そもそもRPAとは?

RPAとはRobotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略でロボットによる業務の自動化を行う仕組み・ソフトウェアのこと

RPA(アールピーエー)とは、「Robotics Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の略で、「ロボットによる業務プロセスの自動化」を意味します。RPAは、人がパソコン上で行っている定型業務をソフトウェアロボットが記憶し、代わりに自動化し実行するソフトウェアまたはその仕組みを指します。

RPAは、データ入力・転記、データ集計・加工、ファイルの作成や移動、メールの送受信、ウェブサイトでの情報収集など、繰り返し行われる作業を自動で実行することができ、これにより業務の時間短縮、コスト削減、ヒューマンエラーの軽減といったメリットを企業にもたらします。
RPAの導入により、従業員は単純作業から解放され、より創造的で価値の高い業務に注力できるようになるため、全体の生産性の向上が期待できます。また、24時間365日稼働することが可能なため、業務の迅速化や顧客サービスの向上にも貢献します。

RPA導入による医療機関のメリット5つ

RPA導入による医療機関のメリット5つ

病院や診療所などの医療機関がRPAを導入するメリットとして「業務効率と生産性向上」「人的ミスの削減」「コスト削減」「顧客サービスの質向上」「従業員の精神的負担の軽減」が挙げられます。それぞれのメリットを詳しく説明します。

1.業務効率と生産性向上

医療機関では、患者情報の入力・更新、予約管理、請求処理、レポート作成、データ抽出・インポートといった日常業務に、多くの時間と労力が費やされています。
RPAの導入により、これらのルーティン業務を自動化することができ、ロボットが24時間体制で迅速かつ正確に作業を行うことが可能となります。

この自動化により、処理能力が向上し、より多くのタスクを効率的に処理できるようになります。結果として、医療スタッフは煩雑な事務作業から解放され、その時間を患者ケアや専門的かつ戦略的な業務に充てることができ、医療機関全体の生産性向上に貢献します。

2.人的ミスの削減

医療業界でのRPA導入は、人的ミスの削減に大きなメリットをもたらします。
予め設定されたルールや手順に基づき高い精度で作業を実行することができるため、入力エラーや情報の見落としといった、人の手による作業で発生しやすいミスを削減します。ソフトウェアロボットであるRPAは疲れることがなく、感情の影響を受けることもないため、作業の精度が時間の経過と共に低下することがありません。そのため、長時間の勤務や忙しい時期でも、医療データの入力や処理の正確性を維持し続けることができます。

特に、患者データの登録、処方箋の管理、請求関連業務、検査結果の記録など、高精度を求められる業務において、RPAが人的ミスのリスクを軽減することで、全体のサービス品質向上を実現することが可能です。

3.コスト削減

RPAを活用することで、医療機関は人件費や運営コストの削減を実現できます。自動化により、繰り返しの作業やルーティン業務にかかる時間と人的リソースを減らし、それに伴う残業時間の削減や人員配置の最適化が可能になります。
業務量が増えても、RPAで業務を自動化することで、新たな人員を増やすことなく対応でき、人件費の増加も抑制できます。

また、人的ミスの減少により確認や修正作業の必要性が低下することも、間接的なコスト削減に寄与します。

4.顧客サービスの質向上

患者データの管理や予約システムの運用などの自動化により、創出できた時間で患者一人ひとりに対するきめ細やかなケアが可能となります。

さらに、予約システムや患者フローの管理をRPAで自動化することで、待ち時間の短縮に貢献したり、請求に関連するデータを正確に処理し、提供することで透明性と信頼性を向上したりすることもできるようになることから、全体の医療サービスの質の向上も期待できます。

5.従業員の精神的負担の軽減

医療従事者が行う事務作業には、患者データの入力、請求処理、予約管理などがあります。これらは繰り返し行われる作業であり、多くの時間を消費するだけでなく、細心の注意を要するため精神的なストレスの原因となります。RPAがこれらの業務を高速かつ正確に実行し、医療従事者を多くの煩雑な作業から解放させることで精神的負担を軽減します。

