RPAの社内展開・全社展開の重要性とメリット
RPAを社内に展開することは、企業の生産性を向上させ運用コストを削減できるだけでなく、運用体制の統一化や、企業全体の競争力を強化することができます。本章では、RPAの社内展開と全社展開の具体的なメリットと重要性を解説いたします。
生産性向上やコスト削減の導入効果の拡大
RPAにより、繰り返し発生する時間のかかるタスクを自動化することで、創出できた時間によって従業員はより価値の高い業務に集中できるようになります。
これにより、生産性向上やコスト削減といった効果を得られますが、社内展開することによってその効果をさらに拡大することが可能です。
結果、組織全体に拡大され、企業全体の運用コストの削減にもつながります。また、自動化により人的ミスが削減されるため、全体の品質向上にも寄与します。
生産性向上とコスト削減の効果は、RPAの全社展開の大きなメリットです。
運用体制の統一化
RPAの社内展開・全社展開によって、企業内の運用体制を統一することが可能です。
RPAを導入することで、異なる部門でバラバラだった業務プロセスを標準化し、全社的な運用体制の統一化が実現できます。
この統一化により、業務プロセスの一貫性が保たれ、企業全体のリソースを効率的に利用できるようになり、管理コストの削減にもつなげられます。
企業の競争力強化
RPAの社内展開・全社展開は、企業の競争力を大幅に強化することができます。
業務を自動化することで、迅速な意思決定、市場への迅速な対応、顧客満足度の向上を実現できるため、競争上の優位性に直結します。
さらに、RPA導入によるコスト削減効果により、企業の収益性も向上し、長期的な成功を実現するための強力な基盤を築くことができます。
RPAの導入から社内展開までの流れ・ステップ
RPAを導入するにあたり、導入前から社内展開するまでの基本的な流れをご紹介します。
1.自動化する業務の棚卸し・洗い出し
RPAの導入を成功させるためには、まず自動化に適した業務を特定することが重要です。時間のかかる繰り返し作業、人的ミスが発生しやすい作業、大量のデータを扱う業務を洗い出し、業務プロセスを細かく棚卸しすることで、RPAによる効果的な自動化が可能となります。
このステップは、全社展開に向けた最初の段階であり、RPAの活用範囲を明確にするための重要なプロセスになります。
2.RPA担当者の役割・運用ルール決め
RPA導入時には、明確な役割分担が欠かせません。各担当者の責任範囲を決定し、誰がプロジェクトのどの部分を担当するのかをはっきりとさせることで、RPAの運用を円滑に進めましょう。
さらに、全社での展開を見据えた場合、運用ルールを事前に設定し整備しておくことが重要です。これにより、担当者が異動や退職する場合でも、RPAの運用に支障をきたさずに継続できる体制を築くことができます。
3.RPAツールの選定・導入
次に、RPAツールの選定と導入を行います。数多くのRPAツールが市場に出回っていますが、企業のニーズや課題解決に合ったツールを選ぶことが重要です。
RPAを導入する際は、操作性や機能性、拡張性、サポート体制などを考慮して選定を行うことが成功のポイントです。
現場担当者がRPAを運用する場合は、プログラミングスキルや知識がなくてもスムーズに作成できるツールがおすすめです。
4.小規模でスモールスタート
全社展開の前に、まずは個人や特定の業務など小規模なタスクから自動化を始めて、RPAの効果を実証することがおすすめです。
スモールスタートにより、RPAの効果や問題点を検証し、リスクを最小限に抑えながら展開できます。初期の成功体験を積み重ねノウハウや知見を蓄積することで、全社展開の際にスムーズに進行できる基盤を築くことができます。
簡単かつ効果がでやすいものから始めること
RPA導入の初期段階では、まず簡単で効果が出やすい業務から始めることが重要です。
定期的に発生する単純な業務を自動化することで、すぐに効果・成果を実感できるため、社内での支持も集めやすくなります。
早期にRPAの有用性を示すことができるため、他の部門へのスムーズな展開も可能になります。
5.成功事例をもとに自動化する業務を増やす
ある程度RPA作成のコツをつかみ、効果も見えてきたら、RPAの成功事例を共有し、部署・部門内へ自動化の範囲を拡大していきます。
まずはRPAが成功した事例をもとに、同じ部門内の類似業務に同様の自動化を適用することをおすすめします。徐々に自動化する業務を増やし、どの業務が同様の効果を期待できるかを特定していきます。
部門内で作業時間削減や人的ミスの削減など一定の成果が出たら、他部署への展開をおこなっていきます。
オペレーションを整える
