が求められます。RPAの導入・運用がうまくいくかどうかを左右するのは、RPA人材の対応によるといっても過言ではありません。多くの場合、1人が複数の役割を担うことが多いでしょう。しかし1人での対応が難しい場合は、社内のシステムエンジニアと連携して対応することも大切です。ここでは、RPA人材には具体的にどのような役割が求められるのかを解説します。

RPA導入時の社内体制の構築と活用促進

RPAを導入して社内で活用していくには、社内の体制を整え、 活用を促進する必要があります。その役割を担うのがRPA人材です。RPAは初心者でも利用しやすいツールですが、ツールを使いこなすにはある程度の知識が必要です。RPA人材がRPAを導入する具体的なメリット、業務での活用方法などを分かりやすく社内で発信することで、社内での理解が深まりRPAの活用が浸透するでしょう。

RPAで改善したい業務と導入ツールの選定

RPAの導入が決定したら、どの業務に対してどのようなRPAを活用するかを比較・検討するのもRPA人材の仕事です。選定に関しては現場の声をくみ取り、導入後にしっかり活用してもらえるツールを選ぶ必要があります。しかし、現場の声をうのみにしないようにしましょう。RPAには向いている業務と向いていない業務があります。RPAが力を発揮するのは作業の手順が決まっている定型業務で、イレギュラーな対応が多い非定型業務は向いていません。さらに、RPAの導入によって削減できる時間やコスト、開発の難易度も業務によって異なります。そのため現場の課題がRPAで解決すべきものなのか、第三者の目で冷静に判断しましょう。削減が見込める手順や工数などを分析し、現場とすり合わせていくことが重要です。

RPA導入後の全体像設計や業務フローの洗い出し

導入するRPAツールと対象業務の選定ができたら、既存の業務にどのようにRPAを組み込んでいくかを設計します。業務フローの全体像がわかる設計書を作成し、RPAで効率化すべき業務を可視化しましょう。この際、業務フローにRPAで自動化できない非定型業務が含まれていないかも確認します。従来の業務内容やプロセスを見直し、RPAを活用しやすいよう必要に応じで業務フローの修正やフォーマットの変更を行うと良いでしょう。

RPAのシナリオやロボットの作成・開発

作成した設計書に従ってRPAツール内でロボットを作成します。ロボットの作成に際して、RPA人材にプログラミングの知識がない場合は、社内のシステムエンジニアの力を借りるのも1つの方法です。テストを繰り返しながら、ロボットを作成していきましょう。ロボットを作成したら、運用マニュアルも作成します。運用マニュアルに手順やトラブル発生時の対処法をきちんと記載しておけば、RPAの安定稼働につながるでしょう。

RPAツールの保守・運用・効果計測・検証

RPA導入後のRPA人材の重要な役割は、保守運用を行いながら、定期的に効果計測と検証を実施することです。RPAが社内でしっかり活用されるためには、RPAツールを使用する社員全員がその使用方法を覚えていく必要があります。そのためにRPA人材は社内でツールの使用方法をレクチャーし、仲間からの疑問や要望に応えるなど、社内でのサポートをします。そして、RPAツールでエラーやトラブルが発生した際には、問い合わせ対応を行います。エラーやトラブル対応についても社内にシステムエンジニアがいれば、協力をあおいでも良いでしょう。また多くのRPAツールは導入後に運用しながらロボットを追加作成し、機能を充実させることができます。RPA人材は導入後も現場の声に耳を傾け、新たなロボット作成を行います。さらに定期的な効果計測と検証も大切な役割です。RPA導入前に得られる効果の目標を設定しておき、導入後にどのくらいの成果が出ているかを検証し可視化しましょう。例えば、残業時間を削減することを目的としていた場合、RPA導入前に月間の目標削減時間を試算し、導入後に実際の削減時間を比較します。これによりRPA導入の費用対効果を計算できるようになり、RPAを継続して利用すべきかどうかの判断ができるようになります。

RPA人材に必要なスキル

次に、RPA人材にはどのようなスキルが必要なのかを具体的に解説していきます。

業務管理能力

RPA人材は現場の業務の課題を把握し、課題解決に向けてRPAを有効に活用し業務を効率化します。そのためには業務管理能力が必要です。RPA導入の際、一つの部署の業務の自動化だけでなく、複数の部署に関わる業務を自動化する場合もあります。そのような時は、業務管理がきちんとできていないと、RPAを導入して得られる効果はあまり期待できないでしょう。