RPAにより効率化できる業務事例11選

RPA導入で効率化できる医療機関の主な業務11個を紹介

医療業界におけるRPAの活用は、業務効率の向上、コスト削減、そして患者ケアの質の向上に貢献します。以下は、医療業界でRPAを活用する際の具体的な業務の例です。

電子カルテデータの移行

旧カルテシステムから新電子カルテシステムへのデータ移行作業を、RPAを用いることで自動化することが可能です。

手作業でのデータ入力やシステム間の移行作業は、時間がかかる上に人的ミスのリスクを伴います。RPAを活用すれば、患者の治療履歴、薬剤情報、診断結果などの重要なデータを電子カルテシステムに迅速かつ正確に入力し、異なるシステムへのデータ移行を効率的かつデータの整合性を維持しつつ行うことができます。

レセプトの作成・チェック

医療機関が審査支払機関へ提出するためのレセプトの入力作業から整形、チェック業務まで自動化することが可能です。

例えば、レセプトのデータを請求システムに転記する作業をはじめ、レセプトと電子カルテのデータを突合して算定に必要な情報の記載漏れがないかチェックして抜け漏れを修正したり、医師に通知したりする作業を自動化することができます。

検査レポートの出力と検査結果の入力

血液検査や臨床検査などの検査レポートをシステムからダウンロードし、患者の電子カルテシステムに入力するまでの一連の作業をRPAで自動化することができます。

毎日何回も発生するデータのエクスポートや入力作業を自動化することで手作業による手間や時間を削減します。

検査レポートの出力から通知までの一連の流れを自動化

問診表の情報をシステムに登録

初診の患者が記入する紙の問診票は、通常、医療現場の担当者が手作業でシステムに入力することが多いため、効率が低下し、入力ミスや情報漏れのリスクが伴います。

AI-OCRを利用して問診票をスキャンし、テキストデータに変換した後、RPAでテキストデータを自動でシステムに入力させることにより、手作業の負担を大きく減少させることができます。それにより、入力作業の効率化だけでなく、入力ミスやデータの漏れ防止にも貢献します。

患者の統計や処方情報の分析

外来・入院患者の統計、病床稼働率、手術件数、医療機関の売上集計、全患者データの処方情報分析など、医療機関の様々なデータ管理作業をRPAで自動化することができます。

それにより、従来、月次や年次で手作業によって行われていた膨大な作業時間を大幅に削減できます。また、自動化により時間が節約されるため、スタッフは集計や分析作業から解放され、医師・看護師のサポートに集中できるようになります。

予約管理

企業から送付される健康診断リストやWebサイトの予約受付フォームから得られる患者情報を、予約管理システムに自動で入力することが可能です。
さらに、患者によるキャンセルや変更があった際も、RPAが自動的に処理することができます。
これにより、リアルタイムに情報が更新され、人的ミスのリスク低減につながります。担当者は本来の業務に専念することができ、業務の効率化と質の向上が図られます。

従業員の入退社の処理作業

新しく雇用された従業員の情報を人事システムや電子カルテシステムに登録する業務や、退職する従業員の手続き、必要な文書の作成、アクセス権の設定など、情報システム部門や人事部門における入退職処理の業務をRPAによって自動化することができます。

この自動化によって担当者の業務負担が軽減され、従業員管理に関連する作業の効率化を図れます。

在庫管理

薬剤、医療機器、その他の医療用品の在庫数を自動で管理し、所定の数値を下回った場合は自動で補充のための注文を実行します。
RPAによって適切な在庫数を維持し、品切れや過剰在庫を防ぎ、在庫管理の効率化を図ります。

伝票の入力作業や請求処理

帳票データの経理システムへの入力、発注書や請求書の自動発行、さらに患者からの診療費の入金情報と請求金額の突き合わせ、未収金データの消込作業など、金銭管理に関わる多くの業務をRPAによって自動化することが可能です。

これらの自動化によって、業務の迅速化を実現し、人手による入力ミスや情報の漏れを防ぐことができます。RPAを活用することで、医事課や経理部門の効率を大幅に向上させることが期待できます。