RPAで業務を自動化する前に、業務オペレーションの最適化を行うことが重要です。
例えば対象の業務フローを分析し、本当に必要な作業か、作業の流れが効率的か、使用されるフォーマットが適切かを検討します。
業務オペレーションを事前に整えて不必要なタスクを排除し、自動化すべきプロセスを明確にすることで、業務フローがさらにスムーズに運用でき、全体の効率化が図れるため、成果の質も向上します。
6.他部署への展開
部門内での業務の自動化が成功した後、得られた知見と経験をもとに、他部署への展開を進めます。他部署への展開に際しては、各部署の業務と流れを理解し、RPA導入による最適な効果を見極めることが重要です。
社内展開で重要なのは、異なる部署の特定のニーズに合わせたカスタマイズと、部門間での連携とコミュニケーションの強化です。
他部門で横展開して活用する際はプロジェクトチームを組み定期的に情報を共有したり、運用ルールを展開したり、サポート体制を整えて他部署がスムーズに運用できるように取り組みましょう。
RPAの社内展開・全社展開でよくある課題と解決策
RPAを社内展開していくにあたり、RPAスキルを持つ人材の不足やツールを使いこなせていない点、社内の抵抗・反発、見えにくい費用対効果、部門間の協力不足、自動化できる業務を見つけられないという課題がよく生まれます。本章では、これらの課題を解決し、RPAを効率的かつ効果的に展開するための具体的な解決策を紹介します。
RPAを作成できる人が限られている
RPAを活用するためには、RPAツールの知識やスキルが必要です。しかし、社内でRPAの作成・管理を担当できる人材が限られていると、導入や展開がスムーズに進まないことがあります。
知識やノウハウが属人化されてしまうと、1日に進められる業務の自動化に限界が生まれ、担当者が休みや他の作業をおこなっている日にはタスクが完全にストップしてしまうなど、計画通りに進行しないリスクも生じます。
解決策:RPA人材の育成
自社内に「操作できる人が限られる」という状況で、業務の自動化が思うように進まない場合は、RPAの操作ができる人員を複数名育成する必要があります。
企業内でRPAスキルを持つ人材が少ない場合、既存の従業員を再教育することで、コストを抑えつつ、RPAの担当者として育てることが可能です。
RPAを使いこなせていない、作成できない
RPAツールの操作が難しかったり、従業員がツールに慣れていなかったりすると、RPAの効果を最大限に引き出すことはできません。RPAのスキル不足は、RPAロボットの修正ができない、操作ミスやトラブルが増えるなどの原因となり、結果としてRPAの活用や社内展開が阻害されます。
さらに、RPAに関する知識や経験が不足していると、どの業務をどのように自動化するかがわからず、社内全体へのRPAの浸透が難しくなってしまいます。
解決策:現場のITリテラシーを考慮してツールを選ぶ
現場担当が利用する場合、プログラミング言語やコーディングスキルが必要なツールを導入してしまうと、RPAが十分な効果を発揮できません。
RPAツールの選定時には、現場の従業員のITリテラシーを考慮し、シンプルで直感的に操作できるものを選ぶことが重要です。
さらに、RPAのベンダー企業からオンボーディングサポートをはじめ、導入支援や定期的なトレーニングを受けることで、従業員のスキルを向上させ、RPAの活用をさらに促進することが可能になります。
社内の抵抗や変化への恐れ
RPAを導入する際、従業員は自分が今まで行っていた仕事がRPAによって奪われてしまうかもしれないという不安や恐れを持つことがよくあります。このような変化への不安は、従業員の抵抗感となり、RPA導入の際に障害をもたらすことがあります。また、自動化の導入が業務の質や自身のキャリアにどのような影響を与えるかの不明確さが、抵抗の一因となることもあります。
解決策:RPAの効果や必要性について理解を広める
従業員にRPA導入のメリットや利益を明確に伝えることが重要です。たとえば、自動化によって単純作業が減り、創出できた時間でより創造的かつ戦略的な仕事に集中できる点など、具体的なメリットを示すと効果的です。
導入前には事前説明会を開催し、RPAの重要性や導入の目的を従業員に理解してもらいましょう。また、導入後には成果が出た業務や、自動化できたことによって従業員が新たに取り組んだ業務を共有する場を設け、RPAの利点を実感してもらうことも重要です。こうした取り組みにより、RPAの社内定着が進み、従業員のモチベーション向上につながります。
費用対効果が見えていない
RPA導入にはコストがかかるため、費用対効果が不透明だと、導入に対する社内の理解や承認を得るのが困難になります。また、社内展開する際に費用対効果を提示することは非常に重要です。
