RPAの認識方法とは
RPA(Robotic Process Automation)の認識方法とは、ロボットがパソコン画面上の要素を「どのように理解して操作を実行するか」を指します。簡単に言うと、人間が画面を見てクリックしたり文字を入力したりする動作を、ロボットがどのように再現するかを決める仕組みです。RPAの認識方法は、精度や使いやすさに大きく影響します。
RPAの認識方法には、主に「画像認識」「座標認識」「オブジェクト認識」の3つがあります。
たとえば、「送信」ボタンをクリックする場合、画像認識ではボタンの見た目を基に操作し、座標認識では画面上の位置を基に操作します。一方、オブジェクト認識では、システムの裏側で定義された情報を基にボタンを特定して操作します。
3つの認識方法の違いを理解することで、どの業務にどの方法が適しているかを判断でき、自動化の効果を最大化することが可能です。また、選択した認識方法によって、導入時の設定や運用の仕方も異なるため、導入前に基本的な仕組みを知っておくことが重要です。
次章からは座標認識に関する解説をしていきます。
RPAの座標認識の基礎知識
RPA(Robotic Process Automation)の認識方法は、ロボットが画面上の要素をどのように識別し、自動化操作を行うかを決定する重要な技術です。主に「座標認識」「画像認識」「オブジェクト認識」の3つがあり、それぞれ得意とする分野や仕組みが異なります。
本章では座標認識について詳しく解説します。
座標認識とは、画面上の特定の位置情報(座標)を基準にして操作を行うRPAの認識方法です。
たとえば、操作対象であるボタンがPC画面の左上から「横100px、縦200px」の位置にある場合、その座標を指定してクリックや入力を行います。
この方法はシンプルで軽量なため、初期設定が容易でコストが低いのが特徴です。ただし、座標に依存しているため、画面の解像度が変わったり、ボタンの位置が動いたりすると、操作が正確に実行されなくなる可能性があります。固定された画面レイアウトや特定の業務端末で行うルーチン作業に適しています。
RPAの座標認識が動作する仕組み
座標認識は、RPAがパソコン画面上の「位置情報」を基準に操作を実行する方法です。
たとえば、画面上の特定の「X座標」と「Y座標」(水平と垂直の位置)を記憶し、そこをクリックしたり文字を入力する動作を繰り返します。
ここでは座標認識の仕組みについて解説します。
画面上の位置情報を基準に操作を実行
座標認識の仕組みは非常にシンプルで、画面上の操作対象の「位置」(ピクセル単位でのX軸とY軸の数値)をRPAに記録させ、動作時にその座標を基準に操作を実行します。
簡単に言うと、「ここをクリック」「ここに入力」といった指示を座標で行う仕組みです。
たとえばExcelを開く操作を自動化する場合、座標認識のRPAツールでデスクトップ上のExcelアイコンやタスクバーの位置を記憶させ、その座標に基づいてマウスを移動してクリックすることで、Excelを開かせることができます。
この方法は、画面デザインが固定されている場合に非常に有効で、システムの裏側(プログラム構造)を意識せずに操作を自動化できるため、設定が簡単なのが特徴です。
ただし、Excelアイコンの位置が変わると動作がエラーになる可能性があるため、画面構成を固定して運用することが重要です。
マウス操作やキーボード入力を再現する仕組み
座標認識では、マウスのクリックやドラッグ、キーボードへの文字入力など、人間が行う基本的な操作をそのまま再現します。具体的には、RPAが記録した画面上の「座標」を目印にして、指定された場所でクリックや入力を行う流れです。
この仕組みは、人間が手作業で行う操作を忠実に模倣する方法で、オブジェクト認識のようにプログラムの裏側にアクセスする必要がないため、視覚的にもわかりやすい点が特徴です。ただし、座標を基準に動作するため、操作対象の位置が変更されると正確に動作しない場合があるため、固定された画面構成が求められるという点に注意が必要です。
画像認識やオブジェクト認識との違い
RPAの認識方法には、主に「座標認識」「画像認識」「オブジェクト認識」の3つがあり、座標認識は操作対象の位置情報を基に、画像認識は画面の視覚的要素を基に、オブジェクト認識はシステム内部の要素を基に操作を実行するという違いがあります。下記で、それぞれの違いを表にして分かりやすく解説します。
項目 | 座標認識 | 画像認識 | オブジェクト認識 |
---|---|---|---|
認識基準 | 画面上の特定の座標位置(例:左上から横100px、縦200px) | ボタンやアイコンなどの視覚的な要素(形状・色・デザイン) | システム内部の要素(ID、クラス名、属性値など) |
適用例 | 固定された画面レイアウトや特定の業務端末での作業 | 画像として認識できる一意のボタンや入力フォーム、文章をもとに操作 | 最新のクラウドシステムや動的に変化するUI、複雑な業務システム |
変更への対応力 | 位置が変わると動作しなくなる(画面レイアウトに依存) | デザインが多少変わっても動作するが、大幅な変更には対応が必要 | 画面デザインやレイアウトが変更されても安定して動作可能 |