勤怠管理

RPAの活用により、医師や看護師・事務スタッフなどの従業員の出勤・退勤・休憩時間や残業時間の計算などの勤怠管理業務を自動化し、これらを正確かつ効率的に実施できます。さらに、勤怠の打刻漏れを自動で検出し、未申請の従業員にアラートを発して申請を促すことも可能です。

この自動化により、事務担当者の確認作業や通知作業、勤怠データの集計作業の負担を軽減します。加えて、勤怠データを直接給与計算のプロセスに連携させることもできるため、業務全体の効率化と精度の向上が実現できます。

財務報告書や収支簿の作成

RPAを使用することで、財務データの抽出から集計、そして報告書のフォーマットへのデータの挿入を自動化し、財務報告を迅速かつ正確に行うことが可能になります。

自動化により、手作業でのミスを削減し、財務報告の信頼性を向上させることができます。削減できた時間を分析にあてることができ、より価値の高い業務に集中することが可能です。

医療機関で自動化できる業務事例をご紹介しましたが、その他にもさまざまな業務を自動化し、効率化することが可能です。

医療業界向けRPAを利用したDX推進事例

医療業界向けRPAを利用したDX推進事例

医療業界でのRPAを活用したDX推進事例や、なぜ医療業界にRPAツールが最適なのか、RPA導入のための10個のチェックポイントをまとめた資料をダウンロードいただけます。

「医療業界向けDX推進事例」
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医療業界のRPA導入事例7選

本章では実際に医療機関でRPAを導入し成果を出されている事例を紹介いたします。

医療法人社団 平郁会

医療法人社団平郁会

医療法人社団平郁会様は、東京、神奈川、千葉を中心に17の在宅医療・訪問診療クリニックを展開しており、以前はRPAロボットの構築と保守を外部に委託していました。しかし、電子カルテシステムのアップデートのたびにRPAロボットのメンテナンスが必要となり、大きな手間と時間がかかるという課題に直面していました。
この問題を解決するため「RoboTANGO(ロボタンゴ)」へのサービスに切り替えを決定。

RoboTANGO導入後、電子カルテに関わる入力・登録作業や検査レポートデータのアップロードなど、様々な部門のルーティン業務の自動化を実現し、結果、月間150時間以上の作業時間を削減することに成功しました。

自動化により組織全体の効率化が進み、ルーティン業務から解放された従業員の精神的負担の軽減、さらには創出された時間を活用して業務範囲を広げることができ、従業員満足度の向上にもつながっています

また、平郁会様ではRPA導入と並行してAI-OCRも導入し、患者から提出された紙の請求先情報をテキストデータ化するなど、積極的にDXを推進していらっしゃいます。

医療法人社団 創福会 ふくろうクリニック等々力

医療法人社団 創福会 ふくろうクリニック等々力様

医療法人社団創福会様は2つの拠点でクリニックを運営しており、旧電子カルテシステムがサーバー型でWindows 7のみ対応していたため、クラウド型の電子カルテへの移行が必要になりました。約4,000人の患者に関する診療記録が合計80,000件に上り、これら全てのデータを移行する必要がありましたが、人手で行うと約1年の時間がかかり、新たな人員の採用や既存の人的リソースの大幅な割当が必要となる見込みでした。この大規模な作業に伴う業務負担の増加や莫大なコストが課題となっていました。

そこで創福会様は医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める一環としてRPA「RoboTANGO」の導入を決定しました。
RPAロボットを活用することで、1日あたり平均10人分、約200件のデータ移行を実現。人手によるデータ移行作業は単調でありながらも疲労やミスのリスクが伴うものですが、RPAは指示された作業を間違いなく繰り返すことが可能であり、作業のスピードと正確性を維持しながら効率的にデータ移行を行うことができるようになりました。