このため、投資に対するリターンを明確にすることが重要です。
解決策:費用対効果を可視化する
具体的な費用対効果を示すためには、RPAによるコスト削減(例えば、人件費の削減、エラー発生率の低下、業務のスピードアップなど)を具体的な数値として計算しましょう。
また、自動化した業務がどの程度の時間を削減できたかや、今から自動化する対象業務がどれくらいの時間削減を見込めるかを示すことも有効です。
これらのデータを基に、具体的なROI(投資収益率)を算出し、経営層や関係者へ報告することで、RPA導入の正当性と社内展開の必要性を明確に示すことができます。
以下に定量的な成果と定性的な成果の例を記載しますので参考にしてみてください。
他部門との協力体制がとれていない
RPAを社内展開するためには部門間の協力が必要ですが、異なる部門間での意思疎通や協力が不足している場合、プロジェクト全体の効率が低下し、期待していた成果が得られない可能性が出てきてしまいます。
解決策:クロスファンクショナルチームの形成
クロスファンクショナルチームとは、異なる専門分野や部門のメンバーで構成されるチームです。例えばIT(情シス)部門とRPAを利用する各バックオフィス部門担当者とのチームを形成することで、部門間の壁を越えたコミュニケーションと協力が可能になります。定期的なミーティングを通じて、進行中のプロジェクトの進捗状況や課題を共有し、迅速な意思決定や問題解決を実現できます。これにより、RPAの導入や展開をスムーズに進めるための連携と一体感が生まれ、プロジェクトの成功率が高まります。
対象業務が見つけられない
RPAを導入するにあたり、どの業務を自動化すべきかを特定することは、プロジェクトの効率と効果を大きく左右します。しかし、自動化に適した業務が明確でない場合、RPAの導入が難航し、投資の価値を最大化できないことがあります。
業務が複雑であるか、文書化されていないために、どの業務が自動化に最適かを判断するのが困難になってしまいます。
解決策:業務プロセスマッピング
業務プロセスマッピングは、特定の業務や作業の流れを視覚(図式)化し、一連のタスクがどのような関係にあるのかや、どのような順序で行われているのかを見える化し、分析することです。
自動化に適した業務は「反復的で規則性がある」、「定期的に発生する」、「人の判断が不要」なものです。業務プロセスをマッピングすることで自動化に適した業務を容易に特定し、RPAでの自動化の候補となる業務を効果的に見つけ出すことができます。
RPAを導入する前には必ずどのような業務を自動化するのか対象業務を洗い出し、マッピングを行っておきましょう。
RPAを運用する部門ごとの注意点や押さえておくべきポイント
RPAの運用を業務担当者が行う場合と、情報システム部門(情シス)やIT部門が行う場合では、それぞれ異なる視点からの注意点や押さえておくべきポイントがあります。以下にそれぞれのケースにおける主要なポイントを解説します。
RPA運用が現場の業務担当の場合
現場の業務担当者がRPAの運用を行う場合、その最大のメリットは、担当者自身が業務プロセスに精通していることです。そのため、RPAを用いて自動化すべき業務を的確に選定し、問題が発生した場合も迅速に対応することができます。
また、現場の担当者向けに直感的に操作でき、サポートが充実したRPAツールを選ぶことで、スムーズに運用できるツールを選択することも重要です。
ただし、現場担当者一人での運用では、RPAの属人化が生じる可能性があります。特定の担当者に依存し、属人化してしまうことがデメリットとして挙げられます。どこかのタイミングでチームを立ち上げ、RPAの知識や操作スキルを共有することをおすすめします。
RPA運用が情シス・IT部門の場合
情報システムやITチームなどのIT部門がRPA運用を担当する場合、プログラミング知識や技術的な専門スキルを持っているため、RPA運用がスムーズに進むことがメリットです。さらに、ノウハウやナレッジを一元管理できるため、社内全体への展開が容易になります。
また、技術的なサポートやメンテナンスも情シス・IT部門が担うため、システム全体の安定性を保つことが可能です。
ただし、情シスやIT部門は現場の業務内容に精通しているわけではないため、現場担当者からのヒアリングが重要になります。自動化すべき業務フローを洗い出す作業は現場担当者が行い、情シス・IT部門はそれに基づいてRPAのシナリオを作成するようにしましょう。
また、IT部門は他の業務や作業に追われることが多いため、作業依頼が増えると待機時間が生じ、RPAプロジェクトが停滞する可能性があることが懸念されます。