設定の難易度 | 初期設定がシンプルで簡単 | 比較的直感的で簡単 | プログラミング知識やシステム構造の理解が必要 |
画像認識との違い
画像認識は、画面上の視覚的な要素(ボタンの形状や色など)を基に操作を行います。一方、座標認識は、要素の見た目には関係なく、画面上の位置情報を基準に動作します。そのため、画像認識はボタンのデザインが変わっても対応できる柔軟性がありますが、座標認識は位置が固定されていないと動作に影響が出る点が違いです。
オブジェクト認識との違い
オブジェクト認識は、画面上の操作対象をシステムの内部要素(IDやクラス名など)で特定し操作する方法です。座標認識に比べ、画面の変更に強く、動的に変化するUIにも対応できます。ただし、設定にはプログラミング知識が必要な場合もあり、運用ハードルが高い場合があります。
座標認識は最もシンプルな認識方法で、固定された操作対象に適しているため、特定の環境やシステムに特化した業務には最適です。ただし、業務フローやシステム環境に合わせて、他の認識方法との使い分けを検討することが重要です。
RPAの座標認識を選ぶメリット
座標認識のメリットは、主に「簡単に設定できること」、「処理が軽く、動作が高速なこと」、「固定されたシステムでは非常に安定して動作できること」が挙げられます。
下記で、それぞれのメリットを詳しく解説いたします。
1.簡単に設定ができる
座標認識は、画面上の操作対象の位置を座標(例:横100px、縦200px)として登録するだけで設定が完了するため、非常に簡単なプロセスでできることがメリットです。
たとえば、クリックやデータ入力を行いたい位置を画面上で、マウス操作で指定するだけで済むため、設定時の試行錯誤やトレーニングが最小限に抑えられます。
そのため、画像認識と同様に、初期設定の時間やコストが抑えられます。
シンプルな設定のため、設定作業自体が効率的に進められる点が座標認識の強みです。
2.処理が軽く、動作が高速
座標認識は画面要素の構造や画像データを解析する必要がないため、認識処理が軽く、高速に動作することが可能です。
そのため、大量のデータ入力やクリック操作を短時間で処理する必要がある業務において、特に有用です。
システムリソースを大きく消費しないため、古いパソコンやスペックの低い端末でも問題なく運用できる点がメリットです。
3.画面構成が固定されたシステムでの安定した動作
座標認識は、画面レイアウトが固定されている場合に非常に安定して動作します。
たとえば、専用端末や古いシステムで、画面要素が一定の位置に配置されている場合の利用には最適です。
画面が動的に変化しない業務や、データ入力が決まった位置で行われるような業務では、座標認識を活用することで効率的な自動化を実現できます。
また、固定された環境では、他の認識方法よりもシンプルかつ軽量で動作するため、運用が非常に容易です。
RPAの座標認識のデメリットと課題
座標認識は簡単に設定できる一方で、「画面レイアウトの変更に弱い」「複数の解像度やデバイスでの運用が困難」「複雑な業務フローには不向き」というデメリットがあります。
以下に、3つのデメリットを初心者にも分かりやすく解説します。
画面レイアウトの変更に弱い
座標認識は、画面上の「特定の位置」を基準に動作を行う仕組みのため、画面レイアウトが変更されると設定が無効になり、正しく動作しなくなります。
たとえば、ボタンや入力フォームの位置が少しでもずれると、RPAは誤った場所を操作してしまう可能性があります。このため、頻繁に更新される画面や可変的なUIを持つシステムでは、メンテナンスが頻繁に必要になります。
複数の解像度やデバイスでの運用が困難
座標認識は、画面解像度やウィンドウサイズに依存するため、異なるデバイスや解像度で動作させる場合には向いていません。
たとえば、RPAがフルHD(1920×1080)の解像度で設定されている場合、HD(1280×720)の環境ではボタンや入力欄の位置がずれてしまい、正常に動作しない可能性があります。
このような場合、各デバイスに合わせた再設定が必要となり、運用が手間になることがあります。
複雑な業務フローには不向き
座標認識は、単純で定型的な作業には適していますが、分岐条件が多い複雑な業務フローには向いていません。
たとえば、異なるデータ形式や操作対象が動的に変化する処理を必要とする業務では、座標認識では対応が難しく、エラーが発生しやすくなります。
そのため、こうした業務には、画面要素を直接認識するオブジェクト認識や、視覚的な特徴を活用する画像認識の利用がおすすめです。
RPAの座標認識が向いている業務例
座標認識は、画面上の特定の位置を基準に操作を実行するため、単純で固定された作業に適しています。以下では、座標認識が特に向いている3つの業務例について解説します。
1.単純なクリック作業
座標認識は、画面上の決まった位置をクリックする作業に最適です。
たとえば、毎日行うログイン作業で「ログイン」ボタンをクリックし、特定の設定画面で「次へ」や、「ダウンロード」、「完了」ボタンを押すといった操作が挙げられます。