旧電子カルテシステムから新電子カルテシステムへのデータ移行を自動化

このように、RPAの導入により、創福会はデータ移行の作業時間を大幅に短縮し、人的リソースの有効活用とコスト削減を実現することができました。

医療法人社団 創福会 ふくろうクリニック等々力様の導入事例:「RPAで旧電子カルテの移行作業を自動化。医療業界のDX化をRPAで実現」

東京歯科大学 市川総合病院

東京歯科大学附属市川総合病院は、570床を有する地域の総合病院で、医師の働き方改革など経営課題の解決を目指して2018年11月にRPAのトライアル導入を開始。
半年のトライアルを通じて、医事課、放射線科、診療情報チームの業務が自動化の対象となりました。
特に放射線科では『造影剤CT・MRI検査前のeGFRチェック』の自動化により、放射線技師が本来の業務に注力できるようになったとのことです。
その後、医事課や放射線科など複数部門でRPAによる業務自動化が実用化され、「入院患者シート印刷」「アセスメントシートチェック」「看護サマリチェック」「看護管理日誌」「看護日誌統計」「院外処方受付」「退院サマリ未作成の見える化」「掲示板書き込み」など現在9体のロボットが稼動しています。これにより、様々な業務で作業時間が削減され、効率化が実現しました。

名古屋大学医学部付属病院

名古屋大学医学部附属病院は、1871年の創立以来中部エリアで高度医療を提供してきました。

過重労働と人手不足に対処するため、2019年5月からRPA導入を全事務部門で開始しました。今までは医局から紙で提出される医師の勤務時間を手作業で計算していましたが、RPAの導入により、医師の勤務時間計算作業を年間160時間効率化することに成功。
さらに21体のロボットの展開で約9,800時間の業務削減が見込まれています。
この効率化により、事務職員は医師・看護師の支援など、より高付加価値の業務に集中できるようになりました。

社会福祉法人恩賜財団 済生会熊本病院

恩賜財団済生会熊本病院様では数年前から院長を中心にDXに積極的に取り組んでおり、その一環としてRPAを導入されました。

時間外労働の削減や業務効率化を目的として、現在では、手術予定表のメール送信、健診予約の登録、職員の体調分析表のメール送信、リハビリテーション科の台帳作成と診療記録プリセットの自動化など、複数の業務でRPAが稼働しており、業務効率の大幅な向上を実現しています。
例えば、企業からの定期健診の予約リストをシステムに登録する作業では、1,829名分の入力業務で46時間の作業工数削減に成功されました。

公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院

公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院様では、医療業界における過重労働と人手不足の課題に対応するため、早期からRPA導入による働き方改革を推進してきました。

特に、医師や看護師の事務作業を軽減するために、複数の業務における「タスクシフト」を積極的に実施し、業務プロセスの自動化を図っています。
しかし、業務をそのまま引き継ぐと、受け皿となる職員の業務量が増大することから解決策として情報システム部が主導となり、RPAを導入。
文書管理システムで作成した術前評価表を手術部門システムに転記する作業を自動化したことにより年間960時間の削減を達成。現在、患者データの自動抽出・保存、患者退院時のサマリ作成補助など9つの業務を自動化し、1台のロボットが1日に5~6時間、繁忙期には15時間以上稼動し、実質2人分の業務量を処理しています。

今後は医師や看護師など医療現場の業務も含め、自動化の適用領域を広げ、RPAロボットが24時間365日安定稼働できる体制を目指すとのことです。

奈良県総合医療センター

奈良県北部の基幹病院、奈良県総合医療センター様では、スタッフが抱える定型業務の負担を軽減し、医療の質を担保するため、既存の医療システムに変更を加えずに利用可能で、スタッフ自身が操作シナリオを容易に構築できるRPAツールの導入を決定しました。

RPAの導入により、医療職を含む76の業務において自動化できることが分かり、特に7つの主要業務で顕著な効率化を実現することができました。
例えば、臨床検査部では超音波検査のリスト作成時間を2~3時間からわずか10分程度に短縮することができ、年間で約1,000時間の作業時間削減を達成しました。また人的ミスの削減にも貢献。
これによりスタッフは患者ケアにより多くの時間を割くことができるようになり、医療の質の向上に寄与しています。