RPAの社内展開を成功させるための6つのポイント・コツ
RPAの社内展開・全社展開を成功させるためには、「運用ルールやマニュアルの作成」、「スモールスタートではじめる」、「人とRPAロボットのハイブリッド運用」、「 発表会・共有会の実施」、「社内研修・勉強会の実施 」、「 ベンダー企業のサポートを活用する」という6つのポイントが挙げられます。以下に詳しく解説します。
運用ルールやマニュアルを作成する
RPAの社内展開を成功させるためには、標準化された運用ルールと詳細なマニュアルの作成が必要です。他の部門がRPAを導入する際に、統一されたガイドラインに従うことで、各部門が異なる方法でRPAを運用することを防ぎ、全社的な効率化と一貫性が保たれます。
また、運用ルールやマニュアルがあることで、各部門での導入の際の疑問や問題に対するガイドラインとして利用できるだけでなく、新たにRPAを使用する従業員の教育も容易になります。
スモールスタートではじめる
RPAを社内に導入する際、最初から大規模なプロジェクトを開始するのではなく、スモールスタートで試験的に特定の部門や業務から自動化を導入することが成功の鍵です。小規模なプロジェクトから始め、初期の成功を基に徐々に他の部門へと展開を広げていくことで、組織全体への導入の際のリスクを最小限に抑えながらRPAの効果を検証できます。これにより、将来的な全社展開に向けて、確実な基盤を築くことができます。
人とRPAロボットのハイブリッドで運用する
RPAは業務自動化に非常に有効なツールですが、導入にあたっては、人間とRPAロボットのハイブリッド運用が重要です。特にRPA導入の初期段階では、すべての業務を一度に自動化するのではなく、簡単で効果がすぐに見える業務から自動化を始め、段階的に人とRPAの組み合わせで運用を進めましょう。
人間の判断力とRPAの効率を組み合わせるハイブリッド運用により、より高度なタスクにも対応でき、業務の効率化と精度向上を両立できます。また、従業員がRPAの導入に対して感じる抵抗感を軽減する効果もあります。
発表会・共有会の実施:成果の見える化
発表会や共有会の開催により、RPAの成功事例や成果を効果的に社内で共有することができます。これにより、RPA導入による具体的な成果を示すとともに、RPA導入への理解と協力を促進します。
さらに、こうした活動は他部門との連携を強化し、従業員のモチベーション向上にも貢献します。従業員がRPAのメリットを実感し、新たな業務改善に向けて積極的に関与することが期待できます。
社内研修・勉強会の実施
RPAの効果を最大限に活用するためには、従業員の知識とスキルを向上させることが重要です。そのために、社内研修や勉強会を定期的に開催し、RPAの基本から応用、さらには社内でよく利用するアプリケーションの効率的な使い方までを学ぶ機会を提供します。
これにより、従業員がRPAをより積極的に活用し、企業全体の業務の効率化を推進できます。
ベンダー企業のサポートを有効活用する
RPA導入時には、ベンダー企業の専門的なサポートを活用することが成功への近道です。ベンダーはRPAツールの専門知識を持っているため、技術的な問題やカスタマイズに対応するためのアドバイスを提供してくれます。
RPA導入直後にベンダーからの導入支援やオンボーディングサポートを受けることで、RPAの活用が早期に定着し、より効果的にツールを使いこなせるようになります。
また、ベンダーとの連携により、最新の技術トレンドやRPAの最適な活用方法についての情報を得ることができます。
導入前から導入後までサポート体制が整っているRPAツールを選択することをおすすめします。
RPAツール「RoboTANGO」では、導入前からの無料業務診断や業務の洗い出し、RPA作成支援をはじめ、導入後は無料オンラインセミナーの開催や動画コンテンツの配信、定期レクチャーや導入支援も行っております。
まとめ
今回の記事はRPAを社内展開する方法についてまとめました。新たなITツールやシステムを導入し、運用するということは多くの企業にとって容易なことではありません。特にRPAはまだまだ社内に浸透し始めたものであり、社内のだれもが豊富な知識を持っているわけではないという難しさもあります。
一方で現在導入しているRPAは、まだまだ最大のパフォーマンスを発揮できていない可能性もあります。RPAを社内でうまく展開できれば、さらなる業務の効率化や稼働時間の削減につながるはずです。
まずは自社が抱える課題や期待に達していないと感じる要因を明らかにし、1つ1つ対処していくことで、RPAの効果を最大化することが重要です。
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