RPAの活用方法・事例

2024.03.07

【業界別事例6選】RPA導入で業務の自動化・効率化はできるのか

【業界別事例6選】RPA導入で業務の自動化・効率化はできるのか

RPAは業務効率化に欠かせないツールとして注目され、多くの企業で導入されています。しかし、RPAが実際にどのように活用できるのかがわからないと、自社での活用イメージや導入効果が見えにくいものです。この記事では、RPAがどのような業務で導入されているかを実際の活用シーンと共に紹介します。 中小企業から官公庁まで、さまざまな組織が使用するRPAの導入事例を知って、自社の導入イメージの具体化にお役立てください。

目次

    この記事を監修した人
    鈴木健太
    鈴木 健太(すずき けんた) 

    2003年スターティアに営業として入社。2005年ネットワークエンジニアに転身し、エンジニア部隊を立ち上げ。セキュリティ製品、NW機器選定やサービス企画等を行いつつ、NWの設計から構築まで携わり、NWセキュリティ関連のエバンジェリストとしても活躍。現在は業務自動化ソリューション部にてRPAコンサルタントに従事する傍ら、新サービスの企画を行っている。

    RPAとは

    RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、コンピューターを使ったデスクワークなどの業務を自動化できるソフトウェアのことです。

    手順の決まった定型業務や反復性の高いルーティンワークなどを自動化できます。

    たとえば、複数部署で使っている顧客情報のExcelファイルの内容を、基幹システムのマスタにコピー&ペーストして統合する作業や、顧客データベースを元にメールを一斉配信するなどさまざまな作業を行えます。

    実際に業務をこなすソフトウェアは「ロボット」と呼ばれ、さまざまなパターンのロボットを作成でき、あらゆる業務を自動化します。

    RPAで業務を自動化することにより、作業時間の短縮や、ヒューマンエラーの削減などの業務効率化が期待できます。

    RPAにできること

    さまざまな業務を自動化できるRPAですが、万能というわけではありません。RPAにも得意とする業務と不得意とする業務があります。ここでは、どのような業務がRPAに適しているのか紹介します。

    単純作業・定型業務

    単純作業や定型業務はRPAを使った自動化に最も適している業務です。RPAはキーボードやマウス操作そのものを記憶してその作業を実行するため、単純作業や定型業務に向いています。

    たとえば、コピー&ペーストや入力作業がひたすら繰り返される業務など、人の手による作業は避けたい単純作業や定型業務は、RPAが得意とする業務です。

    もちろんすべての単純作業・定型業務に対応できるわけではなく、臨機応変な判断を要するプロセスが含まれる場合はRPAで対応するのは難しくなります。

    ルール化されている業務

    RPAは指示された業務をルール通りに遂行するのに特化しています。手順やルールをロボットに記憶させることで、RPAはルール通りに自動的に、かつ正確に作業をします。

    たとえば、データの収集や分析業務など一定のルールに基づいて処理できる作業や、発注や納品処理などマニュアル化された業務もRPAを使って自動化できます。

    業務内容をルール化できる場合は、RPAの活用が期待できるでしょう。

    パソコン上で完結する業務

    RPAは、パソコン操作を代行するツールです。そのため、パソコン上で行う業務であることは、RPAにとって必須条件の1つ。パソコンで始まってパソコンで終わる(フローの全てが完結する)業務の場合、RPAは効果的に役割を果たすと言えます。

    たとえば、大量のデータを収集・分析したり、発送伝票を作成・印刷したり、メールを一斉送信したりなどの業務はパソコンのなかで完結するタスクです。こういったパソコン上で完結する業務は、RPAに全てまかせられます。

    RPAによる業務効率化が注目される理由

    RPAはロボットにより業務を自動化できるツールです。これまで時間がかかっていた業務を自動化することで業務効率化ができると、多くの企業に注目されています。一部の作業をRPAで自動化・代行してもらうことで、従業員はコア業務やクリエイティブな業務に専念できるようになります。

    また、RPAはコスト面でもメリットがあります。RPAは人間を雇用するのとは違い、給与やボーナス、退職金も発生しません。ロボットなので24時間365日休みなく働いても残業・休日出勤手当の必要もありません。RPAの導入に関わるコストは、社員を雇うよりもコストが格段に安くすむとも言われています。人手不足のような人事課題の解決にも有効だと、RPAの本格導入を進める企業は増加し続けています。

    では、実際に企業はどういった業務にRPAを導入し、業務効率化の成功をおさめているのでしょうか?