コミュニケーション能力

RPAの導入には、あらゆる部署が関わります。そのため、RPA人材にはコミュニケーション能力が求められます。円滑に現場とコミュニケーションが取れれば、現場でヒアリングをする際や何かトラブルが発生した時にも迅速に対応できるでしょう。

プログラミング・コーディング知識

RPAツールにはプログラミングやコーディングの知識がなくても利用できるものもありますが、基礎知識がない状態ではロボットの開発は難しいでしょう。ロボットの開発段階で、自分でコードを書く場面が出てくる可能性もあるので、RPA人材はプログラミングやコーディングの知識があると良いでしょう。

課題発見力

業務を改善して効率化するには、既存の業務を見直し、改善の余地がある課題を見つける力が必要です。「既存の業務を効率化するには何をすべきか」を考えて行動できるRPA人材は業務の効率化を促進してくれるでしょう。

柔軟性

RPA導入のゴールは導入することではなく、導入後にRPAを活用して業務を効率化させることです。そのため、RPA人材には業務を効率化するための最適な手段を検討できる柔軟性が必要です。 例えば、 RPAで行う作業はAI(アーティフィシャル・インテリジェンス、人工知能)やVBA(ビジュアルベーシック・フォー・アプリケーションズ、Microsoft Officeに搭載されている拡張機能)でもできるかもしれません。仮にRPAの導入が最適ではない場合に、別の選択肢などを考えることができる柔軟性も必要です。

RPA人材を確保するための4つの方法

それでは、RPAの導入に必要なRPA人材を確保するにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは、人材確保の具体的な方法をご紹介します。

キャリア採用で人材を確保

RPAの導入を素早く推進し、長期的に運用したいと考えるなら、RPAの運用経験がある人材を新たに採用する方法があります。ただし、RPA人材はエンジニアのなかでも数が多くないので、通常の求人広告を使用するより人材紹介によって採用する方が効率良く人材を確保できるでしょう。 しかし、人材紹介の紹介料は年収の30%前後が相場で、大きなコストになることが想定されます。紹介料がRPAに関わる予算を圧迫する場合は、無理に採用すべきではないかもしれません。

派遣やフリーランスの人材を雇用導入後の一定期間だけRPA人材にいてほしいという場合は、期間の定められた派遣サービスやフリーランスを活用し、人材を確保することを検討しても良いでしょう。例えば、パーソルテンプスタッフ株式会社は「RPAアソシエイツ」というサービスを提供しています。RPAアソシエイツとは、業務効率化を実現するスペシャリストを派遣して、RPAツールの導入から運用開始までを支援するサービスです。また、株式会社パソナテックはIT業界に特化した派遣サービスを提供しています。派遣サービスは派遣会社側がスタッフのスキルや経験を理解したうえで、人材を必要とする企業に適切な人材を派遣します。RPAの導入で手一杯で、人材採用まで手が回らないという企業はこのようなサービスを利用すると良いでしょう。しかし、RPA技術者検定のような資格は取得者がまだまだ少なく、有資格者を確保するには時給が高くなってしまいがちなので注意が必要です。さらに、派遣スタッフは契約期間があるため、期間終了後も継続してRPAを運用できるように、派遣期間中に社内体制を整えておきましょう。

アウトソーシングで人材を補充

RPA人材の需要は年々高まっており、人材が不足している状態です。近年では2019年に総務省が各自治体でのAI・RPA活用事例をまとめるなど、業界問わず求められる人材となっています。結果として、人材を採用するのではなく、RPAの導入や運用自体をアウトソーシングする事例もあります。一からRPAを導入する際に、RPAツール本体、専門人材、社内調整、コスト面などを1つ1つ考えることは容易ではありません。初めてRPAを導入する際には、外部の専門家に全てアウトソーシングする方がうまくいく場合もあります。RPA単体での運用はもちろん、BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント、業務プロセスに着眼して課題を分析する業務改善手法)やRPM(リクルートメント・プロセス・マネジメント、採用管理システム)など、それぞれの分野に特化した人材から支援を受けられる点が大きな魅力です。「RPAをスピーディに導入したい」「初めてのRPA導入で失敗したくない」といった思いがあるのであれば、人材の採用ではなくアウトソーシングを検討してみても良いでしょう。アウトソーシングを請け負う企業のなかには、導入・運用支援とあわせてRPA人材の育成も支援してくれる企業もあります。そのような企業のサービスを選べば、一定期間アウトソーシングを活用したのちに社内運用に切り替えることも可能です。RPA導入のために人材確保が必要な際には、社外人材のスキルをシェアする方法も検討することで、導入初期にかかる負担やコストを軽減できます。必ずしも正社員での採用にこだわらず、様々な可能性を検討し、RPA人材を確保することが重要です。