RPA導入時の留意点

RPA導入時の4つの注意点

RPAを運用する際の留意点として「RPA運用者の属人化」「導入時の作業負担」「費用対効果の検証」「最初からすべてを自動化しようとしない」点が挙げられます。それぞれのポイントを把握し、効果的にRPAを運用することで、業務効率化やコスト削減、品質向上などのメリットを最大限に引き出すことができます。

RPA運用者の属人化

RPAの作成や運用に関して特定の個人に依存する状況を避ける必要があります。属人化は、担当者が不在もしくは異動した場合に、運用やエラーの解決が困難になるリスクが発生します。
そのため、運用体制やルール・知識に関する共有、ドキュメントの作成などを行い、メンバーが運用方法を理解し管理できる体制を整えることが重要です。

導入時の作業負担

RPA化の際には、まず既存の業務を分析し、自動化する業務を特定した上で、業務のオペレーションを整えてRPAロボットを開発する必要があります。
これらのプロセスは、RPAを初めて導入する担当者にとっては大きな負担となります。
そのため、RPAツールの導入前後は、業務の棚卸やRPAの作成方法などベンダーの知見とサポートを積極的に利用し、なるべく担当者の負担軽減につなげましょう。

費用対効果の検証

RPAを継続的に活用するためには、導入前と導入後の業務パフォーマンスやコストを分析し、改善点を数値で示して費用対効果を明確にすることが重要です。
分析には、時間の削減、エラー率の低減、生産性の向上など定量的な指標と、作業の質の向上や従業員満足度の改善などの定性的な指標を組み合わせて用いることが効果的です。これにより、RPA導入の具体的なメリットを示すことができ、継続的な業務改善と投資の正当化に繋がります。

最初からすべてを⾃動化しようとしない

RPAを導入する際、初めから全ての作業を自動化しようとすると、RPAの作成時間や工数が膨大になり運用開始までに時間がかかってしまうだけでなく、最終的には実装が困難になることがあります。

成功のポイントとして、最初から全工程を自動化しようとせず、まずは部分的に自動化を行い、小さくスタートしてから徐々に範囲を広げていくことです。
特に、効果が即座に見込める比較的シンプルなルーティン業務から自動化を始めて早期に成果を出し、段階的に自動化の範囲を拡大していくことをおすすめします。

医療機関におけるRPAツール選定のチェックポイント

医療機関がRPAを選ぶ際のチェックポイント

医療機関がRPAを選定する際のポイントとして「OS・ブラウザ対応」「クローズド環境に対応しているか」「社内のシステムを動かせるか」「利用する規模・対象者」「サポート体制」「国産か海外製品かどうか」「ライセンス形態」「費用・コスト」などが挙げられます。
検討する際にチェックするポイントを下記の表にまとめましたのでご参考ください。

OSやブラウザが対応しているか

RPAを選定する際は、自機関で使用しているパソコンのOS(オペレーティングシステム)やブラウザとの互換性を確認することが重要です。特にmacOSを使用している場合、対応しているRPAツールが限られてくることがあるため、事前に確認しておく必要があります。

クローズド環境に対応しているか

医療業界において、近年クラウド環境での利用が増えていますが、情報セキュリティの確保のため、インターネットに接続されていないクローズドネットワーク環境を構築しているケースも少なくありません。
その場合、クローズドネットワークで動作可能なRPAを選択するか、ポートの開放が可能な場合は、他のRPAソリューションも使用できる可能性があります。
そのため、導入前には自機関のインターネット接続環境についての調査が必要になります。

社内のシステムをRPAで動かせるか

医療機関で利用されているクラウドサービスや独自のシステムがRPAで自動化できるかどうかは、導入を検討する際の重要なポイントです。
導入後に自動化できなかったという事態を避けるため、RPAツールの無料トライアルを活用して、事前に実際の動作確認を行っておくことを推奨します。