    ここからは、各業界のRPAの成功事例を紹介します。導入前に抱えていた悩みや課題、導入したRPAツール、導入後の効果を見ていきましょう。

    金融業界

    金融業界では多くの企業が膨大な顧客情報を取り扱っています。それらの管理・分析は煩雑になりやすく、人的コストの肥大化を招きます。そのような金融業界において、RPAは膨大な情報処理作業を自動化しつつ、データ活用を推進する役目を果たします。

    金融業界のRPA導入事例として、楽天カード株式会社を紹介します。

    楽天カード株式会社のRPA活用事例

    楽天カード株式会社は、楽天市場を中心にさまざまな事業を行っている楽天グループの連結子会社。同名のクレジットカード「楽天カード」を発行するなど、グループ内金融サービスの中核を担っています。

    RPA導入前に抱えていた課題

    楽天カード株式会社のシステム運用部門は、サービス維持のために「カード決済システムからログを抽出→データ加工→分析作業」という煩雑な作業を手作業で行う必要がありました。
    具体的には、「ファイルAからBに転記する」といった簡単で単純な作業。しかし、その単純作業を数百回繰り返し行うとなると、かなりの工数を必要としました。

    導入したRPAツール

    そんな状態にあった楽天カード株式会社のシステム運用部門が導入したのは、国産RPAツールのWinActor。WinActorはNTTグループでの研究された技術とノウハウが詰まった、業務効率を支援するソフトウェア型RPAツールです。

    RPAツールによってどんな改善が得られたか

    楽天カード株式会社は、RPA導入後に作業時間を1/4に短縮。単純作業にかかる労働時間を大幅に削減できました。また、従来は取り扱う情報のすべてを網羅できていなかったデータ分析も、RPA導入により全てのログでデータ分析が可能に。作業時間が削減できただけでなく、より詳細で精度の高い分析ができるようになりました。

    通常、反復作業や単純作業を自動化するためのシステムを開発することは簡単ではありません。しかし、RPAであれば、各企業が自社に合うようにツールをアレンジし、活用できます。楽天カード株式会社のように、膨大なデータの処理業務に課題を抱えているという企業は、RPAの導入で業務効率化の大きなメリットが享受できるでしょう。

    製造業界(メーカー)

    次に製造業界のRPA活用事例を紹介します。実は製造業(メーカー)の現場には、バックオフィス業務がたくさんあります。そのため、RPAを有効活用することで業務効率化ができれば、生産性の大幅な向上が期待できます。

    製造業(メーカー)のRPA導入事例として、JFEスチール株式会社を紹介します。

    JFEスチール株式会社のRPA活用事例

    JFEスチール株式会社は、持株会社JFEホールディングスを頂点とするJFEグループの中核をなす鉄鋼メーカー。粗鋼生産量において、国内第2位、世界では第12位の規模を持つ大手メーカーです。

    RPA導入前に抱えていた課題

    JFEスチール株式会社は、煩雑かつ限られた期間内での対応が求められる業務に課題を抱えていました。その業務とは、海外総務部門における2つの定型業務。

    • 拠点経費の収集で毎月発生する経費処理
    • 拠点予算のとりまとめで年2回発生する拠点の予算集計処理

    どちらの処理も手がかかり、決算期間中の限られた時間で対応しなければならないため、肉体的にも精神的にも負荷のかかる業務でした。

    導入したRPAツール

    JFEスチール株式会社が導入したRPAツールは、UiPath。UiPathは、世界で1,000社以上の導入実績がある有名なRPA製品です。外国産ではありますが、ほぼすべて日本語対応していて、マニュアルや動画(ビデオチュートリアル)も充実しているRPAツールです。

    RPAツールによってどんな改善が得られたか

    導入効果としては、2400時間かかっていた作業が1/4の600時間にまで短縮。1800時間にものぼる削減時間を、他の業務の対応にあてられるようになりました。また、導入効果は作業時間の削減だけでなく、定性的な面でもメリットがありました。社員は、これまで抱えていた肉体的・精神的な重圧から解放され、モチベーションが向上したと言います。
    さらには、RPAの導入により、ワークスタイルの変革も実行しています。定型作業を自動化することで、付加価値の高い作業に取り組める環境を推進。労働の質を高め、会社としての競争力の向上と、社員のより良いワークライフバランスの実現を目指していると言います。