こういった作業は、画面構成が変わらない限り確実に動作するため、設定も簡単で効率的です。
繰り返し発生する単純なクリック作業に座標認識を活用することで、作業時間を大幅に削減できます。
2.特定業務専用端末の操作
特定の用途として使われる業務専用端末では、画面構成がほぼ変化しない場合が多いため、座標認識が非常に効果を発揮します。
たとえば、製造ラインで使用される機械の操作端末や、POSレジシステムの画面操作などが該当します。
このようなシステムは基本的に定型的な操作が求められるため、座標認識を利用することで簡単かつ安定した自動化が可能です。
3.古いレガシーシステムの定型操作
オブジェクト認識に対応していない古いレガシーシステムでも、座標認識を利用すれば自動化が実現できます。たとえば、マウス操作でファイルをドラッグ&ドロップしたり、固定された位置にあるメニューをクリックしたりして処理を進めるような作業です。このような環境では、座標認識や画像認識は有効な代替手段として活用されます。
座標認識は、単純で画面構成が固定されている業務で最大限の効果を発揮します。
環境が安定している場合や、変更が少ない作業フローに適用することで、効率化と作業ミスの削減を実現できます。
RPAの座標認識を選ぶ際のポイント
座標認識は単純で軽量な方法ですが、その特性を最大限に活かすにはいくつかのポイントや注意点があります。業務環境に適した導入を検討しましょう。
1.対象システムが固定的であることを確認
座標認識は、画面上の位置を基準に動作を実行するため、対象となるシステムの画面構成が変わらないことが前提となります。
たとえば、ボタンや入力欄の位置が固定されている業務専用ソフトや、UIの変更が少ないレガシーシステムに向いています。しかし、頻繁にUIが変更されるSaaSやシステムの環境では、座標認識では工数がかかるため注意が必要です。
また、IT部門が実務担当者にRPAを共有する場合には、座標認識が問題になることがあります。座標認識は単純な仕組みですが、操作対象が固定されていない場合や、複数の担当者が異なるPC環境で利用する場合には向いていません。
たとえば、モニター解像度が異なるだけで座標がズレるため、IT部門が全社的に展開しようとしても、現場で利用しづらい状況が発生することがあります。
そのため、座標認識は複数部門にまたがる共有型のRPA運用にはあまり向いていないのです。IT部門がRPAを全社展開する場合は、オブジェクト認識による運用を検討する方が良いでしょう。
2.解像度やディスプレイ環境を標準化する
座標認識は画面の解像度やディスプレイ設定に依存するため、運用するデバイスで環境を統一することが求められます。
異なる解像度のモニターや拡大縮小設定が異なる環境では、座標がズレて動作が不安定になることがあります。すべての操作が正確に実行されるよう、利用するPCやモニターの解像度を標準化し、適切な動作を確認することが重要です。
3.運用者のリテラシーに合わせた導入
RPAの認識方法を選ぶ際には、実際に運用を担当する利用者のリテラシーや業務の特性を考慮することが重要です。
初心者やIT・プログラミングの専門知識がない実務担当者が使用する場合には、画像認識や座標認識が適しています。これらの認識方法は、視覚的で直感的に設定できるため、ITスキルに自信がない方でも簡単に利用可能です。
たとえば、ボタンや入力欄を目視で確認しながら操作を登録できる画像認識は、業務フローを把握している現場担当者にとって使いやすい選択肢です。
一方で、IT部門がRPAを導入し、他部門に展開する場合や、複雑なシステム操作が含まれる業務では、オブジェクト認識の利用が効果的です。
オブジェクト認識は、画面の裏側にある要素を直接特定して操作するため、動的なシステムや最新のクラウドアプリケーションにも対応可能です。ただし、プログラミングの知識やITスキルが必要となるため、情シスやIT部門が主体となる場合に適しています。
このように、利用者のリテラシーや業務の特性に応じて認識方法を選択することで、RPA導入のハードルを下げ、効率的かつ効果的な運用を実現できます。また、必要に応じて複数の認識方法を併用することで、幅広い業務の自動化をカバーすることも可能です。
「RPAの座標認識とは」まとめ
RPAの座標認識は、設定が簡単で動作が軽く、固定的な画面構成でのシステム利用において効果が高い認識方法です。
特に、単純なクリック作業や特定業務専用端末の操作、古いレガシーシステムでの定型業務に向いており、迅速な自動化を実現します。
一方で、画面レイアウトの変更や複数デバイス環境での運用には注意が必要です。そのため、導入時には対象システムの固定性や運用者のリテラシーを考慮し、場合によっては他の認識方法との併用を検討することが重要です。
座標認識を効果的に活用することで、業務効率化を実現し、短期間で成果を上げることが可能です。RPAの認識方法を正しく理解し、最適な選択を行うことで、自動化の成功につながります。座標認識の特徴を活かし、貴社の業務フローに合ったRPA導入をぜひご検討ください。
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