RPAを利用する規模・対象者

RPAの運用規模や管理体制によって、最適なRPAツールの選択肢は異なります。組織全体での広範囲にわたる自動化や情報システム部門による一元的な管理を目指す場合は、サーバー型RPAが適しています。これに対し、小規模なプロジェクトや実務担当者が個別に運用する状況では、デスクトップ型やクラウド型のRPAが推奨されます。サーバー型は管理とセキュリティの面で強力な制御が可能ですが、導入と維持のコストが高くなる可能性があります。一方、デスクトップ型やクラウド型は比較的低コストで導入しやすく、柔軟な運用が可能です。組織のニーズと運用体制を慎重に評価し、最適なRPAソリューションを選択しましょう。

サポート体制

RPAを導入した後、ユーザーがツールを活用できるようになるためには、ベンダーが提供するサポート体制が非常に重要です。このため、導入前には問い合わせ対応の手段、ヘルプデスクの存在、学習用コンテンツの提供状況など、充実したサポート体制が整っているかを確認することをおすすめします。
ユーザーが直面する可能性のある問題に迅速かつ適切に対応できる体制が整っているかどうかは、RPA導入の成功に直結します。サポート体制が整っている、またはツールを使いこなすための導入支援のプランを提供しているベンダーを選択しましょう。

国産か海外製品か

海外製品を選択する場合、サポートサイトやマニュアルが英語であることが多く、運用担当者の英語力によっては運用に支障をきたす可能性があります。そのため、運用担当者の技術的リテラシーや言語能力に合ったRPAツールの選択が求められます。
英語力に不安がある場合は、サポートやドキュメントが日本語で提供されている国産RPAツールの選択を検討しましょう。これにより、スムーズな導入と運用が期待できます。

ライセンス形態

RPAには、1台のPCに1つ必要な単一ライセンス、1つのライセンスで複数のPCで利用できるフローティングライセンス、使用量に応じた従量課金制など、様々なライセンス形態が存在します。
特に、初期は小規模や個人での運用からスタートしても、将来的に運用メンバーが増えることを見込む場合、複数のPCで1つのライセンスを共有できるフローティングライセンスがおすすめです。

費用・コスト

導入予定のRPAツールが予算内で収まるかどうかをはじめ、自動化したい業務とそれによって削減される予定の作業時間から、費用対効果を計算し、投資が妥当かどうかを判断することも重要です。
ツールによっては、初期の見積もりよりも実際のコストが高くなることがありますので、十分な注意が必要です。
導入前に詳細な見積もりを取得し、見逃していたコスト部分や将来的に発生する可能性のある追加費用についてもきちんと把握しておきましょう。

まとめ

病院や診療所、クリニックなどの医療業界におけるRPAの導入は、業務効率の向上、コスト削減、患者ケアの質の向上という大きなメリットをもたらします。
本記事では、医療業界でのRPA導入による成功事例7選と、効率化できる具体的な業務を紹介しました。これらの事例から、RPAが医療機関の日々の運営をどのように変革し、患者と医療提供者の双方に利益をもたらしているかを明らかにしました。

また、RPA導入のメリットを通じて、医療業界が直面する多くの課題を解決するための有効な手段であることがわかります。

医療業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)は、高まる患者の期待に応え、効率的かつ持続可能な医療サービスを提供するために不可欠です。RPAは、その中核技術として機能し、医療機関がデジタル化の波に乗り遅れることなく、より良い患者体験を実現するための重要な役割を担っています。RPAによる自動化の導入は、医療業界全体の効率化はもちろん、患者の満足度を高め、医療スタッフの働きがいを向上させることができるのです。

この記事を通じて、医療業界の経営者やIT担当者、医療従事者の皆様がRPAのポテンシャルを理解し、自らの機関での導入を検討するきっかけになれば幸いです。

医療業界におけるDXの重要性や、具体的な取り組み事例についてさらに詳しく知りたい方は、ぜひ次の記事もご覧ください。

医療業界向けRPAを利用したDX推進事例

医療業界向けRPAを利用したDX推進事例

医療業界でのRPAを活用したDX推進事例や、なぜ医療業界にRPAツールが最適なのか、RPA導入のための10個のチェックポイントをまとめた資料をダウンロードいただけます。

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