    今回は限られた部署でのRPA導入でしたが、この成功を引き金に今後は全社でRPA導入を進めていきたいそうです。

    卸売業界(商社)

    商社は、売買に関する企業間の仲介をはじめ、貿易事業やそれに付随する保険や金融機能など、非常にたくさんの種類の業務を行う業態です。商社の業務には、知的労働以外のデスクワークもかなり多く、社員の負担が多きいのが実情。膨大な量ののデスクワークをRPAで自動化できれば、大幅な工数の削減が見込まれます。

    卸売業界(商社)のRPA導入事例として、三井物産株式会社を見ていきましょう。

    三井物産株式会社のRPA活用事例

    三井物産株式会社は、三井グループの大手総合商社。金属/機械・インフラ/化学品/エネルギー/生活産業/次世代・機能推進という6つの分野を中心に、多角的なビジネス展開を行っています。

    RPA導入前に抱えていた課題

    三井物産株式会社は、以下のような課題を抱えていました。

    • 手作業での定型作業の多さ
    • 入力ミスや入力後の確認作業の煩雑さ

    さらに、取引先システムの動作遅延という、自分では改善することもできない状況に、担当者の精神的な負担が増していたと言います。

    導入したRPAツール

    「攻めのIT経営」に取り組む三井物産株式会社では、抱えていた課題を改善するために、定型作業の効率化に取り掛かりました。導入したRPAツールは、WinActor。WinActorはNTTグループでの研究された技術とノウハウが詰まった、業務効率を支援するソフトウェア型RPAツールです。

    RPAツールによってどんな改善が得られたか

    導入効果としては、130時間の入力作業が30時間に短縮。定型作業が自動化されたことで、入力ミスがなくなり、担当者は業務に伴うプレッシャーからも解放されました。削減された業務時間は他の業務に対応できる時間となり、RPAを活用している以外の業務での改善も実現しました。
    今回の導入成功を受け、同社はグループ内でのWinActor導入を展開していく予定です。RPAを「人を減らすためのツール」ではなく、「時間を生み出すためのツール」として活用し「攻めのIT経営」を実践していくといいます。

    今後も同社の業務改善にはRPAが大きな役割を担っていきそうです。

    医療業界

    医療業界では少子高齢化の影響で働き手が不足し、医療従事者が減少傾向にあります。特に中小病院では閉院となってしまうことがあるほど深刻な問題となっています。
    医療業界には事務作業が多くあります。そういった作業をRPAで自動化した例をご紹介します。

    ここでは、医療法人社団 創福会 ふくろうクリニック等々力のRPA導入事例を紹介します。

    医療法人社団 創福会 ふくろうクリニック等々力のRPA活用事例

    医療法人社団 創福会は2拠点でクリニックを運営している医療法人です。病院に通うことが難しい方を対象とした訪問診療が主な事業ですが、一般外来もあります。法人全体では訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所と、全部で4つの施設を運営しています。

    RPA導入前に抱えていた課題

    従来利用していた電子カルテシステムがサーバー型でWindows7対応だったため、クラウド型システムへ移行が必須でした。
    1人の患者につき20件程度の診療録があり、全患者数が4,000人強のため、8万件もの膨大なデータ移行作業をしなければなりませんでした。
    移行作業専用の従業員を配置するリソースの余裕もなかったため、別の方法を探していました。

    導入したRPAツール

    医療法人社団 創福会 ふくろうクリニック等々力が導入したRPAツールは、RoboTANGO。RPAツールの導入支援を行ってきたスターティアレイズ株式会社が、お客様のRPA活用による業務自動化の障壁となる点を解決するために開発したツールです。

    RPAツールによってどんな改善が得られたか

    従業員が移行作業をした場合、1年単位で時間がかかる作業だったため、リソース面・費用面で抑えられたことが大きなメリットでした。
    また、ミスなく作業をしてくれるため、安心して移行作業を任せることができます。

    建設業界

    労働人口の減少が嘆かれている日本。その影響は建設業界で特に深刻になると言われています。労働力不足を解決するためにも、RPAを積極的に導入し業務改善していくことが建設業界全体の課題となっています。