社内で人材を育成

RPAの開発元では、該当するRPAツールを使用するための育成プログラムや勉強方法の指導を実施している場合がほとんどです。たとえば。RPAツール「ロボパット」を開発・提供している株式会社FCEプロセス&テクノロジーはRPAの機能だけでなく、手厚い研修体制を全面に押し出しています。また開発元以外の企業でも、独自のRPA研修講座を提供する会社があります。社内からRPA人材になるための研修講座に参加する代表者を選出し、RPAの理解を深めていくと良いでしょう。社内でRPA人材を育成すれば、既存の業務フローや現場の雰囲気を知っている分、RPAの運用をスムーズに広めていけます。さらに新たな人材を採用する必要がないため、人件費をおさえられ、RPA導入にかかる全体のコストを軽減できます。難点としては、短期間の勉強ではエキスパートになるのは困難だということです。すべてに1人で対応できる人材になることは難しいでしょう。

社内でRPA人材を育成するには

社内でRPA人材を育成するにはどうしたら良いのでしょうか。ここでは、社内でRPA人材を育成する3つの方法をご紹介します。

研修やセミナーへの参加

目的にあった研修やセミナーに参加すれば、一度に必要な知識を学べます。実際にRPAツールを利用しながら学べるハンズオンセミナーは、使い方や操作を短時間で身につけられるのでおすすめです。研修やセミナーの内容で疑問があれば、講師に質問してその場で解決もできます。例えば株式会社MICHIRUでは、ハンズオン形式で「MICHIRU RPA」の操作方法を学べるオンラインセミナーを開催しています。また、株式会社NTTデータビジネスブレインズは「WinActor」に関するオンラインセミナーを多数開催しています。このようなRPAの開発元が開催している研修やセミナーに積極的に参加してみると良いでしょう。

eラーニングの受講

eラーニングは時間や場所にとらわれず、Web環境があれば受講できるので、社内にいながら受講ができます。また、分からなかった部分を何度も受講できる点もポイントです。しかし、全てのRPAツールがeラーニングコンテンツを提供しているわけではないので、導入する際にはeラーニングコンテンツの有無を確認しましょう。UiPath株式会社では「UiPath アカデミー」という無料でRPAについて学べるオンラインサービスを提供しています。UiPath株式会社の製品を導入する場合は、ぜひ活用しましょう。

実際に導入し使用しながら学習する

RPA導入後に、実際に使用しながら学習することも可能です。業務で使用しながら学べるので、実践力が身につくでしょう。前述した通り、多くのRPAの開発元がRPAツールの使い方や勉強方法の指導を実施しています。このようなサービスを活用して、基礎知識を理解した後に業務でツールを使用していけば、効率的に学べます。

まとめ

RPA人材には、RPAを導入する際の社内体制の構築から導入ツールの選定、ロボットの作成、導入後の保守運用と効果計測・検証まで、さまざまな役割が求められます。しかし、全てを1人で対応するのではなく、社内のシステムエンジニアにサポートを求めるなどするとRPAの導入と運用がうまくいくでしょう。またRPA人材には、業務管理能力やコミュニケーション能力のような一般的なスキルの他にも、プログラミングの知識や課題発見力、柔軟性が必要です。このような人材を確保するには、キャリア採用をしたり、派遣スタッフやフリーランスを雇用したり、アウトソーシングを利用すると比較的短期間でRPA人材を確保できます。時間はかかりますが、社内でRPA人材を育成することも可能です。その際は、RPAの開発元が開催する研修やセミナー、eラーニングなどを活用するのがおすすめです。本記事でご紹介したRPA人材に求められる役割やスキル、RPA人材を確保する方法、RPA人材の育成方法を、RPA人材の採用や社内育成にぜひ役立ててください。