    ここでは、東邦レオ株式会社のRPA導入事例を紹介します。

    東邦レオ株式会社のRPA活用事例

    東邦レオ株式会社は、大阪に本社を置く、空間デザインリノベーションを中心とする建設会社。根幹となる造園資材の開発・提供だけでなく、建設コンサルタントなど不動産に近い事業も展開しています。

    RPA導入前に抱えていた課題

    実は、以前に無料のRPAツールを使っていたという東邦レオ株式会社。しかし、そのサービスはサポート体制が不十分かつ、英語対応…。
    無料RPAツールに限界を感じていました。

    導入したRPAツール

    東邦レオ株式会社が導入したRPAツールは、RoboTANGO。RPAツールの導入支援を行ってきたスターティアレイズ株式会社が、お客様のRPA活用による業務自動化の障壁となる点を解決するために開発したツールです。

    RPAツールによってどんな改善が得られたか

    無料RPAツールからRoboTANGOにしたことで、何でも相談できるサポート体制が最大の魅力といいます。サポートチームが、購入者が自身でロボットを作成できるまでフォローしてくれるので、一緒に作りこんでいく心強さがあります。
    RoboTANGOは、基幹システム内のデータを、顧客管理ツールのデータベースにアップロードする作業で活用しています。手仕事で10分程度の作業ですが、毎日新しい受注をアップロードさせていかなければならない作業。営業活動での外出が多いなか、定型業務を人の代わりに行ってくれるRoboTANGOの存在は大きな助けとなっています。

    自治体

    RPAを導入し業務効率化を成功させているのは民間企業だけではありません。民間企業に開始の遅れはとったものの、その成功事例や失敗事例から学び、政府や自治体でもRPAを活用した業務効率化に向けた動きが多数出てきています。

    ここでは、茨城県つくば市のRPA活用事例を紹介します。茨城県つくば市は地方自治体ではじめてRPAを活用し、その他の自治体の先駆けとなっています。

    茨城県つくば市のRPA活用事例

    茨城県つくば市は、業務核都市、国際会議観光都市に指定されている県南地域に位置する市です。学術研究都市としての筑波研究学園都市は、つくば市全域が区域。IT活用や先進的な取り組みに積極的な自治体です。

    RPA導入前に抱えていた課題

    つくば市役所の業務には、単純で膨大な定型業務に多くの時間をとられているという課題がありました。

    中でも確定申告の税務処理は、多くの時間外労働が発生する原因でした。同市は作業時間の短縮と効率化、ミスのない正確な処理を目指して、RPA導入の検討をスタートしました。
    まずRPAの活用対象業務となったのは、市民税課の新規事業者登録や電子申告の印刷作業を含む5業務と、市民窓口課の異動届受理通知業務でした。

    導入したRPAツール

    茨城県つくば市が導入したRPAツールは、WinActor。WinActorはNTTグループでの研究された技術とノウハウが詰まった、業務効率を支援するソフトウェア型RPAツールです。

    RPAツールによってどんな改善が得られたか

    RPA導入の結果は大きな効果を実感できるものでした。新規事業者登録や電子申告の印刷作業などの全5業務にRPAを導入した市民税課は、3ヶ月で110時間以上の時間削減に成功。異動届受理通知業務でのRPA活用を実施した市民窓口課は、3ヶ月で20時間以上の削減を達成。合計6業務にRPAを適用し、全体で約80%の時間削減効果が得られました。ともに現場で大きな成果を実感でき、業務の効率化だけでなく、職員の労働環境の改善にもつながりました。
    この成功により、RPAが公共団体と公務員にとっても助けとなるツールだと証明した事例です。

    なお、今回紹介した業界以外にも、人材業界や製薬、小売、介護、病院、保険などの業界でも、RPAの活用事例はあります。今やRPAを活用できない業界はないといっても過言ではないでしょう。

    まとめ

    RPAは多くの企業にとって業務効率化につながる有効なツールです。しかし、自社にあったツールを導入しなければ、思ったような効果は得られません。RPA導入で業務効率化を成し遂げたい!生産性や労働環境を改善したい!と検討されているのであれば、事前の情報収集をしっかりと行うことをおすすめします。自社にあったRPAの活用で業務効率化を達成しましょう!